あーにゃちゃんねる 6月14日
魔王様は人のことを基本的に名前を呼ばない。フラン大佐は大佐って呼ぶし、他の艦の人と会話するときも敬称で読んでるんだよねー。
私になんか、女史、なんて仰々しい敬称を使ってくる。
でも唯一、メディちゃんだけは名前で呼んでいる……。なんで?
って、今日の動画は、いつもとちょーっと違って、魔王様とメディちゃんにインタビューしてみました。
「そういうわけで、私が魔王様のヨメ! メディ・トラファール!! 戦場でも夜でも魔王様に付き従う、唯一無二のへぶぁっ!?」
……えっと、魔王様。
一応、カメラ回してるんで、肉がぶしゃー、とかいうのは控えてほしいんですケド……。あとでモザイク編集とかもしなきゃいけないし……
「気になるのか?」
まぁ、私たちの星だと、頭を吹っ飛ばされて生きてる人はいないので……。小さい子が見てることもあるので、人が死ぬ映像的なものは教育上良くないから規制かかっちゃいます。
「たしかに、人間の連中にとっては、確かに気味悪く映るだろうな。すまなかった」
「むー。私は別に大丈夫なんだけど……。見た目で人を判断して、モザイクをかけるなんて失礼だよ」
メディちゃん、だから頭を生やしてから喋ってほしいなぁ。
さすがに私は見慣れたけど、動画見てる人は精神ゴリゴリ削られる絵だよ、それ。
えーっと、話が明後日の方向に行っちゃってるから、内容を戻しますけど……、魔王様とメディちゃんって、どんな関係なんですか?
「奴隷とご主人様!」
…………。
魔王様。本当のところは?
「否定できんのが悔しいな。一応、俺の命令には絶対服従してくれているから、的外れとは言い切れん」
へぇ……。ちょっと束縛のある恋人関係みたいな?
「ありえん!」
「そうだよ、それはないよアーニャ!」
わお。2人そろって否定された。
「恋人なんて……そんなの全然つまらない!」
つまらない……?
「そーだよ! 私は奴隷! だからさっきみたいに、魔王様に頭を吹っ飛ばしてもらえる。銃で撃たれて、体潰されて、5分割に切り刻まれて……!そんなの!恋人は、そんな風に殴ってもらえないでしょ!?」
「…………」
えっと……魔王様?
「……俺が磁石なら、こいつは砂鉄だ。呼んでも無いのにくっついてきて、剥がそうとしてもへばり付きやがる」
……じゃ、じゃあ磁石と砂鉄の関係ってことで。
「それで良いのか……。とはいえ、この上なくウザいことに目を瞑れば、家事全般や他の仕事の出来は優秀だからな。昔から助けてもらっていることも事実だ。そういう意味では、鉄のように、多方面で役立つ存在ではあるな」
へぇ。昔から、ですか……。何年ぐらいの付き合いになるんです?
「ざっと100……いや、銀河基準時間だと200年くらいになるか」
……気が遠くなるような年数なんですね。というか、魔王様って何歳なんですか?
「ノイエの年数で300程だから……600弱か? もう覚えていない」
さすが魔王様、って名乗るだけありますね。私からはちょっと考えられないです。
「まぁな。魔王の名は伊達ではないということだ」
「とか言って、実際の統治はぜーんぶ役人任せだけどね」
え、そうなんですか?
「……魔王だからと言って、この世の全てを一人で成し遂げられるわけではない。元々なりたくてなった訳じゃないからな」
ふぇっ!? そうだったんですか?
「……まーな。そのあたりは、まぁ、複雑な事情が絡むんだ。悪いが、理由についてはノーコメントだ」
むー、先手打たれちゃった。それなら他の過去のこと……。
そうだ。メディちゃんとの馴れ初め! さっき200年前に出会った、とか言ってましたよね。その時、どんなことがあったか教えてください!
「……えらく個人的なことを聞いてくるな。この惑星の治世や、戦況とかを報道するんじゃないのか?」
そんなの撮っても、再生数伸びませんよ!
魔王様と、見るからに人じゃないメディちゃんの出会いの方が、絶対話題になりますから!
「女子が興味ないなら、あえて俺から語ることもないが……。メディとの出会いか。あまり思い出したくないんだがな……」
えっと……、聞いちゃマズい内容でした?
「マズいというわけでは無いんだが……」
?
「襲われた。こいつに」
……襲われたって、アレですよね。淫魔の食事的な意味で?
「ま、返り討ちにしたがな」
「そう。魔王様、私のハートをキャッチしてくれたの」
「物理的にな」
「私はスライム。心臓だって簡単に修復される。でも、魔王様にぎゅってされた瞬間、ドキドキがとまらなくなった。魔王様に私の全てがが握られてるって意識するだけで、体が熱くなって、呼吸が乱れた」
……そりゃぁ心臓鷲掴みにされたら、そうなるよメディちゃん。
「その時気づいたの。これが、恋なんだって」
いや違う。それは絶対恋違う! 恋愛は確かに色々あるけど、それはもう突っ込みどころしかないぐらいに間違ってる!
「魔王様、作戦上手。それに人柄も悪くはない。人気者。好かれる。でも、私はみんなよりもっと魔王様のこと想ってる。だから魔王様、私を躾けるために、熱くて硬いモノで貫いてくれる」
「銃弾でな」
「私の中でそれが弾けるの、すごく、イイんだよ? 私、魔王様の愛を隈なく受け止められる体……スライムに生まれてきて、それで、奴隷になれてとっても幸せ!」
メディちゃん、どうどう……。
やりすぎると、投稿先に怒られちゃうから! 私の編集の手間が増えるから!
