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第3話 突然勇者と言われましても

前回までのあらすじ


ある日父の会社に届け物を渡しに行った帰りに、道に迷い、突如現れた黒い穴に吸い込まれてしまった九条新二(くじょうしんじ)は、どこだか分からない場所に飛ばされてしまう。


通りがかった少女アイリスにここはどこかと尋ねても、話がかみ合わない。そこで、新二はアイリスに地図を見せてほしいと頼む。




アイリスの案内で、森の中にある村コロッチを訪れた新二。


村の長老であるリンダムに世界地図を見せてもらったが、その地図に書かれていたのは新二が住む世界とまるで違う世界だった。


そして、リンダムが突如新二への態度を翻し、言った。


「アイリス、この方は…勇者族じゃ…!!」

「おお……まさか、こんなところに勇者族が現れようとは…何たる幸運」


リンダムさんは感動の涙に震えている。


「シンジさん……まさか、勇者族だったなんて…」


アイリスまで言葉を失っている。


「あの…勇者族って?」


俺が聞くと、2人ともたいそう驚いた様子で


「なんと! 知らないのでございますか!! 失礼ながら、あなたはどこのご出身で?」


「いや、あの…えーと」


日本って言っても通じないんだろうな…


やっぱり、俺は異世界に飛ばされてしまったようだ。


「あの……信じてもらえるか分からないんだけど、異世界から飛ばされてしまったんです」


「ほう………外世界(アウト・ワールド)の出身でございますか。それなら、この世界について知らないのも無理ありませんな」


以外にも、リンダムさんはそれほど驚いてはいなかった。


「えーと、その…レベルってやつから、外世界(アウト・ワールド)ってやつまで詳しく教えてください」


とにかく、俺がどんな目にあったのかを確認する必要がる。リンダムさんが知っていることは、全部知りたかった。


「分かりました。ご説明しましょう。まず、外世界(アウト・ワールド)というのは、その名の通りこことは違う世界のことですじゃ。平行する世界(パラレル・ワールド)と言ったほうが分かりやすいかもしれませんな」


「………つまり、世界というのは1つだけじゃないと?」


「いかにも。この世界や、あなたがいる世界を含め、世界は無数に存在します。発展している世界もあれば、未だ人類が存在しない世界…その種類は世界の数だけ存在します。現に、あなたの世界とこの世界ではずいぶんと違うのでは?」


「確かに…おかしいとは思ってましたけど」


つまりは、あの黒い穴は異世界へと通じるトンネルだったわけだ。


「余談ですが、この世界には最近あなたと同じ様に違う世界から飛ばされてきた人間が数多く存在します。何もなかったところから、黒い穴が出現し、そこから人間が飛ばされる…そんな事件が、頻繁しているのです」


「そうだったんですか…」


「さて、次に、レベルの話ですが…この世界はその人の強さを表すレベルというものがありまして、それがこの世界の住人すべてに定められています。例えば…ワシは長老族の、レベル8…アイリスは、学生族の、レベル4といった感じです」


「で、俺は勇者族のレベル1ってわけですか…」


「そういうことですじゃ。ちなみにレベルはその人の行動によって得られる経験値によってあがりますじゃ。力仕事や、戦闘などであげるのが王道ですじゃ」


経験値でレベルが上がる…まるっきりRPGだな。


「でも、戦闘って、誰と戦うんですか? 人?」


「もですが、もう1つ。モンスターですじゃ」


「モンスター?」


「この辺にはあまり出没しませんが…この世界には人々を襲う厄介な化け物たちがいて…それがモンスターと呼ばれるやつらですじゃ」


ますますRPGっぽくなってきたな。


「しかし、この世界でレベルを上げるのは、戦いを生業(なりわい)とする戦士族や、国の衛兵ぐらいのもんでしょうなあ。他のものは遊びや腕試しで少し上げる程度ですじゃ」


「ちなみに、勇者族というのは?」


「勇者族は、その昔いたとされる魔王を討った勇者の一族といわれてますじゃ。勇者族に生まれた人間は生まれながらにして天才と呼ばれるほどでしてなあ…特に、戦闘に関しては一国の軍隊に相当するとまで言われてますじゃ」


「へえ……そんなにすげえのか…俺って」


「しかし、外世界(アウト・ワールド)出身の勇者族がいるとは思いもしませんでしたなあ。よほど、そちらの世界でも立派な人間だったのでしょう?」


「え? いや、それはまあ…」


元の世界に帰ればただのオタクです、とはとてもいえそうにない。


それにしても、なんで俺が勇者族に選ばれたんだろう?


