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第六章 邂逅の獣 25

 轟天号がグレイブ王妃の離宮を破壊し、首謀者のエイボンが【逃亡】してから5日が経った。

公式の発表ではクーデターに失敗したエイボンが愛人であるグレイブ王妃の居る離宮を搭乗型ミサイルで破壊し、無理心中を図ったがエイボン自身は死にきれずに逃亡、王妃は死にエイボンは【行方知れず】と言う事になっている。実際にはエイボンは既に死んでいるか幽閉されて居るのだろうとレントは思っていた。

その後のグレイブ王国の動向は興味が無かった為、一切聞いていなかった。

エリクシアは一連の騒ぎの最中にケガの治療もそこそこにミクラへと帰り、驚くべき事にその日の夜にはグレイブ王国から医療チームが派遣され、アスタクリスの治療が始まっている。


《だが治療は捗らず容態は思わしくないな》

《うむ、我もグレイブ王国の最先端医療に期待していたのだが・・・》

《エリクシア、俺が言うのも何だが少しでも長く王女の傍に居た方が良い》


 レントの見立てでは延命措置を取っても持ってあと数日、逆に言えば今死んだとしても不思議はない。そう言う状態だった。そんなレントの気持ちが伝わるのだろう。エリクシアはゆっくりと立ち上がると小城に向かった。

石畳の通路を歩くエリクシアに向かってメイドが1人駆け寄ってきた。


「エリクシア様、アスタクリス王女の容態が急変して今呼びに行こうとしていたところです。さぁ、早く王女の許へ参りま・・・」


 皆まで聞かずにエリクシアが走り出し、アーチ型の飾り扉を力任せに開くと居合わせた医師団やメイド、家臣を押しのけてアスタクリスのベッドに駆け寄った。

痩せ衰えてもなお美しく凛としたアスタクリスであったが、その顔は蒼褪め死相が浮き出ていた。


「来てくれたのね、私のやんちゃ坊主」

「我が主、何の手助けも出来ずただただ嘆く我に死を賜り下さい」

「そんな事は無いわ。あなたのおかげでグレイブからの侵略戦争を回避出来たし、考えられる最高の医療を受けさせて貰ったわ」

「しかし、しかし我は・・・!」

「しー、静かに。私はまもなく命を終えるわ。あなたには最後まで看取って欲しいの」


 力なくささやいたアスタクリスの右肩に鶏卵ほどの水疱が出来ていた。

それは見る見るうちに大きくなり、薄い皮膚越しに水疱の中で何かが蠢いているのが見えた。

と、音も無く水疱が破れて青いインクのような水と砂金が流れ出し、次いで羽衣蛙と思われる水色の透き通った蛙が2匹飛び出した。蛙は目に見えない階段でも登るように空中を跳ね上がって消えた。もう1匹も同じように跳ね上がった所をエリクシアが両手で掴んだ。氷の塊が喉を伝って胃に落ちるような感覚に襲われたエリクシアは羽衣蛙が自分の中に入り込んだのを感じた。


「エリクシア、あなた本当にバカね。でもあなたのそう言う所、大好きよ」

「我が主よ、せめてあなたと同じ苦しみを我に与え・・・我が主?・・・アスタクリス様?」


 だが血の気を失ったアスタクリスの目が開かれる事は無かった。

医療器械からの生体反応を示すグラフもフラットラインのまま動かなくなった。

グレイブ王国から派遣された医師団が打ちひしがれた様子で告げた。





「ただいまアスタクリス王女がお亡くなりになられました。我らの力が及ばず申し訳ございません」

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