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サクサク更新!
放課後になり、HRも終わった時刻。生徒たちは部活や寮へ帰るため、もうすでにクラスの半分が教室を出て行っている。
「悪い理麻、俺このあと用事があるんだ」
「え、そうなの?寮長さんのところ、玲治と行こうって思ったのに」
「悠もこのあと用事あるみたいで……空いてるのが紫音しかいないんだ……」
「大丈夫っ!任せろ!」
自信満々で胸をそらしている紫音の後ろで、悠が申し訳なさそうに謝っている。まぁ一人で行くことは防げたため、理麻は安堵していた。
玲治たちと別れ、紫音とともに3年の校舎に向かう。今日から理麻が過ごす寮の部屋とその説明を受けるために、寮長へ会いにいくのだ。ただでさえ上級生の校舎に向かうのは、緊張が半端ない。理麻はもうすでに倒れそうになっている。
とあるクラスの前で立ち止まる。入口の上には3-Cと書かれている。橘先生が言っていたクラスだ。
遠慮も躊躇もせず、紫音がそのクラスを覗く。そして寮長の姿を見つけ、声をかける。
「清水先―輩!」
「ん?なんだ、井上か。また寮の部屋壊したのか?」
「なんでそうなるんですかー!!ほら、転入生!今日来たんっすよ」
「あぁ。そういえばそんな話あったわ。待って、今行く」
何やら話していた友人と二言くらい言葉を交わしたあと、部活のエナメルバックを肩に下げ、入口へとやってきた。そして扉に隠れるようにたっていた理麻を見つける。
「いたな。俺が寮長の清水健人だ。よろしくな。えっとー」
「篠宮理麻っていうんだ!でも人見知りだから、怖がらせちゃダメっすよ!」
「なんでお前が言うんだよ。まぁ、いいか。いろいろ大変かもしれないが、何かあったら遠慮なく相談しに来な」
「は、はい」
「はーい!!」
「井上は自重してくれ」
「えー!!」
「井上いると、話進まねぇな。ほかにいなかったのか、付き添い……。つか井上はもう帰ってもいいんだぞ」
「俺は寮長が理麻に変なことしないか、見張り番です!!」
「しねーよ!!」
しばらく言い争い(本気ではない全ておふざけだ)をしていたが、清水が部活がこのあとある(彼は部長なのだ)といったので、急いで寮へと向かった。
少し歩いた先にあったのは、都心にありそうな高層マンションだった。内装は高級マンション顔負けの豪華さで、床は一面大理石であり、一回のロビーには10台ほどのエレベーターがある。その脇にドアがあり、寮長室と書かれている。
「ここが寮長室。午後9時が寮の門限だ。その時間になると、俺がここの入口の自動ドアに鍵かけるから入ってこられない。まぁ篠宮なら大丈夫だと思うけどな。外泊するときは専用の用紙を記入して昼休みまでに俺のところに提出な。外出届けも同じ。ここまでは大丈夫か?」
「はい」
「午後9時以降は俺は自分の部屋に帰るから、何か用があるときは1200号室まで来てくれ。あんまり夜中は流石に寝てるかもしんないけど。まぁ0時くらいまでは起きてるはずだ」
そう言い終わると、寮長室の鍵を開け、中に招かれる。中は意外と広くいろいろなファイルが収納された本棚と、パソコンや電話が置かれた机(職員室の先生用の机みたいなの)と数個のパイプ椅子。ポットに電子ケトル急須に茶碗が置かれている。
「今お茶入れるから、そこ適当に座って。緑茶しかねーけどな」
しばらくして3人分のお茶を煎れた清水は、2人のそばにそれを起き、自分の湯呑を持って、自分の椅子へ座る。一口それを飲むとパソコンを起動し、何かを入力し始めた。
「篠宮、学生証貸してくれ」
「はい……、ど、うぞ」
「ありがと」
それの表面に書かれた番号を、手慣れた手つきで入力しようやく彼はパソコンから目を離した。
「一応説明は受けてるだろうけど、この学生証で寮の部屋の鍵を開けることができる。オートロックだから、閉めるときは必要ない。あらかじめ寮の部屋にはこの学生証が登録してあるから、同室者と篠宮の学生証、それと俺の持つマスターキーでしか開けられないから。あんまりないけど、学生証をなくしたら俺のところに来れば自室には入れる。まぁ、なくさないのが一番だけどな」
「はい」
「で、肝心の篠宮の同室者だけど……」
「誰々!!俺?俺?」
「お前は既にいるだろ同室者。寮の部屋は基本2人で1部屋だ。共有スペースとそれを挟むようにして個室が2部屋あるからな。篠宮はすでに同室者がどっちか使ってるから、空いてる方を使うことになる。多分荷物が既に運び込まれてると思うぜ」
「それで!誰なんすか?!」
「なんでお前が一番落ち着きがないんだよ!!篠宮は3721号室……同室者は同じクラスの……仙道彰、だな」
その名前を聞いて、今までうるさかった紫音が黙った。一体どうしたのだろうと、理麻が横を見るとそこには、青い顔をした紫音がいた。
「紫音、君?」
「嘘……嘘だろ――――?!寮長!!今すぐ考え直して!!そんな、そんな仙道と一緒だなんて、理麻が殺される――――!!」
「え?!」
殺されるという、非日常的な言葉が出て理麻は驚いた。後ろに椅子ごと倒れなかったことが奇跡だ。
「やっば、今すぐ玲治に連絡だ!!」
「おい、井上?!」
寮長の声も耳に届いていないのか、紫音はあっという間に寮長室をあとにした。
(な、何がどうなってるの?)
次は前回はなかった話があいだに入る予定です。なるべく早くアップできたらいいな。