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第三章 少年時代 2

色々な事に対して覚悟の決まらないままでの書き込みで、

煮え切らない中途半端な出来だとしたら申し訳ないです。

とりあえず今書ける最善の物を書いたつもりですし今後もそうありたいと思います。

学校の名物教師、軍歴40年の退役軍人であるサンテックスの怒声が教室に響いた。

「諸君、君たちは今戦略シュミレーションの授業を受けておる。戦地における有利な陣形や本隊と別動隊の連携、そして味方の損害予想など、勝利の為の授業だ。しかるにその意味が分かっていない生徒が居るようだ。」

言葉を切るとハイネルドの前に行って教鞭で机を叩いた。

「ハイネルド君、敵の戦力は把握しておるかね?」

「歩兵800、騎馬50、弓兵同じく50、投石器と大砲が4門づつ、尚この兵器運用には専門の兵はおらず歩兵で補う事となる。計900の兵力です。」

「ほう、わかっているではないか。では何故自軍の兵力が50人で勝てるのか聞かせてもらおうか。ほぼ20倍の兵力差があるのは承知しているんだろうね?」

「無論承知しています。」

「では君の戦略を聞かせてもらおうじゃないか。」

「言えません。」

「なぜだ?なぜ言えない?」

「多分に精神論が入ってくるのと何度も使える策ではないのでここで披露するつもりはありません。私が戦場に出たらその時にお見せします。」

涼しい顔で答えるハイネルドと真っ赤になって怒るサンテックスを見ながらレントは深い溜息をついた。リンダは我関せずといった感じでナイフの手入れをしている。

サンテックスがハイネルドに向かってにやりと笑った。

「やはりそう来たか。では明日さっそく見せてもらおうじゃないか。」

その言葉にハイネルドが怪訝そうな顔をした。

「今回の資料に使ったのはまさに戦闘が行われている地形と戦力だ。無論こちらの兵力は1500ほどあるが、君は50人の兵で勝てるのだったな?」

驚いてハイネルドが立ち上がった。

「それでは先生、私は明日戦地へ?」

「ああ、授業の一環として許可をもらったよ。明日から一週間作戦参謀に従軍してもらう。」

「あ、ありがとうございます。それと側近としてレントも同行させて下さい。」

なぜここでレントの名前が出るのかと訝しそうな顔をしたサンテックスだが二つ返事で許可を出した。

「あ、だったら私も行きたいです。」

そう言ってリンダが手を挙げた拍子に持っていた投げナイフがバラバラと机に落ちた。

問題児3人、優秀な分だけタチが悪いのだがサンテックスは怒りをこらえた。

実戦の厳しさを身を持って知ればいい。少しは懲りるだろう。

この子たちの世話が終わったら恩給生活だ。

サンテックスは心の中で何度もつぶやいた。

授業が切り上げられて3人はすぐに戦闘用馬車に乗せられた。

行程およそ15時間。リンダは別の馬車に乗せられた事を不満に感じているようだが、だったら来るなと言われるのがオチなのでおとなしくしているようだった。


最初に異変に気付いたのはハイネルドだった。

ひじでレントの脇腹を小突くと口に指を当てて目を覚ましたレントを制した。

「周りに居るはずの馬車や騎馬の音が聞こえない。しかもやたらとスピードを上げて走ってる。」

「んー・・・それってどゆこと?」

「一番他愛のないのは単にはぐれただけって線だが、最悪のケースは・・・・・」

そう言って幌をめくり上げたハイネルドが絶句した。

横から顔を出したレントも顔を引きつらせた。

周り中敵軍の旗がはためいている。

「おお、ハイネルド王子、お目覚めですか。遠路はるばる我がザモラ国の陣営にお越しいただき誠に光栄に存じます。私は案内役のハットン。お見知りおきを。」

長いヒゲの男がおどけたように馬上で頭を下げた。

ハイネルドはレントと顔を見合わせると深い溜息を付いた。

「レント、どうやらこれは最悪のケースらしい。」

「ホントお前と居るとロクな事ないな。」

「まぁ本陣に着いた時に俺をどうするかが問題だな。身代金目的なのか駆け引きの材料なのか。」

「案外と士気を高めるために公開処刑かもな。俺は従者だから首を持って自陣に帰ればいいんだろ?」

「レント、お前なぁ・・・・」

そこまで言った時、不意に馬車が止まった。

幌が開かれて先ほどの男が声をかけてきた。

「さぁハイネルド王子、本陣に到着しました。指揮官の所へ参りましょう。」

「初陣で誘拐されて敵の指揮官に会うのか。気が進まないなぁ。」

「これもまた戦場のならいという物です。」

「あ、そうだ。こいつ俺の従者だから連れて行くぞ。こいつが居ないと俺は靴も履けないんだ。」

そう言ってハイネルドはレントを指さした。

「ふむ。まぁ一人ぐらいなら同行しても構わんでしょう。お前たち、残りの者は牢に連れていけ。」

「いや、俺あんまり気が進まねぇんだけど。」

渋るレントをグイグイ引っ張って兵士たちは指揮官の居る砦に向かった。

それを見送りながらハットンが感心したようにつぶやいた。

「あのハイネルドと言う王子、度胸が据わってるな。攫われて敵陣のど真ん中に連れてこられたってぇのに顔色ひとつ変えねえ。まさに王の器だなぁ。」

「またハットン中尉の褒めグセですか。度胸だけならあの従者もなかなかの物じゃないですか?」

部下の言葉にハットンが顔をしかめた。

「ありゃぁ度胸じゃねぇよ。単なるアホだ。」

「ではファウンランドへの脅しとして首になって届けられるんでしょうね。」

「恐らくそうなるだろうと思うよ。戦場じゃ阿呆はすぐに死ぬ。お前らも肝に銘じておけ。」

話しているハットンの元に筒を抱えた兵士が駆け寄ってきた。

「ハットン中尉殿、ファウンランド国軍への通達文を届けるようにとの事です。」

「チッさっそく人質交渉かよ。」

ハットンはつまらなそうに筒を受け取るとそばに居た部下に放り投げた。

「お前らこれ届けて返事をもらって来い。俺はあいつらの様子を見に行ってくる。」

そう言うとぶらぶらと砦へ向かって歩いて行った。

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