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第七章 天空のエデン 4

 マルコスの手配した艦に乗り込むと手馴れた操作でアークが離陸させ、ゆっくり旋回するとイリア村に向けて発進加速した。手元の操作を見つめるレントに気付いたアークが操作説明をしながら質問した。


「それにしても団長、妙な注文をつけましたね」

「ん?何がだ?」

「こんな小型の艦船じゃなく、もっと大きくて武器とか通信関係の充実している艦を用意して貰えば良かったじゃないですか」

「あぁ、武器は要らないんだ。探索や通信も必要ない」

「それが妙な注文だって言ってるんですよ」

「ははは、そこがお前が副官になれない理由だ。マルコスはオレが必要だと思った要望に沿った物を何も言う前からこうやって用意してくれるからなぁ」

「マルコス副司令とオレを同列に語らないで下さいよ」

「あいつはオレの気まぐれさえも読んで先々の事を準備しているのさ」

「だったらいっその事副司令じゃなく国を立ち上げてもいいと思いますがねぇ」

「と、思うだろ?だがあいつは野心だけが欠落してるんだよなぁ」

「もったいない話ですねぇ」

「アーク、お前だってそうだろうが」

「え?オレがですか?」

「そうとも。他の連中もそうだがハイネルドやリンダを盛り立てる事ばかりを最優先してるぞ」

「あー・・・違いない。確かにそうですね」


 苦笑を浮かべるアークがコーヒーを飲みながらレントに尋ねた。


「ところで団長、これからどうするんです?」

「古代兵器同士の戦争に関わる気は無いからな。せっかくだからしばらくのんびり暮らそうと思う」


 パネルや計器類を眺めながらレントがいわくありげに笑みを浮かべた。


「取り敢えずはこの艦をシルクの監視下から外そう」

「シルク?誰ですかそれ?」

「え?・・・ああ、そうか。いや、言い間違えた。ルクレの事だ」

「まぁ理由は聞きませんが、それだと通信とか探索とかの機器類を全部壊すか外さないといけませんよ?」

「ああ、それでいい。まぁまずはみんなを乗せてからだな」

「みんなって・・・」

「サンドラと蠍のメンバー全員。あとはルネアもだな」

「ルネアって、猟犬の総帥だったって言う・・・あの?」

「そう、あの恐ろしい女性だ」

「サンドラ様が居ればどんな所でも勝手に影のように追ってくるのでは?」

「うーん・・・まぁ今回はさすがに無理だろ」

「無理って・・・だってあの溶岩洞窟にまで単独で乗り込んでくる人ですよ」

「それでも無理なのさ、だって俺たちの行き先はヘルプラネットなんだからな」

「へ・・・?ヘルプラネット?団長マジですか?問題になりますよ」

「だから一応は秘密だ。マルコスは恐らく予想しているだろうが、ハイネルドに告げる事は無いだろう」

「いや、言いますよ絶対」

「言わないさ、オレが行き先を知られたくないから機器類を使えなくしたって事まで理解するだろうからな」

「はぁ、・・・そんなモンなんですかねぇ?」

「そう言うモンなのさ、あいつは主と友を裏切らない」


         ◆


 テラスで公布用の文書に目を通していたハイネルドが後ろで控えているマルコスのくしゃみに顔をしかめた。


「どうしたマルコス?風邪か?」

「いえ、・・・もしかしたら誰かが噂してるかも知れないですね」

「ははは、レントとかか?」

「案外そうかも知れませんね」

「しっかしあいつも風来坊な所は昔っから変わらねぇな」

「そうですねぇ・・・そう言えば王様、彼の変化に気付きましたか?」

「変化?いや、特に何も感じなかったがどう変わったと言うんだ?」

「彼の表情やちょっとした仕草が数日前とは違って思慮深くなったと言うか、単なる羅刹猛将ではなく明らかに知将としての変化を感じました」

「それはちょっと良くないんじゃないか?あいつは直感で突っ走る奴だから思慮深くなる事でマイナスになる場面があるかも知れない」

「言い方が悪かったですね。虎の恐ろしさから悪魔の恐ろしさに変わったと言うべきでした」

「そんなにか?」

「ええ、敵として対峙すれば実感すると思いますが、私はむしろとっさの判断の幅が広がったように思えます」

「強くなりすぎだよ・・・俺はあいつには負担になるほどの期待をかけたくないんだがな」

「わかっています。だからこそ今回レント様が戦への参加を放棄して旅に出るのを止めなかった。いつまでどこに行くのかも聞きもせずに送り出している」

「止めても行くだろうし行き先はマルコス、お前が知ってるだろう?」

「私が?ですか?」

「そうとも。知ってるんだろう?」


 見つめるハイネルドから目を逸らしてマルコスが横を向いた。







「まさか。王国の危機ともなれば心当たりを虱潰しに当たるかも知れませんが、それでも探し出せるかどうかわかりませんよ」





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