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第三章 少年時代 5

セーラに促されて1階の広間に降りると50人ほどの兵が疲れ果てた顔で座り込んでいた。尚もポツリポツリと敗残兵が砦へと戻って来る。

やがてハットンが負傷した兵士を支えながら戻ると、その場で大の字になって倒れた。

「ハットン、大丈夫か?高々2~3時間の戦闘でこれほどの打撃を受けたのか。」

問いかけたハイネルドにハットンが力なく笑った。

「情けねぇ。あんたの言った通りになっちまったよ。」

「作戦変更は?お前司令官に俺の言った事を伝えなかったのか?」

「伝えたさ、鼻で笑われたよ。・・・・それでこのザマさ。」

悔しそうに言うとゆっくりと立ち上がり、壇上へと歩いて行った。

「勇気と誇りある我が同胞よ、戦いは終わった。それがどれほど理不尽で到底納得のできない結果であろうとも、もう終わった。おしまいなんだ。」

そう言うとハイネルド達の方を向いて続けた。

「王子とその仲間たちよ、自軍に戻るなりなんなり、好きにするがいい。我々は一切危害を加えたりしない。取り引きも無しだ。・・・これより本国に引き上げる。」

腕組みをしていたセーラがつかつかとハットンの前に歩いて行った。

「捕まった捕虜はどうするんだい?本国に戻ったって、たった今最高責任者になったあんたは間違いなく処刑されるよ。それでいいのかい?」

そう言ってハットンの胸ぐらを掴んだ。

「何よりもあんた。悔しくないのかい!!」

「悔しいぐらい何だ!!俺は現指揮官だ!残った兵士を生かして返すのも仕事なんだよ!」

目から涙をボロボロ流しながらハットンが叫んだ。

セーラが乱暴に掴んでいた襟首を離した。そして今度はレント達に向かって怒鳴った。

「さぁあんたたち、課題だ。こいつらが全員無事に戦地から帰ることができたらクリアだよ!」

はぁ?という顔をしてレントが答えた。

「それハードル低すぎ。」

「それだけなら私達の内の1人で出来るわよ。」

「ちょっと王子の俺を過小評価し過ぎでしょ。」

売り言葉に買い言葉、セーラが凄んで聞いてきた。

「だったらあんたたちがハードル上げた課題を言ってみな!」

すかさずレントが答える。

「まずはサンテックス軍に勝つ。出来れば死者を出さずにだ。」

それをリンダが続けた。

「そして人質交換をする。出来れば捕虜を全員取り返す。」

そしてハイネルドが全員腰抜かす事を言い放った。

「その上で仕切りなおして戦う。そしてそのままザモラ国を攻め落とす。」

「ハイネルド、それは無茶だよ。」

「あんたバッカじゃないの?」

セーラの強ばった顔が不意に歪んだかと思うと大きな声で笑いだした。

「あんたら智将サンテックスを相手に大した大風呂敷を広げたもんだよ。気に入った。せいぜいあの爺さんを困らせてやんな。」

「ちぇっ、今のうちにそうやって笑ってなよ。さぁハットン、そういう事で一時仲良くやろうぜ。協力してくれ。」

「ちょっと待てよおい、冗談だろう?・・・・お前人質で王子で・・・それなのに自軍と戦う気かよ?無事じゃあ済まねえぞ?訳分かんねぇよ。」

ハイネルドが余裕の表情で指を振ってみせた。

「俺は楽しけりゃいいんだよ。それよりもハットン、やるのかやらねぇのかどっちなんだよ。全てはお前次第なんだ。早く決めろ。」

「や、やるに決まってんだろうがよ。」

「よおし、決まりだ。一緒に戦う気のある奴は残れ、逃げたい奴は好きにしろ。」

兵士たちが全員戦う意志を見せて怒声を上げた。

ハイネルドは振り返ってセーラに声をかけた。

「セーラさん、猟犬の助けは必要無いがあなた個人には手助けしてもらいたい。この作戦はダイナマイトプリンセス抜きじゃ成立しないんだ。」

ハイネルドに正面から見つめられたセーラの顔が急に赤らんだ。

そして横を向いて照れくさそうに答える。

「そ、そりゃ猟犬は手助けなんて最初からする気は無いわ。これは課題なんだもの。で、でもまぁ、私個人にそこまで手伝ってもらいたいっていうのなら・・・・」

セーラの態度の急変に居合わせた全員、猟犬の者たちさえもが驚きを隠せないで居た。

「て、手伝ってあげても・・・・いいんだからね。」

全員がただ呆然と見ていた中でリンダがつぶやいた。






「王家の血筋は熟女キラーの血筋ってうわさ、マジで本当だったのね。」

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