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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

残虐な巨人

作者: 湖城マコト
掲載日:2016/11/25

「よけろー!」


 私の祈りも虚しく、同胞が逝った。

 踏みつぶされた彼の身体は、最早原型を留めていない。

 何度見ても酷い死に方だ。だが、彼の死を悼んでばかりはいられない。集中して走らなければ、私も彼同様、あの残虐な巨人に踏みつぶされてしまうことだろう。

 遥か上方にある、蒼穹へと届かんばかりの巨体。いつ見ても奴らは恐ろしい。

 大きな個体と小さな個体が存在しているが、凶暴性は小さな個体の方が上。奴らは嬉々として、私達の命を奪おうとする。


「もう一体来るぞ。注意しろ!」


 一体だけでも厄介なのに、小さな個体がもう一体出現した。

 我々の任務は食料の調達。殉職率が高く、これまでに多くの同胞たちが散っていった危険な任務だが、誰かがやらなくてはいけない。


「くそっ――」


 また一人散った。巨人が彼に気を取られている間に、他の者は距離を取ることに成功したが、追いつかれるは時間の問題だ。

 誰かが巨人の注意を引き、時間を稼がねばならない。未来ある若者達を散らせるのは忍びない。ここは、老兵たる私が適任だろう。


「私が時間を稼ぐ。お前たちはその間に食料を届けるんだ!」


 同胞たちの制止を振り切り。私は可能な限り巨人の注意を引くべく奴の足の周辺を駈け廻る。

 私を踏みつぶそうと巨人は足を上げたが、私は潰される前に足の影の外まで逃れた。

 仲間達の方を見ると十分な距離は取れたようだ。可能ならな私も退避し、同胞の元へ合流したいが……


「流石に厳しいな」


 二体の巨人に囲まれた私にもう逃げ道は無かった。一体の巨人の足をかい潜ることは出来たが、もう一体の下ろした足から逃げ切るには、距離が足りない。

 

 ――仲間達は逃げることに成功した。これでいい……


 私の意識は、そこで途絶えた。




 

 ●●●





「こら、蟻さんを潰しちゃ駄目だっていつも言ってるでしょう!」

「は~い」


 一匹の蟻を踏みつぶした少年を、母親が叱り付けた。

 一つの命を奪ったというのに、子供は実に無邪気だ。



 了

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