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第七章 天空のエデン 5

 イリア村に到着したレントが小型艇の梯子を降りると、団員たちの調練を指揮していたサンドラが矢のような速さで駆け寄り抱きついてきた。


「レント!会いたかった。おかえりなさい」

「ただいま。僕も会いたかったよ」


 サンドラを抱きしめながら、ふと後ろに立っている団員たちを見てレントがぎょっとした。服が血泥で汚れ、焦燥した目をしている。まるで戦場の最前線で戦っている兵士のようだった。


「サンドラ、こいつら・・・何かあったのか?」

「いいえ?あなたが居ないあいだは特に何事も無かったわ」

「いやサンドラ、君にとっては朝食の卵をひとつ増やした程度の事でもこいつらにとっては毒酒をあおるぐらいの大事だと思うぞ」

「でもあなたが居なかったここ1週間ばかりは本当に何事も無かったわ」

「そ、そうか・・・」


 レントは団員たちを再び見つめて声をかけた。


「それにしてもお前ら随分くたびれてないか?特にクロロ、お前顔に死相が出てるぞ」

「そりゃここ1週間と言うもの姐さんとルネア師匠に血を吐くまで毎日鍛錬させられてますからねぇ」

「へ?ち、血を吐くまで・・・?」

「ああ、そこは大丈夫ですわレント様。治癒魔法でカバーしてますから」


 事も無げに言い放つルネアに戦慄するレントに更にサンドラが言った。


「まぁ一騎当千と言うには程遠いけど並の兵士が5人、10人がかりでも負けないぐらいには強くなったわ」

「いや、元々そのぐらい強かったし、その自覚もあったぞこいつら」

「ですから、そのプライドを粉々に打ち砕く所から始めました」


 レントの全身からドッと冷や汗が流れ出た。2人の言ってる並の兵士とは恐らく最低でも小隊長クラスの事を言っているのだ。考えてみたらこの2人は精霊の騎士でも特別の鎧を許された強者と猟犬の中でも今は使う事を許されない称号を持つ強者だ。


「それでもまだまだシユケ程度ってところね」

「シ、シユケはかなり強いと思うぞ・・・」

「猟犬でもこの程度では銀狼を名乗らせる訳にはいきません」

「いや、銀狼って今の猟犬では最高位の称号・・・」


 レントが思っていたよりも遥かにハードルが高すぎた。この2人は小隊長クラスどころじゃなく1代の勇猛な将軍並みの強さを全ての団員に要求していたのだ。


「とは言っても、まぁその中でもルシフェルの異名を持つクロロだけは別格ね」

「当たり前だ。ファウンランド軍の中でも分隊規模で旅団の名を冠する部隊の隊長だった男だぞ」

「あの・・・レント、もしかして怒ってる?」

「怒ってはいない・・・ただ僕はそこまでの強さを求めていなかったから驚いただけだ」


 恐ろしいと思ってるだけだ、などとは口が裂けても言えなかった。

善意でここまで鍛えてくれた事には正直レントも感謝している。ただその強さに至るまでの非情とも言える鍛錬を、なんの疑問もなく団員に強いたと言う事を除けばだが。


「ところでレント、例の古代兵器による戦争にはどう言う対応をするつもりなの?」

「その事なんだが僕はどこにも加担しない。取り敢えず当分の間はのんびり過ごすつもりだ」

「そう。あなたがそう決めたのなら私に異存は無いわ」

「で、みんなで一緒に遊びに行こうと思ってさ、そのための足を貰ってきた」


 そう言ってレントが小型艇を指さすと、今度は居合わせた全員が驚きの表情になった。

当然と言えば当然の反応である。小型艇とは言え50人程度ならゆったりと運べる大きさで、これほどの古代兵器、遺物を保持する国はそれほど多くはない。ましてや個人で所有するなど通常では考えられない事だった。いくらハイネルド王が大型の艦隊を手に入れたと言っても犬の子を貰うような気安さで貰える物ではない。

希少さもさる事ながらその金銭的な価値は小国の国家予算に匹敵するだろう。


「レント、いくらなんでもこれを貰っちゃうって・・・非常識じゃない?」

「なんだサンドラ、嬉しくなかった?これで君と出かけようと思ってるんだけど要らなかった?」

「いえ・・・えーと・・・嬉しいわレント」

「良かった。じゃあさっそく用意なんか要らないからみんなで行こう。さぁ、早く乗って。ルネアもお前たちも早く乗ってくれ」

「わ、私も?よろしいのですか?」

「お、俺たちもですか?」

「そうさ、大勢の方が楽しいだろ」


 急かすようにサンドラや団員たちを小型艇に乗せるとアークに離陸するように指示を出した。

流れる景色を見ながらサンドラがレントに尋ねた。


「ところでどこに行くのか決めてるの?」

「もちろん。おーいアーク、行き先の場所はわかったか?」







「はい、ヘルプラネットの座標をロックしました。後は通信、探索その他の接続端子を抜いても行けます」

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