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出撃(2)

銀河歴1597年 6月28日

新天歴4111年 7月29日

独立洋フリーダム・オーシャン 世界樹海峡東方 1900キロ海域

戦艦〔フランドール〕 後部艦橋


「んー、これは結構良い画になりそうです」

 燃え盛り沈みつつある船を見ながらそんなことを呟いてしまうのは、自分が戦場の空気にのまれつつあるからか。

 アンニュイな感情になりながらも、アナスタシアは撃破した商船に向かってシャッターを切った。

「……不謹慎だぞ、女史」

「やっぱり、そうですよね……。ちょっと調子に乗りすぎちゃいました」

 早くも、そして良くも悪くも戦争慣れし始めている少女を一瞥すると、パラトリアは自身も双眼鏡を手にして、被写体となっている輸送船を観察した。

「まぁ、確かに美しいことは認めるがな」

 そこで沈みかけているのは一隻の輸送船だったが、どうやら油脂類を運んでいたらしい。

 黎明の、どこまでも続く紺碧の海面。

 中央に大きく一つと、その周囲に無数の赤が輝く様は、たしかに幻想的な光景である。


「綺麗に取れていたら、また広報で使ってやる」

「本当ですか。ありがとうございます」

 アナスタシアは思わずカメラから目を放し、パラトリアに礼をする。

 “また”と言ったのは、先日の訓練でアナスタシアの撮った写真が、今月の第四艦隊広報の一面を飾ったのだ。

 鎌を振り上げたグリーフホーネットの喉に、ムスタファの爪が食い込んだ瞬間だ。

 文字通りの至近距離で、体液や甲殻が弾ける瞬間はまさに映画の瞬間を切り取ったようで、兵士たちや住民たちからも好評だった。

 だが――

「どうした? いきなりネガティブな声になって」

「いや……。今、火だるまになっている人と目が合っちゃって……」

「気のせいだろう。この距離を、肉眼で女史の姿を捉えるのは不可能だ」

 この前は訓練だった。

 しかし、今ここにいるのは戦場なのだ。

「……ごめんなさい。こっちも仕事なんです」

 口の中で小さく呟きながら、アナスタシアは新調した獲物を海面へと向ける。

 彼女が操るのは、全長1mを超える巨大望遠レンズだ。


 先日の海峡訓練の撮影時、アナスタシアは一つの問題に直面した。

 魔王から貰った望遠レンズでは、砲撃の迫力を撮影できないのだ。

 考えてみれば当然で、戦艦の射程というものは基本的にキロ単位。手で持ち運べる程度のレンズでは、性能不足は当然だ。

 かといって、新規購入しようと町へ出かけようとするも、そもそもインフラが魔法使用を前提として作られているだけに、無能力者のアナスタシアは散策すること自体が困難だ。

 先日はパラトリアとメディがいたが、彼らも軍人。

 暇があることはそう無いのである。

 さすがに仕事まで与えてもらっておきながら、これ以上のワガママは言えない。

 意気消沈しながら、アナスタシアは手持ちのカメラでなんとかやりくりしようと考えていたのだが……


「しかしまさか、〔手取〕の照準装置を魔改造してしまうとはな……。あいつらもよくもまぁ、そんな手を思いつくものだ」

 しかし『魔王の嫁』『宇宙人アイドル』『変態スライムとは正反対の癒し系』と噂になっていた少女を、帝国軍人たちが放置しておくはずが無かった。

 他国に比べて自由奔放と評される帝国軍たちは、合法以上違法未満のギリギリまでを考慮して、アナスタシアに新しいカメラを作ってやったのだ。

 それが員数外の武器――巡洋艦〔手取〕から鹵獲した、対空兵器の照準装置だった。

