魔法の起源
「それじゃこれから僕が教えるのは魔法の起源についてだ」
「起源…」
「アクルカンには神話として語られる物語に6人の神が居るんだ。
1人目は[セイル]英知と信仰を司る[風]の神。
2人目は[ロアン]力と真実を司る[火]の神。
3人目は[アドラス]感情と幻想を司る[水]の神。
4人目は[ガイン]絶対と憤怒を司る[土]の神。
5人目は[パルモア]奇跡と創造を司る[光]の神。
6人目は[ゼア]無限と虚実を司る[闇]の神」
基本属性+闇と光の神が存在…
「彼等はこのアクルカンを創ったとされ、その時この世界を統治する為にそれぞれの力を受け継いだ精霊を解き放ったと伝えられている」
「……………」
「その精霊は神の眷族と讃えられ、このアクルカンの世界に[魔法]の知識を授けた。それから僕達は魔法を使えるようになったとされるんだ」
「そうなんですか…」
「何、これはただの神話だ殆ど当てにはならないさ。現にこの世界の住人ではない雫陰君が魔法を使えているのだから」
「そう言えばそうですね」
「まぁこれで1つ実証された訳だ。神話は神話でしかない。ただそれにどのような思想を抱くはその個人の勝手」
「あ、はは。そう言ってしまえば元も子もないような…」
「何、本当の事さ。それじゃ次の話に進もうと思うんだけど何か質問は?」
それなら一応1つ聞いてみようかな。
「付与属性に神が居ないのは何故なんです?」
「ん?それは簡単な事さ。付与属性は基本属性から派生した[人工]的な属性。後から存在するようになったものだから神話に載ることはない…それだけの話さ」
何か引っかかるような…
ま、いいか。
多分大した事じゃないし。
「分かりました。僕の方から質問はもうありません」
「よし、んじゃ一度外に行こう」
☆★☆★☆
「これから何を?」
「魔法の源[マナ]の勉強さ」
「マナ?」
「そう。一言にマナと言われても今1つ実感が持てないと思ってね。これから実践練習も兼ねてマナを視覚化し吸収してもらう」
「マナって見えるんですか!?」
「あぁ見えるよ」
驚きだ。
その手のものは不可視でそんなものが在るんだって思い込みだけの存在かと思ってたのに。
「マナについて説明すると、マナはアクルカンに存在するほぼ全ての物質に宿っていて一般的にアクルカンの大地から湧き出ているとされる」
「そしてこのマナは湧き出たそばから一番近くの物体に反応して宿っている。
だからこうして今僕達が話している間にも僕達にはマナが蓄積されているんだ」
成る程。
よくあるRPGの寝たら魔力回復!の原理が判明した気がする。
「ただ蓄積されると言ってもそのマナが宿る[器]の容量によってマナの量は変わってくるけどね。見かけが小さくてもとてつもない容量を誇る物もあるし、どれだけ大きくても涙程の容量しかない物もある」
へぇ…
それじゃ小さくて容量が多いのを所持してた方が戦闘中により多く回復できていいな。
「物質の場合はその容量は決まっているけど、生物の場合は鍛錬次第でマナを蓄える量は多くなってくる。だから頑張ってね雫陰君」
「はい!」
「それじゃこれからこの岩からマナを抽出してみるからよく見ていてくれ」
そう言ってフェイルが目の前にある岩に手をかざすと、岩全体が薄く輝いて小さな虹色の球体が現れた。
「これがマナ。魔法を発動するにあたり一番大事なエネルギー」
「綺麗…」
「ふふ、感動ばかりしていられないぞ。これから君にもマナを抽出してもらうんだから」
「でもどうやって?」
「マナに応えてもらうのさ」
「応えて…?」
「それを考えるのは雫陰君の仕事さ。僕は部屋に戻ってるから出来たら呼んでくれ」
「あ、ちょっ!」
そう言ってフェイルは雫陰に殆ど助言をせずに家の中へ行ってしまった。
「もう…でもどうせこれから必要になるんだ。さっさと修得してやる!」
☆★☆★☆
~数時間後~
で、出来ない…
何がいけないんだ?
とりあえず呼び掛けたり念じてみたりしたけど何の変化もない。
どうすれば…
「随分と行き詰まってるみたいだね~少年」
「シャミルさん?」
「どうやらフェイルの奴にみっちりしごき上げられてるみたいじゃない」
「いえ、いずれは通らねばならない道のはずだったので」
「ん~その考え方は感心だね~それじゃ私から1つ助言をあげよう。マナを抽出するにあたって大事なのはマナを重んじること。それを理解すればきっと応えてくれるはずさ。それじゃあね」
「あっ!シャミ……」
…マナを重んじる。
それってもしかして…
☆★☆★☆
~キルメス宅~
「お~いキルメス!ちょっと手伝ってくれないか?」
「ん?何をするんだ?」
「とりあえずフェイルさんの家の前まで来て」
「あぁ分かった」
☆★☆★☆
~フェイル宅•玄関前~
「これから僕と手合わせしてくれ。魔法だけでだ」
「魔法だけ?それはいいがなんの為に…」
「いいから」
「む、分かった。でも弱音は上げるなよ!」
それから雫陰とキルメスはしばらくお互いの魔法を放ては避けるの繰り返しを行っていた。
雫陰の魔力が底をつくのもそう時間は掛からなかった。
☆★☆★☆
「雫陰よ、どうやら魔力が尽きたようだな。とりあえずはここまで…」
「いや、まだだ」
「雫陰?でもお前の魔力は既に…」
無ければ増やせばいいこと。
多分マナを重んじるということはマナの存在に感謝するということ。
それなら…
「マナよ。僕にはお前の力が必要だ。
だから力を貸して欲しい」
するとどうだろうか。
雫陰の呼び掛けに応えるようにして辺りから沢山のマナが出現した。
「おぉ…これは…」
「ありがとうキルメス。キルメスのお陰でマナを抽出出来た」
そう言うがいなやフェイルが家の中から出てきた。
「いやはや…雫陰君は凄いねぇ…一度にこれだけのマナを現出させるとは…」
「いえ、キルメスの手合わせが無ければ出来ませんでした」
「そんなに謙遜しなくてもいいのに。キルメス、お前はどうやら面白い人材を拾ったようだね」
「辺り前だ!雫陰は私を魔王へとする救世主だからな!」
その言葉を最後に僕の意識はふっと途切れてしまった。