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あーにゃちゃんねる 6月8日

 どーもみなさん、心配のコメント、ありがとねー!

 いやー、パパ、お姉ちゃん、本っ当にごめん! コメントに二人の心配の言葉があって、初めて家族に連絡っての思い出した!

 でもごめんね。検閲できる動画投稿はともかくとして、リアルタイムの通話となるとさすがに難しいって言われちゃった。

 そんなわけで感動の再会ってやつはしばらくお預けになるかな。一応前回の投稿から今日までは帝国軍の基地でのんびりやってるから、特に危険な目には合ってないので安心してください。

 投稿者コメントの方にも書いたけど、なーんと私、魔王軍のカメラマンとして働くことになりました! 魔王様からカメラも借りて、編集用のパソコンももらっちゃったり! いやー、流石は魔王様、太っ腹だねー。

 ……だけどこのパソコン、キーボードもソフトも当然こっちの言葉で、全くわからん……って状態。そんなわけで、しばらくは魔王様の私物パソコンをちょいと拝借して投稿していくことになるよ。だから投稿日と動画撮影時期のラグがかなり大きいけど、その点了承してね?


 これから見せる動画は、4日前……じゃない。そっちの日付だと1週間くらい前。この前の真っ黒動画から数日後撮影だね。

 今更言う必要もないと思うけど、前回みたいに黒画面+文字じゃなくて、ちゃんとした動画です。 その魔王様の紹介動画はまた今度にするとして、まずは私がファーストコンタクトを取った女の子――メディちゃんの動画です。

 正直、動画投稿するのは恥ずかしい事件なんだけど……まぁ、これもコレはネタとしては美味しいかなーってことでアップしちゃいました。

 それじゃ、その恥ずかしい事件のVTR&後付け音声、いってみましょう!


 事が起こったのは、墜落事故の翌日の夕方。

 私の故郷は1日が22時間だったのに、こっちは34時間。

 時差ボケが酷過ぎて昼間に倒れるように寝込んで、3時間ぐらいで目が覚めた。

 しかも短い睡眠だってのに、夢はしっかり見ましたよ。死体とか血とか肉とか、ちょっと前に見たリアルスプラッタな戦場の一コマ……。

 さすがに二度寝して、悪夢のアンコールを楽しむ勇気はなかったから、私はベッドから這い出して――

「ふぎゃ!」

 何か踏んだ。

 ぐにぐにぶにぶにとした感覚。死体、と思ったけど、薄暗い電灯の下にあるそれは、人型じゃなかった。

 かなり大きいお饅頭みたいで、全体的に青くて、なんか黒い楕円の模様があって。これってどこかで見たような――

『メディちゃん?』

 例によってぐにぐにと、私の精神をゴッソリ削るような蠕動で上半身だけ人型に変身。半分液体状態の手で私に抱き付いてきました。

『アーニャ、酷い。お見舞い来たノニ』

〔フランドール〕に収容された私は、外交官の娘ってことで士官室が割り当てられた。ただし個室ってわけじゃなくて、メディちゃんと相部屋。

 聞いてもらって分かると思うけど、メディちゃんの銀河語は魔王様よりも聞き取りやすい。

 おかげで私は分からないこと、困ったことが発生してもすぐに解決した。

『アーニャぁ』

『……もう、メディちゃんったら』

 時々密着度MAXな液体ハグをしてくることがあるけれど、初めての戦争体験でボロボロにされてた私に、はとてもうれしかった。

『私、非番。おやつ、持ってキタ』

 御覧の通り、両手で私に抱き付きながら、背中から触手をはやして缶詰とか瓶とかを机の上に置いてます。あれだね。俗にいう、SAN値直葬ってやつ?

『休憩。酒盛り。一緒にシヨ?』

『酒盛りって……。えーっとメディちゃん。私、未成年なんだけど……』

『未成年?何それ』

 首をかしげるメディちゃん。

 同じく首をかしげる私。

『あっ、アー……。そういえば教国だと飲酒は18歳、だっけ……。アーニャの星も、そんな感ジ?』

『うん。そう』

『安心シテ!魔族はそんな、無粋な事しない。子供でも、赤ちゃんでも、飲んでオッケー!』

……さすが魔族、やりたい放題。

『一緒に背徳の味を知って、大人の階段、昇ろ……?』

 うわぁ。なんか背徳的な響き。

 私は一瞬悩んだけど、答えはすぐに出ましたよ。

ええ、未成年飲酒でチャンネル炎上の覚悟でやってやりますとも。どーせここは銀河連合の治外法権!