「にししし、友人の嫁さんのためだ。努力はおしまないよ」

 と研究所所長までが参加し、部品を見繕ってからわずか1日でそれは完成した。

 アナスタシアのカメラを調べると、それに装着できるように工業的、魔力的に特殊改造を施し、悪ノリに悪ノリを重ねた結果――

 全長約1m超、重量120kg、魔導式三脚(高度固定及び水平安定術式付与)内蔵、12mm機銃対応複合装甲……、と、とんでもないバケモノが出来上がったのである。

 初見の魔王曰く「……砲兵科に転職するのか?」と言われるほどで、移動するだけで浮遊術式のエーテルカートリッジが必要な代物だ。

 だがそれだけに性能は桁違いであり、10キロ先の人間の目の色が分かる、らしい。


「みんな親切な人でしたよ。将来の魔王様の嫁に、優しくするのは当然だって!」

「あいつら……。で、女史はそのありがたいおせっかいに賛同するのか?」

「んー、でも魔王様ってロリコンなんですよね? そりゃ今は良いかもしれませんけど、大人になって他の娘に乗り換えられちゃったら、それはそれで不幸な人生になっちゃいそうですし……」

 魔王相手に躊躇ない口調に、パラトリアは辟易とした表情で彼女の予想を否定した。

「違う。断じて違う! 俺は、俺より10cm以上身長が高い女に見下ろされるのが気に食わないだけだ。身長が気になるだけで、年齢やスタイルにこだわりはない!」

 そう言われて、アナスタシアはファインダーから瞳を外し、パラトリアへと視線を向ける。

 10センチとは言わないまでも、若干見下ろしている。

 試しに視線を水平にすると、大体彼の頭頂とほぼ一致した。

 ちなみにアナスタシアの身長は154センチである。

「魔王様、それ、ロリコンと大差ないです」

「哀れみの目を向けるな。クソ……! 俺だって好きで低身長で生まれてきたわけじゃないんだ」


 魔王の身長コンプレックスの話はさておき、戦艦〔フランドール〕は順調に軍事作戦を消化していた。

 〔97VJ作戦〕という、ロマンの欠片もない名称の作戦は、その名前と同様なほどに単純な通商破壊作戦である。

 戦艦〔フランドール〕を中心として、騎龍兵を乗せた駆逐艦で周囲を探索、独航ないしは船団を発見しだい撃滅し、その輸送先――連合軍基地の〔ナターク〕を日干しにする。

 さらに言うならば、〔フランドール〕に搭載された試作兵器の実験テストも兼ねているが、今のところ使う機会は訪れていない。

 狙いは敵の輸送船であり、初日にアナスタシアが見たような、お互いに死力を尽くした激戦は起こるはずもなく、ほぼ一方的な殴殺ばかりだ。


「んー、こんなものかなぁ」

「おう? 今日はそれほど取らないのだな」

「んー、内容がこの前と被ってますからねぇ。それほど良い画は撮れなさそうです……。不謹慎ですけど」

 一回目、二回目は派手に燃える輸送船を撮影することに興奮した。

 四回目は独行艦ではなく船団だったから見応えもあった。

 だが五回、六回となってくるとさすがにネタが尽きる。


「軍事行動だからって、派手な仕事ばかりではないさ。むしろこういう地味で目立たない作戦の積み重ねの方が戦略、そして目的を達成する確実な手段だ。日々の練習、小さな成功の積み重ねが成功の秘訣さ」

「耳が痛い……」

「どうした?」

「前に通ってた塾の先生も、テストの前に似たようなこと言ってたんです」

「なかなか優秀な恩師に出会っていたようだな。こうして物資を叩くことで日々の訓練や心の余裕を妨害し、心身ともに疲れさせるようにしていく方法が良い。言うなれば戦争というやつは、いかに効率的に弱いもの苛めをするかに尽きるのさ」

