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第六章 邂逅の獣 23

 極彩色の布切れを体中に巻き付け、大槍を抱え込んだ巨漢、ディーディーと呼ばれた女騎士が咆哮を上げながらエイボンの周囲に居る兵を斬り飛ばす。漆黒の僧衣を纏ったマリィギースが所狭しと魔法陣を発動させて逃げ惑う兵たちに雷撃や炎爆を叩き落とす。ボロを纏い巨大な一つ目の仮面を被ったザガンが地中から沸き上がらせたネズミや蛆を負傷した兵に襲いかからせる。


「怯むな、勝利は我輩たちの元にある。あの女たちは相手にせず隊列を整えよ。防御魔法を・・・」


 指示を出すエイボンの右腕が飛んだ。

大火傷を負い、体の所々が炭化して尚、レントが剣を振るったのだった。


「な、貴様!」

「驚いたよ。即死しなければ回復するもんだな」

「ぐぬ・・・」

「次はその首だ!さっさと斬らせろぉぉおおおお!!」


 剣を大きく振りかぶったレントがそのまま後ろに倒れた。

兵士たちを攻撃していた3人の女傑が手を止めて呆れた顔でその様子を眺めていた。


「あいつ、何で動けるのよ?体のあちこちが炭化してるじゃない」

「炭化火傷と腐敗毒の治癒回復なんてすぐは無理だってのにムチャするわねぇ」

「てか死んだんじゃね?倒れたまま動かねーじゃん」


 3人がそんな事を話していると、突然レントが倒れたまま剣を持った右手を突き上げた。

壊死、炭化した部分がボロリと剥げ落ちて、その下から艶やかな、いっそ濡れてるかのような青白い肌が現れた。


「私あれ見た事ある。戦った事あるもの・・・あれ悪魔だわ」

「ええ、間違いないわ。しかもかなり強そうね」

「へーえ、悪魔ってあんな見た目してんだ・・・あ!」


 起き上がろうとするレントに金属製の細い杭が数本突き刺さった。

不安そうに見守るティーワラーや女傑たちをよそに、レントが跳ね起きると苦もなく杭を引き抜いた。

杭が飛んで来た方を見たレントが苦笑した。


「轟天号か、こりゃマズイな。取り敢えずコイツだけは始末しとくか」

「そうはさせぬ」

「我らの指令を死なせはせぬ」


 エイボンに向けた刃をことごとく遮られ、逆に手練の護衛に斬り付けられてレントが後退した。

轟天号から照射された光の中に入り込んだエイボンに剣を投げつけるも、光の壁に跳ね返された。

治癒魔法で腕を再生してもらいながらエイボンがレントに不敵な笑みを浮かべた。


「レントと言ったな。お前に特別な呪いをかけてやろう」

「魔法じゃなくて呪い?ずいぶんと気の長い事をするなぁ」

「この呪いは契約を交わした悪魔によって得られた我輩だけが使える能力だ」


 エイボンが呪文を唱えると蒼黒い煙を纏った魔法陣が2つ発生した。


「ずいぶんと禍々しい魔法陣だな」

「当然だ。これは業と運命を否定する呪いだからな」

「意味は分からないが、かなりの魔力だ。命を削って放つ類いの呪いだろうが、オレなんかに使うのは惜しくないのか?」

「惜しくはないさ、むしろこの呪いは我輩の魂の消滅を食い止めてくれるのだ」

「ますます訳が分からない。これから殺す相手を呪ってどうする」

「呪われた相手は何度生まれ変わっても呪われ続ける。それと同時に我輩はその呪いの運命によって魂の消滅を免れる事が出来るのだ」

「生まれ変わっても・・・だと?」

「ああそうだ。そしてお前は・・・そうだな。この先何度生まれ変わろうとも役にも立たない外れ魔法を1つだけ、それ以外の詠唱魔法を使えなくしてやろう」


 エイボンの放った魔法陣が体を包み込んで行く中、レントは詠唱魔法が使えない原因がここにあった事に愕然とした。漠然と自分の能力不足が原因だと思っていただけにショックが大きかった。

続いてエイボンが残ったもうひとつの魔法陣をエリクシオンに放った。


「お前は生まれた国1番の醜男として何度でも生まれ変わる。生涯女に嫌悪され、しかもその性欲を抱えてその生を苦しみ抜いて生きるのだ。例えサキュバスと言えどもその性欲を枯渇させる事は出来ん」

「クゥ?キュゥゥー・・・」


 エリクシオンが悲しげな声を上げて魔法陣に包まれる中、轟天号から照射された光に吸い込まれるようにエイボンが轟天号に乗り込み、艦首がゆっくりとテントたちの方へ向けられた。

これから起こるであろう虐殺と王宮への攻撃を確信したレントががっくりと膝をついた。


「終わったな。みんな、すまない」

「ああ、これで終わりだ。我々の勝ちだ」

「・・・え?・・・ティーワラー博士、それはいったい?」







「首謀者を含めて主だった者が総て乗り込んだ。後はこちらで艦の全ての操作を行うだけだ」

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