『じゃ、じゃぁ一杯だけ……』

『さすがアーニャ! それじゃ、早速これで乾杯シヨ!』

 メディちゃんが取り出したのは2種類のお札だった。大きいのが一枚、小さいのが二枚。大きい方をテーブルの上に敷いて酒を垂らすと、無重力空間のように琥珀色の液体が球になる。表面には不思議な光る紋様。この前、魔王様が私に作ってくれたのと同じ光景。

『コレ、使えバ飲める。乾杯』

 メディちゃんが小さい方の札をもって、少し曲げる。

 札の上の方に弱い光で球体の模様ができる。それをお酒の球に触れさせて、さらに強く握って、札が折れ曲がった状態にすると――

『浮かんだ!』

『コレ、詠唱なくても、魔法、使える』

 魔法陣で覆われた部分だけ、球体のお酒がプルンと分裂した。

 これがこの国の、コップってことみたい。

 で、お札が二枚あるってことは……

『私にも、できるの?』

『モチロン』

 まさか、こんな形で私の魔法が使う日が来るなんて……!

 いざ、人生初飲酒にて、魔法初体験。

 ドキドキ……

『せーの……』

 まずはお酒に入れる前に、札をちょっと曲げてみる。

『わっ、光った……!』

 すると球形の光が浮かんだ。淡い青色で、何か文字とか模様が浮かんでる。メディちゃんが言うには、これが座標。それをゆっくりと酒の球体につけて…… 折った面がくっつける!

 じじ、と青い光が緑色に変わる。模様も少し変わった気がする。で、これを引き抜くと……

『おおおー……!! 浮いた! 浮いたぁ!』

 できましたよ。まるでカプセルに閉じ込めたみたいに、魔法円の内側に綺麗な球体ができてるですよ。すげー!魔法超すげぇー。

 あとは食器と同じで、口に入れる。

 ぶに……

 あれ? なんかゼリーみたいに固形だ。えっと…… あ、そうだ。魔法を解除しないといけないのか。

『うぶふぉあ!?』

 弾けた。口の中で爆発した。喉に当たった!熱っ!熱い!

『アーニャ、大丈夫!?』

『はぁぁぁ……!』

 これが人生發のお酒、大人の味。喉と口の中が焼けるように痛い…… のに気持ちいい! 胃と顔が一瞬で熱くなって、ふわふわと足やお尻が浮く感じ。

 もうね、最高!治外法権バンザイ!

『お酒だけジャなくて、コッチも……』

『わ、すごい……!』

 メディちゃんは指先をナイフに変形させると、ゴリゴリと缶を切り開けた。

 中身は、お肉と豆を煮込んだ料理……ぽい。

 私は気怠さをソファの背もたれに押し付けながら、私は缶詰に手を伸ばす。さっきのお札を使って、浮遊術で……

『ってありゃ?』

 見ての通り、缶ごと持ち上がりました。

 どーもこの術、意外とデリケートみたいで、術の中に缶とかも引っかかることがあるみたい。

あー、球の中に缶も引っかかっちゃったのかぁ。もう一回…… あれ? もっかい…… おお、できたできた。

『それじゃ、いただきまーす…… んっ、おいひぃ!!』

 ノイエ軍の缶飯なんだけど、これが洒落にならないほど美味いの。私が今まで食べていたものが、本当に食べ物だったのかと疑いたくなるくらい。たとえ見ないで口に放り込んでも、一口で何の肉か、何の野菜かが理解できるほどに素材の味が濃い。それでいて素材の味が喧嘩しないで、完璧な旋律になって口の中で響き渡る。

『ん~~、最高っ!』

 強い匂いが残る喉奥にもう一度お酒を流すと、ふわりと香りが交わって――たまらない。ああ、大人ってずるい。こんな最高の組み合わせを知っていたなんて。

 全身からどっと緊張が抜けて、全身から力が抜ける。合わせたように頭がふわふわして

『気持ちいい…… 体蕩けちゃいそう』

『これが、お酒の魔力だよ。大人の味』

『大人の味かぁ……』

 またメディちゃんが、私をハグした。

 人じゃありえないぷにぷにの柔らかさと、心地よい冷たさ、香水とは違う、ちょっと甘い感じの匂いがこの時ばかりはどうしようもなく気持ちよかった。

 目を閉じて全身をメディちゃんに預ける。その内に全身をコーティングするようにメディちゃんが絡まってきて、頭を撫でてくれる。

『メディちゃん……』

『ん?』

「メディ、グラーズィ」

 それは、この世界の言葉で「メディちゃん、ありがとう」を意味する言葉。メディちゃんが話せるとはいっても、私だってお礼ぐらいはこっちの言葉に合わせようと、ちょっと前に辞書で調べてた。