「もー、またそういう夢の無い話をするんですね……。魔王様ならもっとこう、強い敵をドーンと倒したりできないんですか?」

「じゃぁ正々堂々とやって、この〔フランドール〕諸共、魚の餌にでもなる覚悟で敵艦隊に突っ込むか?」

「いやー、やっぱ見た目よりもやっぱ効率重視ですよねー! うん、戦略って大事!!」


 慣れ、というのは恐ろしいものである。

 この惑星に降り立ってから、すでに約二カ月(銀河標準時において。1日34時間、1カ月37日のノイエ基準では、まだ1月も経過していない)。

 そして災獣相手の訓練や輸送船狩りを経験したアナスタシアは、完全に戦争が日常になりつつあった。

 ――そういうときが、一番危ないのである。


「〔η12〕より緊急通信!」


 やってきた伝令の言葉によって、一瞬にして、余裕のあった空気が変化したことをアナスタシアは悟った。

 パラトリアの表情から笑みが消え、思わず背筋が震えそうな――魔王に相応しい瞳が伝令へと向けられる。

「『我、輸送船団と遭遇するも反撃を受け、現在退避中。重巡3、駆逐艦10、輸送船30以上。敵は皇国軍の模様なり』」

「重巡3、か……」


 パラトリアは彼我の戦力差を計算した。

 こちらの戦力は戦艦〔フランドール〕と、偵察に出している駆逐艦が6隻。負けるとは思えないが、輸送船に手を出せるかどうかは微妙なところだ。

 特に皇国軍は駆逐艦による雷撃を重視しており、数隻でも接近されれば不覚を取ることもあり得る。が――


「グレイラを信じてみるか。艦長」

 雌雄同体のマッドサイエンティストの顔を思い出し、パラトリアは闘うことを決めた。

 性格に難はあるが、少なくともアレは、今までパラトリアの期待を裏切ったことはない。

 重巡3隻……実戦には手ごろな相手だ。

「よかったな、女史。戦争が始まるぞ」

「私のせいですか!?」




 それから6時間後。

 帝国軍は散開させていた駆逐艦を集結させつつ、〔フランドール〕を突出させていた。

 帝国側が輸送船団を方位する形だが、数は皇国側の方が多く、近づけばまず撃ち負けるだろうし、本気で突貫すれば容易く包囲は破られる。

 だが兵力を集中すれば、その分手薄になったところから別の駆逐艦が侵入し、輸送船に食らいつかれてしまう。

 それゆえに帝国軍駆逐艦は輸送船に近づけず、また皇国軍の駆逐艦も離れることができない。


「――つまり、正々堂々、真っ向からの砲撃戦ってわけデスね」

 見事に包囲を完成させ、敵の駆逐艦を釘付けにした魔王に心中で喝采をしながら、フランは中央に設置された、立体投影装置に目をやった。

 艦外カメラから得られた光学観測の結果は、艦橋中央に設けられた空間に三次元図で敵艦隊と味方の位置情報が表示される。

 一塊になった赤い三角形の集団から、比較的大きいものが3つ、こちらに向かって突出してきている。

 しばらくすると、その三角形の上に小さな文字情報が表示された。


「艦影照合終了。先頭2隻は蔵王型、残りの1隻は姫神型のようです」

「姫神型……。最新鋭艦のお出ましデスか。こりゃ、敵サンも本気らしいデスね」

 表示された文字列と脳内の記憶から、フランは敵艦のスペックを思い出す。

 主砲は全艦20センチ砲を装備。

 蔵王型が8門、姫神型が9門であるから合計25門……。

 やや数は多いが、火災などでこちらが戦闘不能になることはあるまい。

 むしろ怖いのは雷撃――至近用高初速対艦ロケットランチャーや、対艦大型魚雷だろう。


「進路修正、160。敵の頭を抑えるデス」

「進路160、宜候」

「砲術長、敵は接近するために煙幕を使ってくる可能性があるデス。魔導弾頭のミサイルに術式〔タイフーン〕を装填して、残しておくデス」

「了解」

 であれば接近させないことだ。

 ミサイルの弾頭に、暴風の魔術を仕込み、フランドールは小さく目を瞑った。

「あとは、例の秘密兵器デスか……」

 敵も馬鹿ではない。

