あーにゃちゃんねる 6月17日(裏)
ええ、分かってます。
分かってますとも。
「なんで風呂の中の写真とれてんの?」でしょ?
流石魔族ですよ。
冗談でお風呂の中撮影おっけー?てメディちゃんに効いたら、首傾げられましたよ。
上げようか、お蔵入りしようか悩んだけど……。全裸コールやらお風呂コールのコメントが多かったから、アップしますよ。
編集で全部モザイク入れられた……と、思う。ミスってて削除くらっても再アップはしないので、そのつもりで。
「うっひゃー、絶景かな絶景かな」
残念、脱衣所のシーンはないよ!
というか、流石にカメラ片手で着替えられるのは無理だからねー。
……皆さん、ここで残念とかコメント載せないように。
「アーニャ、気に入った?」
「メディちゃん、あの、ちょっと色々隠すところ隠してあとで編集しなきゃいけなくなるから」
「んー? 私は別に、見られてもいいけど」
「いや、消されるから! 投稿できなくなっちゃう」
見ての通りだけど、どうもこの星だと胸とか足をタオルで隠すっていう習慣がないみたい。全部曝け出してる。
いや、本当にモザイク処理苦労したよ、これ……
「ふぁー、極楽極楽」
メディちゃんの裸体はさておいて、お風呂はとても良いカンジなんだよね、ここ。
木の板の温泉……どころじゃない。
足元は全部木で、お風呂も木を繰り抜いて作ってあって。
まるで小人になった気分。
そして遠くに見えるのは、黄昏に赤く染まる軍港と、その上を飛ぶ魔法使いや飛龍さんたち……
いやー、これですよこれ。やっぱり剣で魔法はファンタジーはこうでなくっちゃ
「女史。何突っ立ってるんだ。風邪をひくぞ」
と、思ってたところで皆さんお待ちかねのハプニングですよ。
「まっ、ままままま魔王さ――」
いやー、防水仕様でよかった。
カメラ思わず落っことしちゃった。
「――んで、――に、いるんですか!? 」
「いや、――っしょに、――まで来ただろう?」
「魔王様!」
魔王様だけじゃありません。
フラン大佐が来たけど、こっちは良い。
さすが、とでも言うべきか、しっかりとタオルで隠すべきところは隠してる。
実は私、この時点でここが混浴とは知りませんでした。
ひょっとして魔王様って、ボーイッシュな女の子だったのかなーとか、淡い期待を抱いてたんだけど……
「ああ、寒い。早く入ろうぜ、フラン」
でもその隣にいるのは〔フランドール〕砲術長、アンドレ・モレニエ大佐。胸毛もあって髭も濃くて……。
うん、大佐を女の子って呼ぶのは無理があった。
「珍しいな。魔王様がこんな所にくるなんて」
「げっ、メディの野郎がいやがるじゃねーか……」
そしてその後、カメラを風景から内湯に向ければこれですよ。
「お、なんだ? カメラ持ち込んでやがる」
「ってことは、あれが例のカメラマン? やだ、かわいいっ!」
「おー撮れ撮れ! 俺の名誉の負傷みせてやるぜ、ははははは!」
羽とか角の生えた人たち。上半身とか下半身が動物とか虫の人。
さらにはもう人の姿をしていない人、エトセトラ……
普段ならここで、ファンタジーな世界っ! て感動するんだろうけど、もうこの時だけは反応できなかった。
女の人はともかく、男の人のアレが普通に見えちゃってるし。
いや、私も年頃なわけだし、そういうの見たら「キャー!」って叫ばないといけないのかもしれないけど、こうも開けっ広げにされると、もう呆然とするしか無くてねー。
「アーニャ、何驚いてるの?」
「あ、えっと…… 男の人いるんだけど?」
「うん。それが?」
「混浴……?」
「あー、あーあー。そういえば人間は、性別でお風呂分けるんだっけ?」
ここでやっと、この温泉が混浴ってことに気付く私。
「教国だけじゃなくて、宇宙でもそんな面倒くさいことしてるんだ。それじゃ、私がエスコートしてあげる!」
「きゃっ、ちょ、何……!? って!! ちょっと!!」
カメラに映ってないから何やってるかわかんないと思うけど、変態スライムさんの触手に奪われました。私の一張羅。
いや、人間ってあまりにショック受けると、立ちすくむって本当だね。
私も完全に機能停止してフリーズ状態ですよ。
乙女の裸体を惜しげもなく晒しちゃってました。
「うるさい。風呂ぐらい静かに入らせろ」
でもそれは一瞬のこと。魔王様が触手女に変身しているメディちゃんを鷲掴みにして、お風呂の淵からそのまま外ぶん投げて――
「魔王様。えっと、ここのお風呂って……」
「ん?ああ、海抜200メートルだが、大丈夫だ。この程度であいつは死なない。精々空気抵抗でバラバラになる程度だ」
「えっと、それ、大問題じゃ……」
「少し痛い目を見ないと懲りないからな、あいつは。さて、これで当面の危機は去ったぞ。ほら、これを巻いておけ」
「え、あ…… わ、わわわわわわわわわ!!」
バスタオル返してもらうのは良い。良いんだよ。
でもさ、全裸になった女の子に真正面からタオルを差し出すってどうよ?