 一瞬、メディちゃんは驚いたけど、それから笑った。心なしか、全身を包んでいる液体ハグが強くなった気がする。

「リ・ティリ」

 今度は「かわいい」の意味の言葉。そしたら――

「アーニャぁ!」

『うわぁ!?』

 ノイエ側のイントネーションで叫ばれて、持ち上げられて、そのままベッドの上に放り出されちゃいました。

 ずずず、と液体ハグをしていたメディちゃんが、人間の形に戻っていく。

 人間らしくなったはずなのに、何か危機的なものを感じるのは、絶対に気のせいじゃない。

『め、めめ、メディちゃん……?』

 別に手足を押さえられているわけでもない。メディちゃんが体躯以上に重いわけでもない。それなのに、メディちゃんの瑠璃色の瞳を見ていると、ふわり、とアルコール以外の何かによって、自分の重さが溶けていく。手足から力が抜けて、痺れるように指を動かすことだけしかできなくなる。メディちゃんの青い目。

『メディちゃん?』

『酔った女にそんな言葉。アーニャは罪深い』

『え、えっと、それって……』

『二人っきり、薄暗い個室、適度なお酒、年頃の二人…… やること、きまってる』

『え、えちょ……!』

『私に、全部任せて――』

『ちょっと待ってぇえええ! 私はノーマル! ノーマルだから!!』

『大丈夫、すぐに慣れる……!』

『いや、慣れるとかそういう問題じゃなくて!! ストップストップスト――』

「みぎゅっ!」

 べちゃ!どしゃーん。

「ベルグシュ・ア・リデルラ」

 魔王様だった。この星の言葉だから言葉の内容は分からなかった、どうやらメディちゃんを蹴っ飛ばしたみたい…… ってえええ!?

『め、メディちゃん、大丈夫!?』

 メディちゃんは潰れた。いや、比喩とかそういうのじゃなくて、青い液体となって体が崩れてた。

『むー、魔王様が邪魔シタ!』

 けど、当の本人は無事みたい。広く弾けたメディちゃんだったものは、ヒルかミミズみたいにのたうちながら、少しずつ合体、巨大化していく。ただし出来上がるのは人型のメディちゃんではなく、大きな水まんじゅうみたいな物体。そのうえに、子供が落書きしたような、べた塗り黒色の目と口。

「ベティダ・ルディティ・ググル」

「ウィー……」『アーニャ、ちょっとお仕事は言っちゃッタ。御免ネ?』

『あ、いや。お構いなく……』

 呆然としているわたしの前で、メディちゃんはうねうねと蠕動運動しながら、部屋を出ていった。

『た、助かった……?』

 いったい何だったんだろう。いや、ちょっと想像できるけど、想像したくない。メディちゃんってひょっとしてアレ?男でも女でもどんと来いなタイプ?じゃぁ今は良いとして今度また二人っきりになったりしたら私は……

『女史は、メディにやたら気に入られているが…… いったい何をしたんだ?』

 魔王様が呆れた様子で、こっちに視線を向けた。

『何をと言われても…… 辞書を使ってカタコト会話をしていたっけ。意外とスライムって可愛いんだね、とかったぐらいしか……』

『女史。できレバその時に言っタ言葉、モウ一度、発音してクレ?』

 とは言われても……『りてぃり』だっけ?

『我ガ伴侶としたいほどに愛おしい』

 いきなり魔王様がとんでもないことを言い出した。え、何、告白?こ、こんな場所で?