「そーなの? じゃぁ×××とか、△△△とか――」
ぜーったいアウト!! そこ、後で音かぶせるからね。
「むぅ。人間は本能に向き合った方が良いと思うよ。愛は、とっても素晴らしいものなんばから……」
「……一応、帝国国民の名誉のために言っておくが。たしかに魔族は人間に比べて野性的な面が強い。だが、こいつほど阿呆でデリカシーの無い奴ではない」
ですよねー。フラン大佐とかも、まともな人だったし。
「ま、フランもフランで複雑な立場だけどな……」
へぇ、フラン大佐も何事情が――
……あれ? 今、フラン大佐のこと、呼び捨てにしましたよね
「ん? ああ。別に今は軍務中じゃないからな」
呼び方変えるんですか?
「軍務中は俺が大尉だから敬語。軍務外は俺が王だから呼び捨て。儀礼として当然だろう?
女子も俺とメディで敬語と通常の言葉を切り替えている。それと同じだ。」
魔王様なのに、すごく謙虚!
「王であるから誰もが傲慢という訳ではないさ。むしろそういうことができない奴は、王としての品格無しと判断され、人望を失う」
はぁー。そういうものなんですね。
話、戻しますけど、それじゃあ何で軍務中でも、メディちゃんは呼び捨てにしてるんですか?
「女史は、こいつを軍人と認めたいか?」
……あー。あーあーあー。なんとなく言いたいことは分かります。
「こいつを軍人と認めるのは、流石にノイエ帝国に対する侮辱だと考えている。もっとも、書類上は所属させなければいけないから、曹長の地位を与えてはいるが……」
「魔王様の傍にいられるなら、私は階級とか呼び方なんて気にしない。」
……何がメディちゃんをここまで駆り立てるの?
「そりゃあもちろん、愛だよ!」
もういいや。そういうことにしておこう……
あっと、それじゃそろそろ制限時間になりそうなので、このぐらいでインタビュー終わりしちゃって良いですか?
「本当に個人的な話しかしなかったな。まぁ、女史がそれを求めるならばそれで構わんが……」
魔王様。忙しいところ、ありがとうございました!
「構わん。俺も思う所があって暇を作った」
思う所……? それってどういう……
「気にしなくて良いよ、アーニャ。魔王様は小さなことでも、すぐに打算的に動いちゃうから」
そーなんだ……。あ、メディちゃんも、ありがとう。そっちも色々忙しかったんでしょ?
「んー、気にしなくて良いよ? お礼は後でちゃんともらうから」
……えっと、な、何をもらう気なのかな……?
「そりゃあもちろんアーニャの……。ふっ、ふっ、うふふふ……!」
ちょ、ちょっと! 何か言ってよメディちゃん!!
「今晩、寝る前で教えてあげる♪」
なんで今晩? なんで寝る前!?
「メディ。アーニャの身に変な手出ししたら、次の作戦はお前を地上勤務に回すぞ」
「大丈夫。口説くだけ。時が満ちるまで、手も足も触手も出さない」
“だけ”って……。それも十分アウトじゃ……
「そうか。なら良い」
えええっ!? ちょ、魔王様止めてくださいよ!
「自由恋愛までは制限できん。安心しろ、こうやって約束した以上、絶対に手も足も触手もださん。そういう点では、こいつは信頼できる」
その時点で色々問題がある気がするんですけど!?
というか、触手を出すってどういう状況!?
「ふふ。それは、体験してみてのおたのしみ♪」
嫌だよ? 私ぜったい、嫌だからね!!
…………
そんなわけで、魔王様とメディちゃんのインタビューでした!
ま、魔王様の言ってたとおり、2人の過去とか馴れ初めとか、そんな感じの話になっちゃったねぇ。
この国の歴史とか、戦況とかを聞こうかとも迷ったんだけど、そんなの自分で資料探したり、他の人に聞いても何とかなりそうだったから、こんな内容になっちゃいました。
でも結局のところ、メディちゃんのネタの方が多かったね。
触手……何する気なんだろう。漠然とわかっちゃうのがまた怖い。
一応インタビューだと変態っぷりを爆発させてたけど、魔王様の言ってた通り、けっこう良いところあるんだよ?
文字の読めない私に辞書を用意してくれたり、道具とか準備してくれたり、お酒とか缶詰とかで、私の愚痴を聞いてくれたり。
本当、私が男だったらお嫁さんにしても、悪くないかなぁ、とは思う。
……今のところ重要だよ?
私が男だったら、男だったら、だからね!?
【今週のベストショット】
さて、今回の写真!
最初に〔手取〕に乗り込んだ時にもお世話になった、龍の亜人さんです!
見た目は羽と角の生えたイカしたオジサマとドラゴンの写真を並べたように見えるけど、実際は同じ人。亜人さんは本当の姿と人の姿を変身して切り替えることが出来るみたい。
帝国の人たちは、こうした亜人って人が多い。
この前の鳥の亜人さんの他にも、蜘蛛さんやら猫さんやらがあっちこっちにいる。
その人たちが全員、鳥とか蜘蛛とか猫に戻れるんだって。いやー、やっぱりファンタジーの世界って素晴らしいね!
あ、それでなんと。近々〔フランドール〕が訓練することになるらしいんだけど、その映像を上空から、龍の上で撮影してOKって許可がでたの!
そんなわけで、私も龍騎士ですよ! ドラゴンライダーですよ。
絶対、良い絵を撮ってくるから、期待しててね?
それじゃまた次の動画お会いしましょー!
ばいばーい!
再生数;155092 コメント数:17031
ま、まだ日付が変わっていない!
だから、土曜日に投稿という約束は守られている……!
人は、タイムリミットギリギリになると、集中力が増すとか言われているけど、その通りだな……!
うん。次はもっと昼ごろに投下できるようになりたい。