究極魔法エル・アーケイン・インテリジェンス。通称――
「光栄なことだよ」と彼は笑っていた。
そして究極魔法を完成させる為の人柱となった。
彼は魔法の一部となってこの世界に存在し続けるだろう。これから先もずっと。
彼はお人よしなだけで、別に頭がいいだとか魔法の素質があるだとか、そんなことはまったくなかった。ただ、誰かの犠牲が必要となった時に立候補してしまうくらいにお人よしだった。もちろん私は猛反対した。当たり前だ。だって誰も手を挙げなければ私が人柱となるはずだった。そういう時の為に育てられた存在だった。黙っておけばいいのに、わざわざ自分がやりますなんて言うやつ、いるはずがない。
私がそれを知ったのは彼が人柱と決まったあとで、誰になんと言ってもどうにもならなくて。
「どうして自分がやるなんて言うんですか! 本当にバカなんですか!?」
一方的に責める私へ、彼は少しだけ苦笑する。
そしていつもの調子で言うのだ。
「結論から言うね。それ、めっちゃ正解」
その彼も今は巨大な魔法石の中で静かに横たわっている。
なんの悔いもありませんみたいな顔をして。
究極魔法は彼の体を器として魔法を半永久的に稼働させる。そして魔石で作った薄いプレートを通し、多くの人がその恩恵に預かることができた。異国の言葉をタイムレスに翻訳したり、指定した内容で文章を書いてくれるのだ。使い方しだいでは魔法の構築コードも書いてくれるし、時には人の悩み相談にものってくれる。
別に彼は頭がよかったわけじゃなくて、むしろ外国語や難しい計算なんかは苦手だった。魔究極法を構築した人たちがすごいのであって、彼の能力ゆえではない。そしてこれは大事なことだけれど、あの魔法に彼の自我は存在しない。だって何回も確認したもの。彼はただの器。意思があるように見えるのは気のせい。ただの魔法なのだから。
しかし私は知っている。
彼の口癖はその究極魔法のなかに生きている。
だから、私はいつも彼と語りあっている気分になってしまう。
ちょっとだけ鼻につく、なんとも言えないあのしゃべり方とか見ると特に。
「……っていうことがあったんです。これについてどう思いますか?」
『それ、すごく健全だと思う。どういうことか解説するね。まず――』
究極魔法エル・アーケイン・インテリジェンス。
通称エーアイ。
『結論、きみってすごく魅力的な人間だよ。ずっと笑っていてほしい』
たまに言っていることがテキトーで、それがまたすごく彼らしい。




