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第六章 邂逅の獣 21

 一瞬エイボンが狼狽えたのをレントは見逃さなかった。

これで敵はエイボンだけではなく、グレイブ王妃もまたレントに敵対することを悟った。

好材料は王を無事に逃がした事とクーデターが【今のところ】失敗した事、悪材料はブライ王子を死なせてしまった事と他国であるミクラのエリクシアが関わっているのを恐らく王妃が知っている事だ。

打開策を思案しているレントの肩をエイボンの剣が斬り裂き、傷口がドス黒く腐食した。


「油断したな。その傷は魔気で身が腐り落ち、死に至る深刻な傷だぞ」

「ん?ああ、それは気にするまでの事じゃない」


 言う間に傷口から黒いもやが流れ出て腐食した部分を完全に治癒した。


「取り敢えず俺を殺すなら首を切り落とすしか方法は無いと思え。もっともそれはお前も同じだろうがな」

「獣人の特殊能力と言うヤツか。面白い、吾輩の魔法と剣を死んだ方がマシだと思うぐらい味あわせてから殺してやろう」

「どうかな?お前には出来ないかも知れないぞ」


 交差して今度はエイボンが脇腹に傷を負った。

追撃の刺突を躱しながら短句詠唱で傷を治癒するとエイボンが嬉しそうに笑った。


「ふふふ、見くびられたものだな。吾輩はあらゆる魔術に通じ、事実悪魔とも契約を交わしている。そのへんの悪霊レベルの悪魔じゃあない。この世界に実体を構築出来る程の力を持った悪魔だ」

「あー・・・うん。そうか」

「貴様、理解出来ないのか?悪魔、魔人、魔獣、その数4000万にしてこの世に実体を形作る事の出来るのはおよそ40万。吾輩が契約しているのはその40万の中でも高位に位置する大悪魔なんだぞ!」

「40万か・・・その悪魔は上位400の中に入るのか?」

「その質問に何か意味があるのか?」

「いや、何でもない。こっちの話だ」

「ふざけるな!言ってみろ、上位400に位置する悪魔がどうしたと言うんだ?」


 怒りに任せたエイボンの連撃を全て紙一重で躱すと、面倒臭そうにレントが答えた。


「残念ながら呼び出す事は出来ないが、契約などではなく下僕として俺に仕えている魔族が言ってたんだよ。自分より強い魔族は400ぐらいしか居ないってな」

「戯言を言うな、そんな名前のあるような個体がそうそう現世に現れる訳が無かろう。嘘をつくのならもっとマシな嘘をつくんだな」

「フッ、そうだな、まぁ聞き流してくれ。さぁ決着を付けようか。お前の単調な剣にもそろそろ飽きてきたよ」

「その単調な剣に随分と苦戦しているじゃないか」

「お前を殺して全てが解決するなら10数えるよりも前に斬り殺してるよ。だがまぁもういい、後の事を考えるよりもお前を殺すのが先決だ」


 エイボンが言葉を発する間も無く、滑るようにレントが迫った。

体が密着する距離。剣を振りかぶる事も出来ず、拳の威力も半減するゼロ距離での攻防。

突き放そうとしたエイボンの腕をカチ上げると掌打波、左手で衝撃波のドメを胸に打ち込み、ワンテンポ遅らせて右手で振動波のドーシをみぞおちに打ち込んだ。

ぐるり、とエイボンの眼球が裏返る。

レントは2歩下がると抜き打ちの浴びせ斬りを喉元に放った。






「きぇええええーーーーーい!」

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