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第三章 少年時代 4

明けましておめでとうございます。今年も東天紅にお付き合いいただきありがとうございます。

年内に完結は出来ないかも知れませんが今後ともよろしくお願い致します。

そして気が付いたらブックマークしてる人が3人になってました。

ありがとうございます。励みになります^^

翌朝ハイネルドはハットンの持ってきた陣立ての図面を見てため息をついた。

「お前たちの司令官はバカなのか?せっかく俺がアドバイスしてやったのに全然生かしてないじゃないか。」

恐縮しながらハットンが口を開いた。

「駄目・・・ですか?俺・・・いや、私もその陣立てで有利に戦えると思うのですが。」

「全然駄目だ。少数の部隊を正面から持って来る以上伏兵は必ずあると見ていい。一見お前らは伏兵に対応するように左右に兵団を配置しているが、これは近すぎる。大きく迂回して背後から攻めるぐらいの距離を取らなくては駄目だ。」

「は、・・・はぁ・・・・そういうもんですか。」

「間違いなくお前らの部隊は両翼と背後を攻められた挙句に罠に誘導される。・・・そうだな、恐らく7割方は捕虜となるだろう。誘導される先は・・・・この東にある平原だな。」

ハイネルドの言葉にハットンが怪訝そうな顔をした。

「いや、そんな馬鹿な。そんな所に誘導なんて・・・・・」

「出来るさ、いや、サンテックス先生はやるんだよ。よく聞けよハットン、お前がやるべき事はこの話を司令官に伝えて作戦を変更する事だ。わかったら行け。」

返事もそこそこにハットンが飛び出して行った。

「王子はどっちの味方だかわからんのう。」

揶揄するようにセーラが言うとレントが嬉しそうに返事をした。

「ハイネルドはね、先生にこんな無能な奴らに捕まったのかって言われるのが我慢できないんですよ。だろ?」

返事をする代わりにハイネルドが不愉快そうに鼻を鳴らした。

「別に捕まったわけじゃないさ、制圧しようと思えば出来たんだし、敵陣から自軍を眺めるのも楽しいかと思ったんだよ。」

「まぁそれもそうじゃの。」

「そう言うセーラさんこそ配下をどれだけ集めたんですか?今すぐにだって手をひと振りすれば猟犬達があっという間にこの砦を占領できるでしょうが。」

レントとリンダが驚いて周りの気配に気を張った。

「まぁ100人ほどじゃな。本当なら跡継ぎも呼びたかったんじゃが別件で動いておるわ。」

「別件ね。まぁ大体察しがつくよ。」

「ほう、どう察したのか教えてくれんかね?」

「教えたら何か良い事があるのかな?」

「あるともさ、私の心証が良くなる。」

その言葉にハイネルドはやれやれという顔をして話しだした。

「セーラさん、敢えて聞きませんでしたが同じ馬車に乗り合わせた事や救出に駆けつけた事を考えるに、目的は俺の護衛をする事ですよね。」

小首をかしげてセーラが小さく微笑んだ。

「だが、それは飽くまでも表面上の話だ。」

「ほう。」

「実際には馬車を道から外させて俺を攫うように計画した。実行したのはハットン達だとしても計画を練り側面から協力したのはあなたですよセーラさん。」

「なぜ私がそんな事をすると思うのかね?」

「王位継承者に相応しいかどうかを見極めるため。そうでしょう。」

この言葉にセーラがニヤリとした。

「そしてあなたの後継者、猟犬の次期総帥は別の王位後継者候補の所に居る。そうでなければあなたが最も信頼する部下がここに居ないのはおかしいですよ」

「なるほど噂には聞いていたが王子は鋭いのう。」

「残念ながら俺を褒めても何も良い事はありませんよ。それよりも・・・・」

静かに殺気を放ってハイネルドがセーラを見据えた。

「あなたのおメガネに叶わなかった場合、俺がどうなるのか教えてくれ。」

セーラがにったりと笑うとハイネルドに囁いた。

「猟犬の思惑に何ひとつ気付く事が無い阿呆だったら、あるいは気付きながら知らぬ顔が出来る聡明さがあったら静かに余生を送れたろうに。」

レントが口を開いた。

「もうひとつ、質問をした時に殺気を漏らさないほど武を極めていたら、でしょ?」

リンダも口を開いた。

「あら、まだあるわよ。質問なんかせずに無言でセーラさんを始末するほどの決断力があったらまた違ったでしょうに、まぁ始末できるかどうかは別の話だけどね。」

ここまで言ったときハイネルド以外の3人が大きな声で笑いだした。

「お、お前ら!国王になるかも知れない奴をそこまでおちょくるのか!」

