第七章 天空のエデン 3
迷宮庭園を抜けて王の休息所と呼ばれるガーデンテラスへと向かいながら、レントは古代兵器による交戦がまだ行われていない事、ヂキールとキュプの1部が重力磁場による攻撃で焦土と化した事を道すがらマルコスから聞かされた。つまらなそうに聞いていたレントは庭園のリンゴをもぎ取ると服の袖でこすって頬張った。
「レント様、一応ここの果樹は王家の管轄で王族以外が食べちゃいけないんですけど・・・」
「それは検査をクリアした果実の事だろう。大丈夫だ、今オレが食ったリンゴは実ってる中でも1番おいしそうなやつだった」
「それ1番食べちゃダメなやつですよぉ!」
「違うな。この味を知ったら他のリンゴに文句を言い出すからクリア外だ」
「また滅茶苦茶な理屈を・・・」
レントはニッと笑うと持っていたリンゴの芯を口に放り込んで飲み下した。
「それよりもテラスに着いたぞ、直通でもうハイネルドが待ってる」
レントの言葉にマルコスがテラスを見るとイスに腰掛けたハイネルドが2人に向かって手を振っていた。
「よう、問題児の帰還か」
「問題児って言うなよ。まぁ間違っちゃいないんだがな・・・」
「一応確認なんだがヂキールの王が言ってたように騎士団長シグナスはお前がやったのか?」
「やらなきゃいずれこっちが殺されるのが目に見えてたからなぁ」
「そうか・・・国際的な問題になるかも知れないが、まぁ現状では文句を言いたくても言えないだろうな」
「国際問題か、すまんな」
「ところでヘルプラネットに吸い込まれた後で上位者と一緒に姿を消したらしいじゃないか」
「なんでそれを?」
「ヘルプラネットのアスタクリスから、その旨の通信が入ったのさ」
「そうか、・・・そう言えばあれからどのくらい経ってる?」
「今日で5日目だ。みんな心配してるぞ」
「連れて行かれた先では3ヶ月ぐらい過ごしていたんだが、そうか、5日か」
「さっき光る扉の中に居た上位者って以前ちょっとだけ話したアマイモモって悪魔なんだよな?彼に連れて行かれたのか?」
「いや、行く時は別の上位者でジョンと言うやつだった」
「ほぉ?で、そのジョンは一緒じゃなかったのか?」
「色々とあってね・・・うん、斬り殺した」
「ば、ちょ、おま・・・き、斬り殺しただと?上位者をか?」
「まぁ行きがかり上やむをえず・・・な」
「お前はやむを得ずが多すぎるんだよ!」
気を取り直すようにコーヒーを口にするハイネルドにレントが尋ねた。
「ところでアスタクリス王女との交戦は避けられそうなのか?」
「なんとも言えんな。今のところはイリア村とファウンランド、ネスカリカ以外の安全は保証されていない。つまりお前が居そうな所以外は気分で滅ぼすかも知れないと言う事だ」
「それで?ミクラスワルツ、いや、ヘルプラネットが大規模な攻撃を開始したらルクレたちと艦船を動員するつもりなのか?」
「そうならないようにアスタクリス王女と折衝もしているし主要国の代表も招集して協議しているのだ」
「そりゃお前も大変だなぁ」
「他人事みたいに言うなよ。為政者はともかく気分で殺される民はたまったもんじゃないだろう。俺は他国の者であっても罪のない民には1人として死んで欲しくはないよ」
その言葉にレントがコーヒーを飲む手を止めてハイネルドをジッと見つめた。
「な、なんだよレント、何でそんな風に俺を見るんだ?」
「ああ、ハイネルド。お前ってやっぱり王様だな」
「何を言ってる?」
「いや、いいんだ。何でもない。ところで古代艦で誰かイリア村まで送ってくれないか?」
「ああ、それならちょうどお前の部下のアークが居るぞ」
「アークが?またなんで?」
咳払いをしてマルコスが2人の間に進み出た。
「ああ、実は私が独断で呼び寄せて艦艇の操縦操作と推進の理論を叩き込んでいました。レント様がいずれそのような技術者を必要とするだろうと思いまして」
「お前は本当に先の先まで見通すなぁ。じゃあ専用の小型艦船も用意しているんだろ?」
「ご明察、恐れ入ります」
「お前が恐ろしいわ!」




