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新たな理麻たちの生活、お楽しみください。
そしてタイトルは仮である。orz
4月、入学式も終わり2週間あまりが経った頃。すっかり桜は散り、かすかに鮮やかな緑の葉が生い茂る季節。全寮制男子校、碧城学園高等部の正門前に、季節はずれの転入生がいた。
「ここが……新しい学校……」
広大な敷地は、とあるドームが2つは余裕で入る広さを誇り、その敷地をレンガ造りの塀が外部からの侵入を防ぐ。眼前にそびえる、豪勢な門は黒い格子で出来ていて、中の様子が伺える。
しかし校舎は見えず、公園のような木々が生い茂り、道が一本伸びているのが見えるだけである。
守衛に先ほど父親から受け取った学生証を見せ、彼は敷地の中へと足を踏み入れる。背後に門が閉じる音を聞き、深呼吸をする。
彼の名前は篠宮理麻、高校2年せいであり最近まで普通の進学校に通っていた。彼の両親は揃ってファッション関係の仕事についており、その仕事の関係で揃ってフランスに行かねばならず、渋々理麻が転校することになったのだ。
この学校には、寮があるためである。
所謂おぼっちゃま校というのか、生徒のほとんどが有名企業の子息。制服は有名ブランドと名高い理麻の両親の会社のものだし、校舎、寮などの施設は冷暖房完備等、とってもお金がかけられている。
校舎が中、高とそれぞれ3つずつ有り、体育館が4つ、寮が中、高と2つずつ。広いグラウンドも3つetc……。とにかく、規格外の学校である。
「まずは……理事長さんのところに行けば、いいんだよね」
学校前で別れた父から、そのように言われていたことを思い出し、理麻は車内で頭の中に叩き込んだ学校の地図を思い出しながら、理事長室へと向かった。
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よく晴れた4月の朝。陽光が暖かく降り注ぐものの、未だに肌寒さを残す。これでも昼間になれば上着がいらないほど暖かくなるのだ。桜が散り柔らかい新緑がちらほらと枝に点在する。
「いい天気……ん?何で寮と真反対の正門に、生徒が……あれは、高等部の制服って……え、あれ、まじ?」
桜の木々の間から、一人の少年が姿を現す。過ごしやすい気候を感じていると、ふと正門に人影を見つけたのだ。そしてその人物を見てその瞳は驚きに見開かれる。
「これは、面白くなってきたわ。退屈しないで済みそうだね、『閃夜』」
理事長室へを向かっている、理麻を見送り少年は高等部の校舎の方へ、向かった。
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碧城学園管理塔。名前のとおり学園すべてを管理する施設であり、その外見はまさしく塔――――といっても、作りは現代的なので、ビルに見えなくもない――――だった。一階の受付で、要件を話すとエレベーターで最上階に行くように言われ、それに従う。
ふんわりとした絨毯に覆われた床、内装は高級ホテルを思わせる。とても学校施設だとは思えない。
最上階についた。どうやら部屋は一室しかないようで、目の前にドアが一つあるだけだ。再び心を落ち着かせようと深呼吸を数回繰り返す。ただでさえいきなりの転校に緊張しているのに、初対面の人に会うということが、さらに緊張感を煽る。
理麻は人と話すことが苦手だった。人見知りというより、人と関わることに苦手意識を持ってしまう。ある程度親しくなれば、理麻も慣れなのか普通に会話することができるのだが。
理麻は意を決してドアをノックした。すぐに中から優しげな返事が聞こえた。しつれいします、と小さな声で言いつつ、そのドアを開ける。
理事長室はこれまた広く、シンプルな家具が目立つ割に重厚さを醸し出している。おそらく高級家具の貫禄だろう。高そうなデスクで仕事を片付けていたらしい理事長は、理麻が入ってきたのを見て、しっかりと仕事から視線をあげた。
やや長めの茶髪を後ろで結わえ、黒縁メガネをかけている。なんとも知的そうだけど、一般的な理事長に比べたら、随分若そうである。20代だろう。
「そこのソファに座って。随分早かったね、まだ朝のHRには時間がある。紅茶飲めるかな?」
「え、あ……はい」
「じゃちょっと待っててね」
そう言うと、黒い革張りの椅子から立ち上がると、壁際に置いてあった茶器等を使い、慣れた手つきで紅茶を煎れていく。初めて話す人、初めて来る場所にそわそわしつつ言われたとおりソファに控えめに腰掛けた。
ぼちぼちやってきます。(更新は遅めになっちゃいます、すみません)