第七章 天空のエデン 8
レントたちが機械人形の後に続いて歩いていると格納庫の先に銀色のポールが立ち並んでいる。
機械人形が立ち止まり、ポールにあるボタンを操作すると上部が球形のガラスで覆われた数台の機械が地面からせり上がってきた。操縦席と思われる所にそれぞれレントたちを案内しているのと同じ型の機械人形が座っている。
「市街地まではこれで移動します」
「これは・・・移動用の乗り物なのか?」
「団長、これってなんか遺物の自動車に似てますね」
「これは・・・そうですね、あなたたちの理解できる言葉で言うとエアカーとでも言いますか・・・陸海空併用の車です」
「陸海空って、もしかして空を飛べるのか?」
「はい。50メートルほどでしたら潜水も可能ですし水上も走れます」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。これは今まで見た遺物の中でも1番実用性と希少性が高いぞ」
「これで驚かれては居住区に行ったら大変ですよ」
数人ごとに分かれて乗り込むと機械人形の操作でエアカーが地面からふわりと浮き上がり、次いで猛スピードで市街地へ向かって疾走した。
「これが古代遺物の街か・・・むしろ遥か未来の文明だな」
「緻密に作られた高層の建築物に人工照明。素材から完成度までまったく我々の文明では及ばないですね」
「・・・あのレント様、どこか行きたい所はございますか?」
「ん?ああ、そうだな・・・闘技場とか教練所があったら見てみたい」
「でしたら近くに軍事訓練所がありますが」
「ああ、頼むよ」
ドーム型の建物に横着けされたエアカーから一行が降りると中へと案内された。
棚に保管されている武器を眺めながらレントがつぶやいた。
「まぁ予想はしていたがオーヴァルブレードの武器が多いな」
「あまり力任せの重量武器は無さそうですね」
「ふむ。そうそう戦う事も無いだろうが、いい機会だから僕なりのオーブァルブレードとの戦い方を見せよう。本来は自分で考えて工夫するべき事だからあくまでも参考程度に考えてくれ」
棚から長槍を取り出すと穂先をへし折り柄の部分だけを持って構える。サンドラではなく団員の方を向いて声をかけた。
「よしクロロ、オーヴァルブレードでかかって来い」
「え?団長、本当にいいんですか?」
「構わん。殺す気で来い」
「まぁ俺は本気でやりますが団長は手加減して下さいよ」
クロロはオーヴァルブレードを起動させると下からすくい上げるように大きく振った。
横に躱しながら低い姿勢になるとクロロの足を薙いだ。次いで槍を反転させて今度は頭頂部へと打ち下ろす。
とっさに防ごうと構えたオーヴァルブレードを通過した柄がクロロの頭を直撃した。
「これがオーヴァルブレードを使い慣れていない者との戦い方だ。剣を扱う者の習慣で防ごうとしてしまう。ちょうどオーヴァルブレードとの戦いに慣れて居ない者が剣で防ごうとするのと同じだな」
「いたたたた。通過するってのが頭で分かっていてもどうしても剣で受ける癖が働いてしまいますね」
「そうなんだよ。つまるところ・・・」
レントはこの剣の欠点は大きい事とスイッチを入れてから起動するまでに1~2秒かかる事。
この機能を働かせるためにはそれだけの大きさとタイムロスが必要だと言う事。
だからこそ慣れている者は相手のオーヴァルブレード以外の剣を弾き返すだけの強靭な鎧を身に着けるか相手の剣を身を躱して避けるかのどちらかを選択しなければいけない事などを説明した。
「そしてオーヴァルブレードの使い手は決して相手の攻撃を剣で受ける事はしない。無意識のレベルまで徹底してこれを矯正する。だよな?サンドラ」
「ええ、私はオーヴァルブレードを使う時は無意識にでも剣で防ぐ事はしないように頭の中で切り替えるわ」
「そしてこの武器は僕には向いていない。完全に頭の中で切り替える事は出来そうにないからな。起動と停止に時間がかからなければ攻撃と防御を使い分けて戦えるんだろうが、残念ながら僕にとってこのタイムロスは致命的だ。とはいえ・・・」
なるほどと感心して聞いている団員にレントは厳しい目を向けた。
「この武器の最大の活用方法は何かと言うのを考えると本当の恐ろしさが見えてくる。アーク、何だかわかるか?」
「え?ええーと・・・」
「誰か分かる者は居ないか?」
「鎧に限らずどんな防御も役に立たないと言う事ですかね?」
「もっと踏み込んで考えるんだ。こいつはな、戦場に於いて本来なら1番安心できるほっと一息つける瞬間、つまり壁を背にした時が1番危ない」
レントの説明を聞いていた団員がハッとした表情になった。この剣は壁を難なく通過する。その事に改めて恐怖したのだ。
「わかったようだな。じゃあ腹も減ったしここまでだ。街に案内してもらっておいしい物を食べに行こうか」
「賛成!」
「団長、俺肉が食べたいです」
「オレ、鶏の丸焼きが食べたいです」
「あるといいがな。案外とペーストしか無いかも知れないぞ」