「まぁまぁ、そう怒るなよハイネルド。所でセーラさん、王位を継げなかった場合おこずかいたっぷりで死ぬまで遊んで暮らすって選択肢はあるの?」

レントの問いにセーラが首を横に振った。

「まぁそれは無いじゃろうのう。王子は非凡すぎるでな。自分の身が脅かされる危険を放置するものなど居るまいよ。」

その言葉を聞いてレントがニヤリと笑うと、いきなりテーブルの脚を蹴り折った。

折れた脚を持つと軽く素振りをする。

「悪いけどセーラさん、相手してもらいますよ。」

「ほう。この婆を殺す気かえ?」

「いや、それは無理でしょう。でもあなたと立ち会えば一番弟子の強さも技もある程度は掴めるはずなんでね。」

「掴んでどうする。」

「レサールを始末する前にその弟子を倒す。リシュエール王の異母弟がもう1人の候補者だとわかった以上放置は出来ないよ。」

「誰もレサール様が継承者候補などとは言ってはおらんぞ?」

「言ってはいないが判ってしまったんだ。さぁセーラさん、ハイネルドを王に推すかここで俺たち全員を殺すかだ。今決めてくれ。心証を悪くするべきじゃない。」

「黙って殺される気など無いじゃろに。・・・だが名にしおう猟犬の総帥を倒そうなどとは見上げた心意気じゃな。」

左足を半歩前に出し、半身に構えたセーラがじっとレントを見つめて、やがてポツリと問いかけた。

「レント、お前は何歳になる?」

「え?ハイネルドやリンダと同じ12歳だけど?」

「ふむ。お前・・・・女の経験はあるか?」

「いや、無い。男だけだ。」

その言葉にセーラ以外の全員が震え上がって部屋の隅へ逃げた。

「おい、どうしたみんな。ハイネルド?おい。」

「こっち来んなレント、」

「なんだよ。女を殺した事が無いってのがそこまでドン引き要素なのかよ。」

「え?えーと・・・・はははは、いやいや、何でもない。気にすんな。」

バツが悪そうにハイネルドが言い、セーラがやれやれと言う風に首を横に振った。

「私は女を知らない男を殺す気はない。不憫すぎるからのう。」

そう言うとセーラは構えを解いた。

「殺す?」

「そうじゃ。私はやりあったら殺す、それしか知らない。殺さずに倒す自信がないんじゃよ。」

「だったらどうするつもりです?セーラさん。」

「やりたいなら殺してみせよ。黙って殺されてやろう。ただしその瞬間からお前は猟犬に命を狙われることになる。むろんハイネルド王子も死ぬ事になる。」

言われたレントが苦い顔になった。

「さあレント、私を殺すかどうかを今決めてくれ。心証を悪くするべきじゃない。」

レントはつまらなそうにテーブルの脚を放り投げた。どこから現れたのか、いつの間にか黒装束の者たちが10人ほどレントを取り囲むように集まっている。

「セーラさんって意地悪だね。同じ言葉を返さなくったっていいじゃない。」

そう言ってレントは口を尖らせて横を向き、それを見たセーラが大きな声で笑う。

拗ねて横を向いていたレントも釣られて思わず笑ってしまった。

レントを取り囲んでいた猟犬達にも安堵の雰囲気が流れた。

不意にリンダが右手を上げて大きな声で言った。

「セーラさーん、質問質問。ハイネルドが猟犬の目的を見極めたのと、レントが対立候補をレサールだと見極めて始末しようとした事、これって評価対象になりますか?」

セーラが苦笑いをしながら答えた。

「むろん評価に値する。で、リンダ、お前は何が言いたいのだ?」

「ふふふー、あのね。ご褒美に評価の決め手となる課題を出して下さい。」

一瞬目を丸くしたセーラが苦笑した。

「お前たちは・・・・揃いも揃ってまぁ・・・本当に12歳か?」

セーラとリンダはお互いの顔を見てニヤリと意味深な笑みを浮かべた。

セーラが口を開きかけたその時、騒がしい足音と共に数人の兵士が駆け込んできた。

息を切らせた兵士が悔しそうに部屋に居た全員に告げた。

「我が軍は壊滅状態だ。司令官は逃亡、兵の大半は捕らえられた。・・・もう終わりだよ、お前たちも自軍に帰るなりなんなり好きにするがいい。」

兵の言葉を聞いたセーラがチラリとハイネルドを見た。そしてレント、リンダへと視線を移し、やがて言った。




「課題を出そうじゃないか。クリアしたら猟犬は存亡を賭けてでもハイネルド王子を支持する。これは総帥としての決定事項じゃ。」



サンドラのモデルになっている方からいつも楽しく読んでますとのメッセージが!!

早く続きを書かなきゃ、Hな表現は控えなきゃ、あ、しまった!!

手が勝手に・・・・・!!

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