幕間:ベアトリスとシアンの夕飯作り
今回はシアンとガランドの過去が明らかになります!
ぜひ読んで見てください!
世界最強の執事シアンと、
帝国の凄腕諜報員ベアトリスの、
夕飯作りが始まる。
夕飯を作るだけなのに、
なぜか世界が破滅しそうだ……
「あれって……」
「史上最強の剣聖ガランドよね?」
「帝国の敵対国だった……」
「スワイという海賊の国を一人で滅ぼした……」
「その怪物が何でここにいるの?」
ベアトリスは情報量の多さに圧倒されている。
「それは……」
「私の師匠だからです」
シアンは隠し通せないと思い、
ストレートに伝える。
「え?」
「道場と村は滅んだはずよ」
「門下生たちとガランドの一族は全て……」
「スワイの王ブラハムに……」
ベアトリスは続きを、
言いたく無さそうな顔をする。
「私は少しだけいて、」
「全部学んで逃げました」
いたずらがバレた子供のような顔をするシアン。
「よくあのじいさんが許したわね」
呆れかえるベアトリス。
「ええ」
「私は手を貸しましたから……」
「ガランド様の復讐に……」
暗い顔をするシアン。
「孫娘の……」
「ミカと……」
「私は一時期、付き合いかけたんです」
誰にも話したことがない過去を暴露する。
「え?」
「あなたはアリシアが、」
「好きなんでしょ?」
ジャガイモの皮を、
剥いていたベアトリスは動揺する。
危うくジャガイモを、
落としそうになった。
「アリシア様のことは心から……」
「愛してます」
「でもミカは私に人間性を教えてくれました」
「私は元々は孤児でもう両親の記憶も、」
「ほとんどありません」
「十歳の時にガランド様の村にたどり着きました」
「良くしてくれたんです」
「あの人たちは……」
「ミカも……」
懐かしむシアン。
「ガランド様は剣術や体術を……」
「全て教えてくれました」
「文字通り生きるすべてを……」
「あまりにも飲み込みが早くて、」
「一二歳になるころには、」
「門下生はおろかガランド様のご子息様にも、」
「勝てるほどでした」
平然とした顔で言い放つシアン。
「あなた……」
「生まれつき化け物だったのね」
ドン引きするベアトリス。
「はい……」
「異常な身体能力」
「異常な魔力量」
「異常な魔術適性」
「私は自分が怪物だと思っていました」
「でもミカは違った……」
「初めて美しいと言ってくれたんです」
「誰よりも人間らしいと……」
「人生でアリシア様と同じくらい」
「大切な人でした」
「でも急に怖くなって逃げ出したんです」
「あの人たちを失ったら……」
「耐えられないと……」
シアンの思い出したくない過去。
それが今の彼女を形作っている。
「……でも起きてしまったわけね」
今度はニンジンの皮を剥きながら、
呟くベアトリス。
「はい」
「十三歳の時にカトル様に出会い」
「命を救ったことをきっかけに……」
「拾っていただきました」
「そして奥様が、」
「アリシア様を産んだのです」
「それから七年ほどは平和でした」
「ある時ガランド様の村が襲撃されたと……」
「王国で話題になってました」
「……カトル様に事情を説明し」
「転移魔法で駆けつけましたが……」
「そこから先は言わなくてもわかるわ」
わざと話を遮るベアトリス。
「ありがとうございます」
「ガランド様が留守だった、」
「タイミングを狙ったのでしょうね……」
「ミカとは最後に話せました……」
「なんて言ってたの?」
「ただ愛してる、幸せになってと……」
「最悪じゃない……」
「人生で初めて号泣し怒り狂いました」
「帰ってきたガランド様は……」
「何も言わずにたたずんで……」
「次の日二人で話さずとも敵討ちに……」
「雑魚は全部私が……」
「ブラハムはガランド様が……」
「でもブラハムは強くて、」
「ガランド様と一日切り合ってましたよ……」
「ブラハムも怪物じゃない……」
「こんな話アリシアには話せないわね」
ベアトリスはドン引きする。
「ええ」
「あなたもそう思いましたか」
「だからお祖父様と嘘をついて誤魔化しました」
シアンとガランドの過去は、
墓場まで持って行く予定だ。
「あなたもじいさんも大変だったのね」
「私も人のこと言えた義理じゃないけど……」
「そんなことありません」
「続けていいですか?」
「ええ」
「ガランド様は贖罪の旅に出ると……」
「今日まで会いませんでした」
「じゃあ久しぶりに……」
「ドクダミおかゆでも作って喜ばせる?」
「それは……」
「さすがに切られますよ」
シアンは少しだけ笑顔を取り戻した。
「フフ」
「やっと元気が出たわね」
「明日はピクニックにでも行きましょう」
「久しぶりにアンガス湖に行きたいわ」
ベアトリスはエミリーとの思い出に、
心を馳せる。
「いいですね」
「アリシア様も大好きですよ」
「ただ最近ドラゴンが出るとの噂が……」
シアンはなぜか嫌な予感がする……
「いやいや」
「あんたたち二人がいれば、」
「ドラゴンなんか……」
「紙くずよ!」
ベアトリスは悪役令嬢のように笑う。
「そうでしょうか?」
「私は自信がありません」
「ドラゴンや神相手に、」
「戦ってアリシア様を守れるのか……」
珍しく自信なさげな顔をする。
「大丈夫よ」
「あなたなら守れるわ」
「大切な人を守りたい気持ちがあれば……」
「強すぎる力もあるしね」
突然アリシアが厨房に入ってきた。
「二人ともお腹すいた〜」
「あれ?」
「もしかして……」
「お邪魔だったかしら?」
不意打ちにビックリする二人。
「いえ大丈夫です」
「私も平気よ!」
「ふ~ん」
「何か妙に仲が良くなってない?」
「実は隠れて付き合ってるの?」
にやけながら二人を、
いじり始めるアリシア。
「勘弁してちょうだい」
「こんな無愛想な女と付き合いたくないわ」
「すぐに私を燃やしたり、」
「追放しようとするのよ?」
普通に嫌そうな顔をするベアトリス。
「私だってお断りです」
「お嬢様に寄りつく害虫ですからね」
「殺菌消毒するために……」
「今日はマンドラゴラとドクダミの……」
「フルコースにしてあげますよ!」
シアンもいつも通り、
ベアトリスに塩対応する。
「それ全然嬉しくないわよ……」
「やっぱり二人とも何か変だわ!」
「愛し合う二人を邪魔してはいけないわね!」
「おじいちゃんを食堂に案内してくる!」
アリシアは二人に変な気を遣って、
食堂を飛び出していく。
「お嬢様!」
「勘違いしないでください!」
「そうよ!」
「アリシア!」
「こんな生意気な執事と……」
「誰が付き合いたいの!」
「はぁ……」
「頑張って夕飯を作り終えましょう」
二人とも絶望した顔をする。
「フルコースを作りますか」
「そうね」
「あの子とおじいちゃんを、」
「労わないとね」
「ありがとうございます」
「話を聞いてくださって……」
素直に感謝を伝える。
「別に勘違いしないでね」
「あのじいさんが味方か、」
「判断したかっただけよ」
「ベアトリス様……」
「それは世間では……」
「ツンデレと言うんですよ」
シアンは真顔で、
突っ込みを入れていく。
「うるさいわね!」
「早く手を動かす!」
こうして二人は少しだけ仲が良くなった。
果たして四人で仲良く夕食会ができるのか?
誰にもわからない。
勘違いされたままの二人ですが、
次回の夕食会ではどうなってしまうのか……
楽しみに待っていてくださいね!
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