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食堂に到着した4人は、それぞれ食べたいものを注文する。その時に理麻が注文したありえない数に、彼が大食いだと知らない紫苑と悠は驚いていた。数分後各々の料理が配膳され、彼らはそれに箸を伸ばす。
「美味しい……」
「だろ?そこらのレストランよりも断然ここの飯のほうが、うまいんだ」
「にしても、清々しいくらいに、どんどん平らげてくね」
「そんだけ食うのに、なんで俺と同じ位の背丈なんだ?」
「むぅ……紫苑君、ひどい」
どうやら、たくさん食べることと身長が伸びることは関連が内容で、どんなに食べても横にも広がらず縦にも伸びることはなかった。横でぐんぐん伸びる玲治を見て、理麻は何度落ち込んだことだろうか。
『ざわ……』
『し、椎堂様だ……』
『副会長もいるぞ、珍しい……』
『ていうか、生徒会勢揃いだ』
『今日食堂に来てよかったぁ』
『こ、怖ぇ……』
「うわー、めっずらしー」
周りのざわめきにいちはやく周りを見回した紫苑が、入口の方を見てそう言った。その視線をたどると、なにやら注目を集める集団がいた。金髪の生徒を先頭に彼らはぞろぞろと食堂の中へと入ってくる。
「ね、玲治。あの人たち、誰?」
「あ?あー……っと」
「ん……?」
理麻たちがいるテーブルの横を通り過ぎようとした時だった。先頭の金髪が立ち止まり、理麻たちの方へ視線を向けた。そのあとに続いていた2人も、それに倣うように立ち止まる。
(え、なんで、あの人……僕の方見てるの?)
異国の人を思わせる、青みがかった瞳がしっかりと理麻を見つめている。そしてどんどんこちらへ向かってきた。通路側に玲治が座っているため、安心していたのが行けなかったのか、気づけば間近に彼の顔があった。テーブルの上に手をつき、身を乗り出すようにしてさらに理麻の顔を凝視する。
「おい」
「お前……」
玲治が静止する声も、聞こえないのかはたまた無視しているのか、彼の眼中には理麻しか写っていなかった。
「その顔……まさか……」
「おい、突然なんなんだよ」
金髪の彼が理麻の方へ手を動かしたその時、先ほどよりも大きな声で玲治が彼の腕を掴んだ。ぎしりという音がしそうなくらい、力強く掴んでいるのに掴まれた方は顔色ひとつ変えずに、玲治の方へ向く。
「邪魔する気か?」
「邪魔ってなんだよ。何の用だって聞いてんだよ」
「コイツの正体はなんだ?返答しだいではそいつをこちらに渡してもらう」
「俺のクラスの転入生、名前は篠宮理麻ですよ。生徒会長」
向かいの席から、柔らかい口調で悠が理麻のことを伝える。しかし納得がいかないのか、ちらりと悠の方を見た生徒会長は、再び理麻の方へ向く。
「それだけか?そいつ、“閃夜”だろう」
(閃……夜……?誰、それ)
理麻が知らない名前が出て、話に入れていない理麻はさらに置いてきぼりだ。
「あいつがこんなところに来ると思うか?俺だって、家のことがなきゃこんな所こねーのに。お前らの巣窟に、あいつが来るわけねーだろ」
「はっ。それもそうか。お前らがどれだけ隠そうが、俺らはあいつを探し出す。早く差し出したほうが身のためだぞ」
「そう言われても、俺だってあいつがどこにいるかなんて知らないんで。なにせ神出鬼没の気まぐれ様なんでね。飯まずくなるんで、どっか離れたところに行ってもらえます?」
「言われなくとも」
そう言うと、もう一度理麻を一瞥し、生徒会長は踵を返し離れた席に向かう。それに付き従うようにあとを追うもう一人。しかし赤いふちのメガネをかけた生徒はなぜか動かず、理麻を見つめてポカンとしていた。
「おい歩、なにしてる。早くしろ」
「ん、はーい。……またあとで、聞かせてよ」
彼がさり際につぶやいた声は、通路側に座っていた玲治と悠のみに聞こえた。そして彼はそのまま小走りで会長のもとへと向かっていったのだった。
前回よりも早く、登場した生徒会。前回が遅かったんですよね。
食堂で主人公と生徒会が出会うって、THE王道ですよね。まぁ、キスしないんですけど。あとこれ多分王道じゃないんですけどね。