『これが女史が、メディに向かって発言した内容ダ。リティリは確かに”愛くるしい”とイウ意味がアルが、ベッドの上で押し倒しタイほど、トイウ意味合いが強い、最上級の愛情表現だ』

『えっと、それってつまり……』

『露骨に言うナラ、私は貴方の子を孕ミタイほど好き、という内容ダナ』

 くっくっく、と魔王様が意地悪そうに笑う。

 ……ひょっとしてアレ?その後ソファの上で押し倒されたのって、マジでそういう意味?いや、でもメディちゃんは女の子だし……?いや、でもリノリで押し倒してきたし。

『時に女史は、スライム族のルーツを知ってイルカ?』

 そしてここで、私の精神に追撃&最後の一撃を加える説明が魔王様からなされました。

『スライムの始祖は、肉欲の大罪ヲ司る七柱神の一角、アスモダイ聖下ダ。姿形を変えるこコトデ、男女問わず夢中にシテ籠絡するタメ体を捨てた魔神なんだガ……。メディも交配が進んで純血ではないとはイエ、その血を引いている。シカモ、一族の中では濃い方ダ』

 メディちゃんが淫魔…… やっぱ【淫】て言われてる時点でアレをアレしてアレが大好きってことですよねー。それに私ロックオンされちゃった……。しかも愛の告白飛び越えて求愛までしちゃった。あはははははは――

『安心しろ、女史。帝国ハ他の国家と違い、同性愛ニ対しての偏見ハない』

『いやいやいや!私はノーマルですから!いくらメディちゃんが可愛いからって――』

『そう言っていた女や男ガ、何カ月か後にメディと寝る仲ニなっていったのヲ、俺ハ何度モ目にしてキタ……。魔族、人間…… そういえバ聖職者や天使を引き連れていたことモあったか』

 なにその「くっ、殺せ!」的なシチュエーション。

『マァなんだ…… 女史はもう命に対してハ吹っ切れているんダ。人間的な貞操観念も捨ててしまえバ、忘れることのできナイ快楽を味わうことガできルと思うガ?』

『いやあぁぁぁぁああああ!! ちょっ!ストップ! 止めてください、魔王様!!!』

『安心シロ。一途ではないガ、モノにした相手を悲しませることハしない奴ダ。最終的には別れるコトになるガ、俺ガ知る中で、その時泣いてイタ奴はいない。籠絡率は100%ダ』

『むしろ不安が強くなったんですけど!?』

 命の危機に関しては覚悟できるようになってきたけど、純潔の危機に関して何も考えてなかった。どうしよう。不定形エロ淫魔に襲わる覚悟……正直帰ろうか悩んだ。

 いや、動画としてはこれ以上ないほどオイシイ素材だけど、自分がその被験体になるのは勘弁だなー。いや、でも正直さっきも魔王様が助けてくれなかったら、色々押し流されていたかもだし……

 ……パパ、ママ。もしも私が将来お嫁さんを紹介しても、驚かないでください



 そんなわけで、今回の動画は終了!

 やー、本当は角と翼をもった龍族の人とか、オーガの料理長さんとか、ネコミミの整備士さんとか、いろんな人と撮った動画も見せたいんだけどねぇー。魔王様の検閲が意外と厳しくて没になっちゃた。軍艦の設備もそうだし、その人の種族とか階級も不用意に明かせなくて、かなり厳しかったんだよねぇ。

 そんな中で今回唯一、魔王様から許可をもらえたベストショットがこちら!


 お色気ハプニングの話題から一転して、シリアスな一枚です。

 〔フランドール〕艦橋脇からから艦首を撮影した写真。大破した主砲塔と、その上に偵察から戻った鳥の亜人さんが降り立ったところ。翼の形からして、鷲の亜人さんだと思う。頬の縫い跡と鋭い視線がかっこいいでしょ?

 背景に見える冗談見たいに大きい木が、噂に名高い世界樹。高さは30キロもあるとか。私を救出してくれた帝国海軍第四艦隊の母港は、この木の根元にあるんだって。

 当然次の更新は、世界樹がメインの話になるかな。

 戦艦とか戦争とか殺伐とした世界だったけど、次回はしっかりファンタジーなお話盛りだくさんなので、期待していてください。

 それじゃまた今度!!


再生数;95092 コメント数:10031


……今更ながら、youtuberのような動画を一人称視点で書くのが超絶難しいことに気付く。

だれか、誰か添削して「ひでぇ文章だぞゴラァ! ここを直せや!!」とか言って……



そんなわけで次話投稿しました。

前々から思ってたんですが、魔法文明があるなら、移動や戦闘だけじゃなくて、食器や料理に関しても、

絶対魔法を使ってるとおもうんですよねー。

そういう細かい部分も設定して、文章としてわかりやすく読ませて行けたらいいなぁ、とか思って居たり。。


辛口、甘口、様々な感想お待ちしています。

一言でも良いので、書いてくれるとモチベーションの原動力になりますので、よろしくお願いします。

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