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第六章 邂逅の獣 19

 フレンダー王の護衛の兵がエイボンの魔法と刃に次々と倒されて行く。

ティーワラー博士に抱えられて逃げる王の息が上がり、そのすぐ後ろにエイボンが迫った。

恐怖におののく王の頭上に剣を振りかぶったエイボンの視界に青い光が横切った。

咄嗟に光の矢を躱して身構えた先にエリクシアが剣を片手に立っていた。


「貴様、何者だ?」

「我はエリクシア、先ほどの借りを返させて頂く」

「変化したのか。なんとこの忌々しい獣人め、よほど息の根を止めて欲しいらしいな」

「貴様こそ我の息の根を止めなかった事を後悔させてくれる!」


 言うが早いか大剣を軽々と振り回してエリクシアがエイボンに突進した。

激しい剣の振り下ろしにエイボンが驚嘆した。名のある将にも引けを取らぬ動きと膂力であった。


「王さま、今のうちに早く逃げますぞ」

「ちぃいっ、逃がすか!」


 追い縋りながら横薙ぎに振るった剣が王の後ろに居たブライの首に深く食い込んだ。

即死したブライを見つめて呆然とする王をティーワラーが急かした。

尚も斬撃を放とうとするエイボンにエリクシアが斬りかかる。

数合の刃の応酬の後、エイボンが後ろに飛び下がりながら剣を鞘に収めた。

そのまま低い姿勢になり、抜き打ちの構えを取る。

それを見たエリクシアもまた息を整えながら剣を鞘に収める。

そのままエイボンと同じように低い姿勢を取った。

2人はじりじりと近付きながら抜き打ちのタイミングを待った。もうとっくにお互いの間合いを超えている。

抜けば殺せる距離、同時に抜かれれば殺される距離でもある。

瓦礫の小石がコトリと音を立てて落ちた瞬間エイボンは抜剣し、同時にもう片方の手で相手の剣の柄頭を手のひらで抑えた。が、抜ききれない。エリクシアもまた同じようにエイボンの剣の柄頭を手のひらで抑えていた。

互いに剣を封じられた状態でエイボンがあっさりと剣へのこだわりを捨てた。

柄から手を離すとすかさず脇腹への打撃を放ち、前のめりに体の沈んだエリクシアの顔に炎爆の魔法を込めた掌底を叩き込んだ。

口から血を吐き顔から煙を上げてのけぞったエリクシアに、抜き打ちの一撃を叩き込むべくエイボンが踏み込みながら抜刀した。が、胴を裁断するつもりで放った渾身の一撃が空を切る。

疑問に思うよりもエイボンの剣士としての本能が踏み込んだ足を咄嗟に引かせた。

次の瞬間、浅くではあるが引いた足をエリクシアの刷り上げた剣が斬り裂いていた。

斬られながらも冷静に距離を取ったエイボンが驚愕した。黒く焦げたエリクシアの顔の中央、額の部分に第三の目が見開かれていた。


「貴様・・・何者だ?額の傷から目が現れた途端に別の物になったな」

「ああ、わかるか。じゃあ次は思い知ってもらおうか」

「思い知る・・・だと?」

「ああそうだ。こいつ・・・エリクシアはどれだけ知識や技を仕込まれても動きが単調だし斬り殺す気概が足りな過ぎる」

「お前なら我輩を倒せるとでも言いたそうな口ぶりだな」

「そう聞こえなかったのか?今までどれだけ相手に恵まれて運だけで生き残ってこれたのかを教えてやる」

「なるほどな、貴様がこの獣人の別人格かどうかなどどうでもいい。・・・名を聞こうか」









「俺の名はレント・オルフィス。お前に本当の斬り合いってのを教えてやるよ」

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