 こちらが接近しての一撃を嫌い、距離を保つことは見抜いているだろう。

 無難なところで煙幕装備のミサイルをばら撒いて、視界を奪うか。

 もしくは何かしらの策を用意しているか――


「敵艦、まもなく主砲有効射程に入ります」

「電子回路閉鎖。非電子戦用意。砲術長、雷霊ミサイル発射。数は任せるデス」

「了解。艦首VLS1~4、艦尾VLS5~8放。発射はじめ!」

 フランの思考は、新たに上げられた報告によって中断された。

 彼女は規定通りの命令を行うと、艦首および艦尾両舷に備えられたVLS(垂直発射装置)が蓋を開き、内部からミサイルを吐き出した。

 次々に〔フランドール〕を飛び立った飛翔物体は、空中で角度を変え敵艦の予想進路へと向けて突撃していく……


「敵艦艇より噴煙を確認。ミサイルと思われる。数、20……もとい、32を確認! ミサイルからのアクティブレーダーを感知!」

「来タ! 砲術長、対空戦闘」

「了解しました。右舷速射砲で迎撃します」

「主砲対艦戦闘用意! 戦艦に勝てるなんて思い上ガッタ阿呆を教育してやるデス!」

 その光景は、敵の巡洋艦でも同じだった。

 艦首や艦尾から噴煙が噴き出すと同時に、その光天が軌跡を曲げてこちらへと向かってくる。

 それに向かって吐き出されるのは、右舷に装備された速射砲だ。

 先日の改修によってかなり数を減らしていたとはいえ、その砲門数は8門もあるし、それらは1秒に1発は撃てる。

 射撃レーダーと火器管制によって予測進路を導き出した副砲群は、その未来地に向けて12センチの砲弾をばら撒いた。

 一瞬の後、砲弾内のレーダーがミサイルを探知して信管を作動。

 抱擁していたプレゼント――無数の重金属片を来訪者たちにばらまき、熱烈な求愛行動を砕いて見せた。

 が――


『アハハハハハハ、アハハハハハハ』

「な、ななななっ!?」

 アナスタシアがファインダー越しに見た物。

 それは人の姿をした、青白い雷だった。

 彼らは満面の笑みを浮かべ、口から高笑いを溢れさせながら〔フランドール〕へと急接近し、主砲塔や速射砲、甲板にまとわりついた。


『アハハハハ! アハハハハハハ!!』

 それは子供の様に陽気に満ち、狂人のように延々と笑い続けるその招待は、雷霊いう、大気中の電波を食らう精霊だ。

 彼らは目の前にごちそう――索敵用レーダーや、各種電子装置を見つけて、悦び狂っているのだ。

 そして次に好きなのが、ステルス塗装のされていない、伝導性の高い金属だ。

 つまり彼らにとって〔フランドール〕も、また巡洋艦も甘美な餌なのだ。


『あっづ! あづっ! 熱つつつつつ!!』

 無論それはアナスタシアお気に入りのイアホンマイクも、である。

 ステルス塗装された甲板やや対霊加護の術を施されたセンサー類から漏れる僅かな電波や金属などよりも、純粋で、かつ食らいやすい美味。

 彼らは目ざとくそれを見つけると、対霊術式の施されていない電子部品に殺到した。

 過負荷に耐えられなくなった電子機器が弾け、制御基盤が幾度となく小さな爆発を起こした。


『あだっ、だだだだだだ!!』

『オムニュス!?』

 文字通り頭の中で弾ける白い明滅――。

 アナスタシアは床に倒れて暴れたが、不意にその頭部を抑えられた。

 その人物は煙と雷光に躊躇することなくアナスタシアに手を伸ばすと、その爆発の原因であるイアホンマイクを耳の中から引き抜いたのだった。


「はぁ、はぁ……っ」

『コルツ、レム、ドクツ?』

 未だに耳鳴りのする頭を抑えながら、アナスタシアは戦闘海域に入る前、パラトリアが翻訳機を外しておけ、と言っていた意味を改めて理解した。

 おかげで助けてもらった妖精が何を言っているのかわからないが、もっと大きな爆発で耳そのものが吹っ飛ぶという事態は避けられたのだから。


『あつつつ……破れてない……よね?』

 激痛に呻きながら、アナスタシアは意識を左耳へと向けた。

