第五章 金床神の地下王国 14
通信用の銅管がガンガンと打ち鳴らされる音が船着場の送話席に鳴り響いた。
「中継地、どうした?今の地震で何か壊れたのか?」
「それどころじゃねぇ!船尾の持ち上がった石船がそっちに凄い勢いで突っ込んで行くぞー!」
「ああん?酔っ払ってんのか?石船の船尾が持ち上がる訳が無ぇだろうが!!」
怒鳴りつけた直後、風切り音と共にマグマの波しぶきが寄せて来た。
「な、何だありゃあ?」
「ちょ、ま・・・に、逃げろぉぉぉおおおおおお!!!」
「石船が突っ込んで来るぞーーー!!」
「な、なんじゃー?いったいなんじゃー?」
逃げ惑うドワーフ達の横をかすめるように石船は船着場を乗り越えて坂を上って行った。
崩壊する石船から団員たちがドワーフの船長を抱えて船外に飛び降りて間も無く、石船は壁にぶち当たって粉々に砕けて停まった。
「おーい、全員生きてるかー?」
船着場に居たドワーフたちが駆け寄って声をかけると団員はそれぞれの安否を確認した。そんな中、ドワーフの船長が叫んだ。
「船尾に居たあの若いのはどこだ?」
全員がハッとしてガレキの山と化した石船に目をやった。
「ぶはぁっ!」
ガレキの山の中から出てきたレントを見て誰もが普通なら死んでると思った。
「いやいや、死ぬかと思ったよ」
「いや、普通死んでますよ団長」
船長がハッとしてその場にいる全員に大きな声で告げた。
「そうだ!そんな事よりも全員避難しろ。もうすぐこの島は噴火で大地震が起きる」
「大地震?いったいまた何でそんな事が分かるんだ?」
「炎竜を斬り殺したから島の火山を制御出来なくなったらしい」
「炎竜を?まさかこの若者が?」
レントがドワーフに頭を下げて詫びた。
「すまんな、まさか炎竜を始末したらこんな事になるなんて思ってもいなかったんだ。対岸の村の者たちはすでに全員尾根を渡って大陸側に逃げた。お前たちも船を使うなり沿道を通るなりして早く逃げろ」
「わしらが逃げるのはいいが、あんた方はどうするんじゃ?」
「俺たちはやる事があるからな。すぐに逃げる訳にはいかん」
「やる事?」
「ああ、ここに来た目的の大事な方がまだ残ってるんだ」
「命をかけてまでしなくちゃいけない事なのかね?」
「そうだ。キュプの王を倒しに行く」
「げえ!!たったその人数でか?」
「人数なんて関係ないさ、やる時はやる、それだけだ。」
「居城は堅牢強固な上に数万もの兵が居るのだぞ」
「知っている。あ、そうだ。お前たちの持ってるそのマント、オレたちにくれないか?」
「ああ?まぁいいけど、こんなモンどうするんだ?」
「これがあれば何かと便利だろうからな」




