後悔と決意と償い
コロウィリウスさんが亡くなった?
自宅で?
僕がうじうじしていたこの数日の間に?
僕はもうどうすればいいのかが分からなくなっていた。
何をするのが一番最善なのか、何をしないのが一番最善なのか。
そんな簡単なことさえ考えるのを止めてしまっていた。
ただこれだけは必ずやらなければならないという判断がついていた。
それは今すぐコロウィリウスさんの館へ行くこと。
☆★☆★☆
~コロウィリウスの館~
コロウィリウスさんの館へ着いた時には既に人で溢れ返っていた。
それもそうだろう。
これだけ広い敷地を持っていた独り身の老人が死んでいたんだ。
興味を持たない人が居ない訳がない。
僕は殆ど無意識のまま館の中へ入ろうとしていた。
しかし、それは1人の男性に止められた。
この世界の警察みたいなものなのだろうか?
身なりは整ってはいるがどこか近づき違い雰囲気を出していた。
そんな僕の考えを読んだのだろうか。
男はふいに僕へ話かけてきた。
「俺は別に役所の者じゃねぇぜ人間?俺ぁな、この館に住んでいた爺さんのただ1人の孫だ。だからよ、あの爺さんの遺した資産は全部俺の物。てめぇみたいな部外者に立ち入れられると困るんだ。さぁ帰った帰った」
この男は何を言っているのだろうか?
コロウィリウスさんの孫?
コロウィリウスさんにはもう家族は居ないはずだろう?
そんな事を考えていた為か雫陰は男に対して口を開いていた。
「あなたはコロウィリウスさんの孫ではないでしょう…?」
「なんだと…?」
「コロウィリウスさんにはもう家族と呼べる人は居ないと聞いています。ましてや孫なんて…デタラメもいいとこです」
コロウィリウスさんに孫が居たのだったらあんなに悲しそうな顔をする訳がない。
赤の他人の僕に全てを託すはずがない。
こいつの言っている事は全て嘘だ。
僕は本能的にそう判断していた。
こいつはコロウィリウスさんの遺産を横取りしようとする寄生虫だと。
「てめぇ…!うちの爺さんのこと何も知らねぇくせに知ったような口聞いてんじゃねぇぞ!」
確かに僕はコロウィリウスさんの全てを知っている訳ではない。そのほんの一部を聞かせてもらっただけだ。
[本当の孫]である者に比べたら全く知らないと思う。
「じゃああなたはコロウィリウスさんの何を知っているんですか?」
「あぁ?そうだなぁ…例えば爺さんの資産はどうやって築いたか、とかか?」
勿論それは僕も知っている。
でも…
「コロウィリウスさんはどうやってあれだけの資産を築いたんですか?」
「いいぜ、話してやろう。爺さんの生まれた家はな、裕福…とまではいかなかったがそれなりにいい暮らしをしていたんだ。ある日爺さんはな」
ここまで聞けば十分だ。
こいつはコロウィリウスさんの身内じゃない。
「もう何も喋らないでください。コロウィリウスさんを汚すようなことを言わないでください。不愉快です」
「なっ…!何を根拠にそんなことを言いやがる!」
「コロウィリウスさんが生まれた時はその日その日を暮らすのも厳しい貧しい家でした。でもコロウィリウスさんはそんな中でも自分を育ててくれる両親を助ける為にずっと努力して、今の財産を築いきあげたんです。分かります?あなたの言ってることは最初から矛盾してるんですよ!」
何が孫だ。
何がうちの爺さんだ。
知ったような口を効くな!
「あぁそうだったな。この話はうちの婆さんの話だった。2人揃って金持ちだからな」
まだしらを切るかこの男…!
「まぁそんな訳だ。さっさと帰れ。これから爺さんの遺体を運んだり調度品を運んだりしなきゃいけねぇんだ。貴様みたいな人間に構ってる時間は本来ならねぇんだ。分かったらさっさと行け」
そんな…
やっぱり僕は部外者でしたないのか…?
なんて引く僕じゃない!
「そう…だったら意地でもそこをどいてもらはなければなりません。あなたみたいな屑にコロウィリウスさんの全てを奪われたくない!」
「大人しく黙って聞いていればこのガキ!どうやらてめぇの血ぃみてぇようだな!」
「あなたみたいな屑に負けませんよ。コロウィリウスさんの大切な物は僕が守ります。それが僕に出来る[償い]です!」
それは本心だった。
コロウィリウスさんに託されようとしていた現実から逃げて、それに群がる寄生虫を払うのはせめてもの償い。
これぐらいしないで何が家族だろうか。
許されることなら僕は……