いや、渡さなくてもそれはそれで困るけど!
「どうした女史? 花束をもらったアルラウネのような顔をして……」
このコトワザは、こっちの言葉だと「鳩が豆鉄砲」って奴だね。
喜べばいいのか、驚けばいいのかわからんやつ。
もっともこの時の私は、豆鉄砲どころか戦艦の主砲くらった気分だったけど。
「魔王様ぁ!こっちで一杯やりましょう」
「分った。酒とってくるから待っててくれ」
そして無反応の魔王様。
しかし、この時は恥ずかしさと混乱でたけど、こうして見返すとムカつくね。
十代ピチピチの肌ですよ?
スタイルだってそれなりに悪くないと思うんですけど?
もちろん露出の趣味はないけど、無反応ってのもそれはそれで傷つくもんなんだね。
「女史はどうする? 酒か水か、サイダーもあるが?」
「あ、えっと。それじゃあお酒……」
まあ、そういうことは冷静になった今だから言えることで。
この時の私はただ混乱するばかりで、魔王様に誘われるまま、魔族の人たちのところへと引き寄せられていきました。
……余談だけど、このせいでモザイク処理が超絶面倒なことになった。
「どうした女史? 酒だぞ、飲まないのか?」
「だ、だってその……。こうも裸で、密集するのなんて生まれて初めてで……。その、ちょっと気恥ずかしくて」
「元々衣服なんてものは、人間とミノムシだけの文化だ。防護や防寒に効果的なのは認めるが、魔族からすれば何故風呂で生殖器を隠そうとするのか理解に苦しむ」
この時の私は沈黙するしかなかったけど、今考えると深い内容だね。ちょっと哲学的。
「あんたが例の記者か!宇宙人って聞いてたから、蛸みたいな奴かと思ってたが、普通に人間じゃねぇか」
「いやーそれにしても良い肉体してんなぁ。どうだ、俺の子供でも生まねぇか?」
「あら、隊長は人間嫌いじゃありませんでしたか?」
「うるせぇ!綺麗な女がいたら口説くのは男として常識だろうが」
「まったくこれだから男は……?どう、お嬢ちゃん?むさ苦しい男どもじゃなくて、私が優しく教えてあげても良いわよ?」
「まったく煩くてごめんねぇ。気にしなくて良いよ。酔っぱらいの戯言だ」
こんな感じで、みなさん意外と皆さん気さくだった。
時々セクハラ以上凌辱未満な声も聞こえるけど、まぁそこは魔族の方々なので仕方がない。
倫理観が私たちと違うのは、メディちゃん相手でもう分かってるしね。
で、御覧のとおりいろんな人から質問攻めにあって、どうしようかと悩んで、とりあえず目についた知り合いの人にインタビューすることにしました。
「フラン大佐。アンドレ砲術長って、中が良いんですね」
目を付けたのはフラン大佐。
アンドレ砲術長と肩を寄せ合って晩酌中。
「ああ、ウチの旦那ですから」
「へぇー旦那さんなんですか。そりゃ仲良く一緒にお風呂入るのも当然ってええええええ!?」
確かに歳の差婚って聞いたことあるけど。フラン大佐ってどう見ても20代だし、アンドレ大佐はもうおじさんと御爺さんの中間みたいな年齢だったから、素五億驚いた。
「えっと、失礼ですけどフラン大佐っておいくつで……?」
「あー、32…… デスかね」
「へぇー。結構若作りなんです…… あれ?」
ここで私、重要な事に気づきました。
確かノイエって1年が629日。
んで、1日は34時間だから……大体50歳くらい。
ちなみに編集中に調べてみたら、56歳ぐらいって結果になりました。
フラン大佐、リアルロリババアでした。
ただ一人の同類、人間だと思ってただけに、ちょっとショック。
「そこの性悪魔王に改造された元人間、人造人間デスよ。見た目の歳はとらねーデス」
「フラン大佐はああ言ってますけど、魔王様って性悪なんですか?」
