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やっと登場の裏主役。今回は大暴れするんですかね。

「……なんか、不機嫌ですね」


 月明かりで照らされた、薄暗い夜。しかし街は眠りにつくことを知らないように、人で溢れ、建物からは光が漏れ出し昼かと思うほどの明るさがある。そんな街中から離れた路地を歩く二人組。

 顔色を伺うようにもうひとりの方を覗き込んだのは、ここら辺では知らない奴はいない、不良グループの副リーダーである。そして彼の隣を歩くのは、こんな人気のない路地に似つかわしくない容姿の少年である。


「うるせぇ。機嫌悪いに決まってんだろ、殴るぞ」

「そんな可愛い顔で、めっちゃ物騒なこと言ってるんだけどこの子―。俺泣いちゃう」


 このあたりを縄張りに活動している不良グループ、『skyscraper』〈摩天楼〉。そのグループのリーダーは神出鬼没であり、たとえグループ同士の喧嘩があっても、たまにしか顔を出さない。珍しく顔を出しても、あっという間に勝って去っていく。一刹那に瞬く光のごとく、夜にだけ現れることから、誰かがある時こう呼んだ。


それが『閃夜』の由来である。


上記の理由から、閃夜の素性を知る者は同じグループでも多くはおらず、ましてやほかのグループでも顔は知られていても、彼が何者なのか知る者はいない。巷ではプロの格闘家や殺し屋なんじゃないかと噂が立っている。


しかし真実はただの高校生なのだが、誰も気づくことはない。


 閃夜の招待である篠宮理麻との共通点が恐ろしい程にないからである。あるとしたら外見だけだろうが、それすらも打ち消されるほどその性格は異なっていた。


 


 高校に入ってからしばらくは理麻が忙しく、なかなか代われる余裕がなかったのだが、この度は久々に閃夜として街をぶらついている。時刻は既に深夜近い頃合だ。


「とりあえず、喧嘩を売る相手の候補が一つ」

「え、どこ?閃夜がそう言うなんてめっずらしい」

「それはお前らが俺が売るより先に、喧嘩をどっかから買ってくるんだろうが。こっちは巻き込まれてるだけだっての」

「それでもちゃんと助けてくれるところが、閃夜の優しsいででででででで!!足!足踏んでるから!!」

「次ふざけたこと言いやがったら、鳩尾に回し蹴りするからな」


 その言葉に隣を歩いていた玲治――――皐月は、さっとお腹を腕でかばうようにして閃夜から一歩後ずさった。あの小さな体から放たれる蹴りは、予想以上の威力を持っていることは、ここまでの経験から嫌でも知っていた。


「そういえば、あのムカつく青虫が言ってたんだけど」

「青虫さんって、閃夜虫さんとお話できたの?ごっふぅ!!!」

「久々に体動かしたいと思ってたんだ、ちょっと付き合えよ」

「待って!!真顔でそんなこと言うのやめて!!俺が悪かったから!!」


 目がマジだったと、後々の玲治は語っている。










しばらく俺理麻こと閃夜のターンです。


一閃:一瞬ぴかっと光ること。またその光の意。

光の速さのごとく現れて倒して去っていくので、そんな通り名がついたらしいです。

皐月(玲治)は自分で名乗ってます。由来は5月生まれだからっていう、安直なもの。

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