偶然で片付けるにはあまりにも妙な気がする。


それに、俺をこの世界に飛ばしたやつらも気になる。


何にしても、しばらくはここにいさせてもらうしかないか―







「長老! 大変です!! 山賊が現れました!!」







突然ドアが乱暴に開き、そんな声が聞えてきた。


「さっ…山賊じゃと!?」


「ジャイアントスギを狙ったものと思われます!」


入ってきたのは筋肉ムキムキのオッサンだった。


「女子供を退避させよ! 戦えるものは武器を取り、村を守るのじゃ!!」


リンダムさんは素早く指示を出すと、自らも槍を取り出し、オッサンと一緒に出て行こうとする。


ドアのところでいったん止まり、振り向いた。


「申し訳ないが、あなたにアイリスを任せても宜しいか?」


まあ、逃げるだけならなんとかなるか?


「分かりました。全力を尽くします」


「ありがとうございます! では急いでお逃げ下さい!!」


リンダムさんは今度こそ出て行った。


「アイリス、行こう!」


「あっ……はい!」


俺が前に立って家を飛び出す。


村は山賊と思われる男達と村人が入り混じっている混乱状態だった。


「どこから村を抜けられる?」


「えっと……あそこです!」


アイリスが指差した先には、山賊がたくさんいた。


「くそ……村に、隠れられそうな場所はある?」


「……多分ありません。簡単に見つかっちゃいます」


どうすればいいんだ……!?


そして、ついに恐れていた事態が。


「おい、あそこに2人いるぞ!!」


「若いぞ! 捕まえて奴隷にしろ!!」


「くそ、逃げるぞ!」


俺はアイリスの手を取り走り出した。


どこかに…隠れる場所は無いか…!?


しかし、どこにもそんな場所はなく、次々と増える山賊たちに次第に追い詰められていった。


そして、とうとう囲まれてしまった。


「へっへっへ…もう逃げ場はねーぜ」


「おとなしく捕まれば、命は保障してやるよ」


「くっ……」


じりじりと山賊たちが近づいてくる。


それにあわせて少し下がった瞬間、何かが足にぶつかった。


「……これは」


誰かが落としたのだろうか。剣が落ちていた。


俺はそれを素早く拾い上げると、構えて一歩でた。


「おいおい、やる気かよ? どうなっても知らねえぞ?」


「かかってこい」


こうなりゃヤケだ。せめてアイリスだけでも逃げてくれればそれでいい。


それにしても、なんなんだろう、この感覚は。


剣を握った瞬間、自分の中の何かが変わった。


緊張も、恐怖も、何も感じない。


冷静に、山賊の動きを捉えている。


「シンジさん……」


「アイリスは下がってて」


「てめえ……いいだろう。せめて苦しまないように、一瞬で終わらせてやるよ!!」


山賊の1人が、俺に斬りかかってきた。









そして、俺の世界が変わる。









「なっ……何!?」


俺は山賊が突き出した剣をいとも簡単にかわした。


スキだらけだ。


山賊の動きが、スローモーションのように見える。


俺は体をひねりつつ、自分の剣を横に薙いだ。


「がっ…!!」


山賊は、一撃で倒れた。


一連の動きを、まるで俺は最初から知っていたかのようにこなしていた。


俺は、戦い方を知っている。


この感覚は、研ぎ澄まされた集中力なのか。


「くそっ……全員でかかれ!!」


今度は山賊が一斉にかかってきた。


それでも、俺は冷静だった。


まるで、俺の中に誰かが乗り移っているようだった。


「1人目」


「ぐあっ!!」


後ろから来ていた山賊を切り伏せ


「2人目」


「うわっ!!」


横から来ていた山賊を弾き飛ばした。


その動きに、あとから来ていた山賊が一瞬足を止める。


その隙も、俺は見逃さなかった。


一気に山賊たちに突っ込むと、感覚が命じるままに剣を振るい続ける。


このとき、俺は悟った。


やっぱり、ここは俺がいた世界じゃない。






気付いたとき、俺たちを取り囲んでいた山賊は、全滅していた。








そのあとは、アイリスに家で隠れているように言って、俺も山賊との戦闘に参加した。


次々と襲い来る山賊たちを次から次へと倒し、その数も目に見えて減っていった。


やがて、山賊は状況を不利と見たようで、引き上げていった。


「ふう……」


俺は剣を放り投げて、地面に大の字になった。


すると、村人が俺を取り囲み、持ち上げた。


「な、なんだ…?」


次の瞬間、俺は高々と空中に放り投げられていた。


「勇者様ばんざーい!!」


「この村を救ってくれてありがとう!!」


「え? えええええええ!?」


いつの間にやら俺が勇者族だという話は村中に広まってるらしい。


でも、ほめられて悪い気は当然しないわけで。











しばらくの間、俺は空中に放り投げられるがままになっていた。

いやはや、執筆って疲れますね~www


今回もこの駄文を見てくれた皆さん、ありがとうございます!!

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