元の世界へ帰る術
「これが4属の賢皇が遺した石碑だ。石碑の制作は賢皇本人が行ったらしい。この文字もな。ただ未だかつてこの文字を解読出来た者は居ないから内容を説明してやることは出来んがな」
これが4属性の魔法を操る者が作った石碑…
そして日本人である者が遺した1つの遺産。
「どうだ?これを見ての感想は?」
僕は困惑していた。
この石碑には日本語で文字が書かれていたこと。
「霧原」の名字が2人分彫られていたこと。
なによりこれはどう考えても…
「僕は…この石碑に書いてある文字が読める」
「な、なんだと!?それは本当か!?」
「あぁ。これは僕が元居た世界で使っていた文字だ」
「なんと書かれているのだ!?」
「それは……」
正直な所僕はこれに書かれている事を読み上げたくないし理解したくもない。
でもこれを受け入れなければどうしようもない。
そう本能的に理解していた。
☆★☆★☆
私の名前は霧原龍之助
かつて××町に住んでいた者だ。
私はひょんなことからこの世界へ飛ばされた。
私は元の世界に戻る為にこの世界を旅をした。
その結果とある方法を用いることにより元の世界とこの世界を結ぶことの出来る術を創ることが出来ることを知った。
それには4属性全ての魔法を最大に使用する必要がある。
勿論1人でだ。
ただ私には残りの寿命が少ないようだ。
よってその方法をクリアフェレスという名の大陸のアキリス国にある城へ巻物へ記して隠した。
これはその術を悪用して両方の世界の均衡を崩す者が現れるかもしれないからだ。
そしてこれを読んでいるであろう少年よ…私の子孫である霧原雫陰。
この世界から元の世界へ帰りたいのであればアキリスを目指せ。
もし帰るというのであれば私が遺した形見を持って帰ってくれ。
石碑の頭頂部に収めてある。
私が何故君の存在を知っているかは…その内分かるだろう。
君の旅の幸運を祈る。
☆★☆★☆
「そんな事が書かれていたのか…だがこれは何百と昔に作られた物。雫陰はまだ生まれてすらいないのにどうして…」
「それは分からない。けど4属の賢皇が僕の先祖であることは間違いないと思う。現に僕も4属性の魔法が適性しているのだから」
「むぅ…確かに」
「それじゃキルメス、僕を石碑の頭頂部に運んでもらってもいいか?先祖が僕に何を遺したのか気になる」
「分かった。それではそこを動くなよ」
キルメスは何やら詠唱を始めたかと思うと周囲の風が止み、僕の体が宙に浮いた。
「これが風の魔法…」
移動は速くすぐに石碑の上へと届いた。
「…でもどこに収めてた……ん?この突起かな?」
雫陰が突起を引っ張るとそれにくっついて長い木の筒が現れた。
「おーいキルメス!降ろしてくれ」
「分かった」
む…空を飛ぶというのは中々に気持ちいいな。
「何があったのだ?」
「ん~…ちょいと待ってくれ…よし。開いた」
箱の中には一振りの日本刀が。
それも百を超える年月が経ったいうのに輝きを全く失っていない見事な品が。
「これは日本刀…かな?凄い綺麗だ」
「私もこれまで多くの業物を見てきたがこれほどまでに刃が輝いている物は見たことがない」
まともな武器を所持していなかった僕にとっては嬉しい形見だ。
ありがとう遠い叔父よ。
「そういえばキルメス、クリアフェレスのアキリス城ってどこか知っているか?」
僕の先祖曰わくそこに元の世界へ帰る方法の遺したのこと。
必ず行かなければならない。
「あぁ、アキリス城は元私の城だ。いつの間に私の城に侵入したのだろうな雫陰の先祖は。全く気づかなかったよ。はっはっは!」
「え?それじゃもしかして…」
「そうだな。元魔王城。現勇者の城だ」
成る程。
一筋縄じゃいかないみたいだ。
世の中そんなに甘くないってことか。
「それを聞いて益々キルメスを魔王にしなければならなくなったな。お互いに利益がありすぎる」
「そうだな。私は魔王になるために。
雫陰は元の世界に帰る為に」
「だな…ってよく考えればキルメス。僕をあっちの世界から呼んだんだから元の世界へ返すことも出来るんじゃないのか?」
「ん?それは無理だ」
「な、なんで?」
「それは秘密だ。はっはっは!」
「この野郎…」
まぁいいか。
そんなにすぐ帰っても退屈なだけ。
今はこの世界を満喫するとしよう。