 ゴウゴウと耳鳴りはするが、その奥には未だやまぬ砲撃の音や、彼女をこのようにした雷霊の笑い声が聞こえてくる。

 イヤーピースが電気と熱の防波堤となったらしく、鼓膜は無事らしい。


『……イ、ディ、グラーズィ』

 数少ない語彙の中から感謝を表すものを選び、それを口にしながら助けてくれた人物の方を見た。


『わっ、わわ!』

 そこにいたのは、身長30センチほどの妖精だった。

 背中に羽が生えていることを除けば、アナスタシアと同年齢の青少年を5分の1に縮尺したような少年だった。

 金髪碧眼で凛々しい顔つき、頭身も高く、軍人らしく逞しい肉体……。

 アイドル顔負けの好青年と至近距離で目を合わせてしまい、アナスタシアの心臓がどきりと高鳴る。


「だ、大丈夫。怪我、少ない! OK!」

 カタコトの帝国語で、裏返った返答を返すアナスタシアを見て、彼は小さく笑いながらもふわりと、浮き上がって手すりに腰掛ける。

 双眼鏡を海原へと向けながら、伝声管に向かって何事かを叫んでいる。


(そうだよね。戦争中なんだから、こんなことくらい……!)

 その軍人らしい姿が、場違いな甘酸っぱい感情に呆けていたアナスタシアを現実へと引き戻した。


「……っ!」

 目で見えないが指先に感じるのは意外とすべすべとした感覚。

 派手に擦りむいて、皮が捲れた時と同じ感覚だった。

 痛みは完全にマヒしているらしく、なにも感じない。

 だが指で触れれば耳の形は、しっかりと耳だとわかる形状をしている。

 ――大丈夫、まだいける。


『……よし! 続き!!』

 小さく一喝をいれて、アナスタシアは体を起こす。

 息を大きく吸い、一気に吐く。心の臓に沈静の意思を伝達し、指先をカメラに絡める。

 基地の人々が作り上げてくれた怪物カメラは、電気部品などを持たぬため、雷霊の餌食にはなっていなかった。

 レンズやシャッターはもちろん、魔導式の三脚や、ブレを抑制する術式も問題ない。


 まずは敵艦を――とアナスタシアがファインダーを覗こうとした瞬間、ふと小さな光が視界の端に入った。


『まさか――!』

 それは、記憶にある光。

 先日の世界樹海峡での訓練では遠くから見た光。

 そしてそれよりさらに前――。

 アナスタシアがこの惑星に降り立ったまさにその日、パラトリアに見せてもらった破滅の光だ。

 アナスタシアはとっさに、カメラを敵艦隊から艦尾方面へと向けた。


「敵艦、左舷316。速力38ノット」

「電力充填まであと5秒。雷霊消耗、許容範囲内です!」

 フランは艦首に立ち並ぶ主砲塔に目を落した。

 雷霊が絡みつき青白い火花を散らす中、筒状の魔法陣が、4本の砲身それぞれを覆っている。

 その青く、眩い光はこれまで幾度となく見た光景だが、何度見ても幻想的で見飽きることがない。

 たとえそれが、大量の死を振りまく破滅の光であったとしても、だ。


 ――そういえば、あの宇宙人も後部艦橋で、この光景を見ているはずだ。

 軍人として汚れていない、まだ彼女は一体どんな感想を持つのだろうか……

 あとで聞いてみたいものだ。


「主砲、電力充填完了。発射準備よし!」

 他愛のない感情に思いを馳せていたフランだったが、部下の報告を聞いて思考を軍人のそれへと変えた。

 さぁ、戦争の時間だ。


「オーケィ。砲術長、撃ち方始めデス!」

「主砲、1番砲、3番砲。発射はじめ! 撃――――ッ!!」


『――――ッ!!!』

 口径38センチ、重量1トン、初速3キロ毎秒。

 ベクトル可算の魔法に導かれ、死と破滅をもたらす2つの砲弾。

 エーテルの燐光を纏い飛翔するその姿を、アナスタシアのカメラはしっかりとフィルムに焼き付けていた。


お、遅くなった……。

もうこれから、月曜更新にしようかな……。

土曜とか大体出かけるし……

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