「打算と確率で生きているからな。よく、そういわれる」
「魔王様って結構モテそうなのに、性格で損するタイプ……だったりして」
周りの軍人さんたちも、うんうん、って頷いた。
「って言うより、恋愛に興味がネーんですよ。女も男もタンパク質の塊としかみてネーです」
「まー性欲はメディの野郎で全部解消してるだろうからな」
「ほーんと、メディは料理もできて家事も完璧。夜の相手なんて最高クラス。なのにずっと小間使いしている鬼畜だからな、魔王様は」
「ついでにロリコン疑惑もあるしね」
「……お前ら。言いたい放題言いやがって」
魔王様。フリータイムだと、結構弄られキャラみたい。
威厳無い……、まぁこれはこれで面白いけど。
「ねぇねぇ宇宙人さん。宇宙人さんから見て、魔王様ってどう思う?」
「んー。身長の割に結構筋肉が結構すごいですよねー。命の恩人ですし、言い寄られたら結構ドキッときそうです」
「あははは! だってさ、魔王様」
このあたりから、お酒が回り始めて私もハイテンション
名も知らない悪魔っぽいお姉さんと協力して、魔王様弄りに参加。
「あとー、女装とかしたら似合いそうですよね」
「ぶふっ!?」
「はっはっは! 宇宙人さん、結構痛いところつくねー!」
「おま……! 言うなよ、絶対メディにだけは言うなよ!」
魔王様、半端なく焦る。
どうもメディちゃんが弱点らしい。
「それでどうなんだ、魔王様。この際、宇宙人ちゃんと結婚でもしたらどうだ?」
「そうそう。王に世継ぎは必須だぜ? この国、魔王様で持っているようなもんあんだからな」
「あはは! それいーかも。お姫様って、子供の頃からの夢だったんですよー。魔王様のファーストレディ……うん、悪くないかも!」
酔ってる。この時の私完全に酔っ払いになってる。
こうしてシラフで聞くと、頭を机にガンガンやりたくなってくる。
ぶっちゃけ、編集カットしようかと思ったけど……、ここを入れるか入れないかで、再生数がガツンって変わってきそうだから、身を切って実を取ると腹をくくりました。
「いつ死ぬかわからない身で、結婚して、子供を持てるわけないだろう」
「魔王様ぁ。もっとこう、甘い恋人同士のふれあいとか考えないんですか?」
「さてな。だが、記者がそれを教えてくれるというのならば、やぶさかではないぞ」
これは地味に上手いカウンターだね。
正直ちょっとドキっとした。
「おお、魔王様にも春がきたか。早速今夜にでも押したしちまえ」
「あらあら。背格好も似てるし、お似合いなんじゃないかしら」
「……だとよ。どうする、女史」
「えっ!? いや! さ、流石にそれは……っ!」
おー。さすがにここは声が裏返ってるね。
いやー、酔った勢いでこのままベッドイン、とかならないで良かった。
この時ばかりは、最低限度はお酒に頑丈に生んでくれたパパとママに感謝した……
はい、ここで映像は終了!
え、なんでって?
えーっとですね、残念なことにこの後は魔族らしい猥談の連発だったのですよ。
モザイク音連発で、もー編集が不可能なレベル。
私のウブな反応を見て、酔っ払いさんたちがノリノリでねー。
色々とダメなことを吹き込まれた。
もう、なんか色々と、成長させられた気分。望んでもいないのに!
そんなわけで、裏パートはおしまいだこのやろー!
露骨な再生数ほしさのお色気回だぞー!
こっちは体張って色々と映像酔いしたんだ!
みんなでガンガン宣伝して、私の懐具合を温めてくれー!!
ってなわけで、また次週もよろしく!
じゃーねー!
再生数:399542 コメント数:72334
裏回ということで別パートに。
ノリで書いた。後悔はしていない。