元の世界の遺物
「ただいま」
「おぉ帰ってきたか!」
家に入るとすぐさまキルメスが駆けつけて来てくれた。
なにやら机の上で弄っていたみたいだけど‥まぁいいか。
「それでどうだったのだ?いい物件は見つかったのか?」
「あぁ見つかったよ。とりあえず差し押さえておいた」
もっとも細かい手続きやらなんやら全てティルファさんがやってくれたのだが。
「そうか!それは良かった!」
‥キルメスはまるで自分のことのように喜んでくれる。
こんな些細なことでも。
それだけ僕に期待しているのか、それともただただ好意が故か。
…どちらにしても僕からすると嬉しいな。
「…‥あぁそうだ雫陰よ。これを見てもらえないか?」
「ん?」
そう言ってキルメスは先程机の上で弄っていた何かを持ってくる。
見たところただゴミ?のようにしか見えないけれ──!?
「キルメス…?これ、どこから持ってきたんだ?」
「……やはり心辺りがあるか。少し前に私が雫陰をギルドに連れて行ったままどこかへ行った時のことを覚えているか?」
‥あぁそんなこともあったなそう言えば。
おかげ様でどうでもいい苦労をしたものだ。
「あの時ギルドに昔の知人が来ていてな、是非とも見てもらいたいものがあると言っていたので同行したんだ」
それがこれ‥か。
「これを発見したのはトリアロイドのクロレイト鉱山なんだそうだ。まぁ今は鉱物を掘り尽くしてただの洞窟になっているのだが」
鉱山からこんなものが発見──
いや、それは関係ないか。
これがこの世界にあること自体がおかしいのだ。
「発見主は近所の子供達。洞窟で遊んでいたら偶然発見したそうだ」
「…‥他に─これ以外に何か見つかってないのか?」
「分からない。これがみつかってからはその場を立ち入り禁止にしたそうだ。現場保存と、危険の意味を兼ねて」
「他には誰かこれの存在を知っている人は?」
「それは結構な数が居るだろう。なにぶん私達にとっては見たこともない存在だからね。ありとあらゆる学者や研究員に調査させたが詳細は不明。魔力も感じられないことから誰かが遊びで作った玩具として結論づけ、放棄された」
それはそうだろうな。
この世界の住人がどれだけ調べたってそれのメカニズムは解明できないだろう。
あくまでそれは地球の創造物であり、動力がそもそも違うのだから。
「それで、その知人が放棄された[玩具]を取得し、私の所へ流れてきた。君なら何か分かるかも知れないとな」
元魔王ならなんでも分かるというわけでもないと思うが…
でもその判断は僕にとってはいい─もしくは悪い情報の断定的な証拠となった。
「雫陰よ。これは一体なんなのだ?お前ならこれが何なのか分かるだろう?」
あぁ分かるよ。
俺も前は日常的に使っていた。
今の生活には必要不可欠なものだ。
原型を殆どとどめちゃいないがこれは─
「僕が居た世界ではこれを[携帯]と呼んでいた。遠距離の人間と会話をするための通信装置だ」
何故携帯がこの世界にあるのか。
もしかしたら元の世界に帰る為の足掛かりとなるかもしれない。