第1話 「夢が叶う確率ってどんなモン?」
「新二、休みだからって寝すぎよー! 起きなさーい!!」
下から母さんの声がする。
そりゃ寝るだろ。俺には学校の宿題に加えてRPG研究で、へとへとなんだ。
けど、起こしに来られるのもなんだかウザいので、しぶしぶパジャマ姿のまま下に降りる。
「おはよー…」
「おはよーじゃないでしょ! 今何時だと思ってるの!?」
時計を見ると、11時30分。
確かあの無名RPGを全クリして寝たのが3時30分だから…8時間睡眠、健康的だな、俺。
「OH!! やっちまったぜ!」
とりあえずそう返しておけば何も言われない。
「やっちまったって、あんたねえ……もう高校生なんだから、しっかりしなさいよ」
また始まった。もう……なんだから発言。
もうこれだから母さんは余計なシワが多いんだよ(口には出さない、否、出せない)
「っていうか新二。ちょっとおつかい頼んでもいい?」
「ん?」
おつかい……何年ぶりなんだろう。
「この書類を、お父さんの職場に届けて欲しいんだけど…」
「父さんの職場に?」
俺は眉間にしわを寄せながら聞き返す。
実は俺の父さんは、4ヶ月ほど前に出張中に交通事故で死んでしまった。
「うん。何かすごく大事な書類で、無いと困るから届けて欲しいって、この間お父さんの職場から電話来てさ…」
ふうん、ま、お父さんはそれなりの役職にはついてたみたいだし、そういうのがあってもおかしくないかもな。
「いいよ、届けてくる」
父さんの職場までは、家から30分ほどかかるところにある。
仕事の内容についてはよく分からない。興味も無かったし、父さん自身も家にいるときは仕事の話はしなかった。
ただ、その会社名『アドバンス・コーポレーション』だけは、しっかりと覚えていた。
周りよりもひときわビルの高さが高い。それだけ成功している会社なんだろうな。
少し緊張しながら、ビルの中に入る。
まっすぐに、受付の方に行った。
「あの、すみません」
かすれた声で受付のお姉さんに話しかける。
「はい、何でしょう?」
受付けのお姉さんは丁寧な物腰で対応してきた。
「九条一の息子の新二です。この書類を届けに来ました」
「社長から伺っております。では、ちょっと失礼」
受付けのお姉さんは俺から書類の入った封筒を受け取ると、さっと中身を確認して、
「確かに受け取りました。どうもありがとうございます」
「いえ」
俺は足早にビルを出た。
どうもあの会社は好きになれない。
何をやっているのかは知らないけど、どうも利益を追求しすぎているような気がする。
父さんも、もう何日休日を返上したか分からない。
交通事故に遭った出張だって、日曜日の出来事だった。
もちろん、事故そのものは不運だったとしか言いようが無かったんだけど、それでも俺の中のモヤモヤは未だに消えていない。
そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか道を間違えたようだ。
見たことも無い場所に来てしまった。
(うわーこの年で迷子はきついな)
看板が無いかと辺りを見回してみるけど、そんなものはない。
道を聞こうにも、通行人すらいない。
あるのは、見たことも無い建物だけだ。
「おいおい……ここはどこなんだ?」
口に出してみても、何も分からない。
「しょうがない……一旦戻るか」
そうして今来た道を引き返そうと後ろを振り向いた瞬間―
道だったはずの場所が、真っ黒な穴でふさがれていた。
「え………!?」
突然出てきた物体に、俺は驚きを隠せない。
しかも、地面に落ちてる葉っぱが、少しずつ、吸い寄せられてる。
「ブラックホール……!?」
吸い込む力はどんどん強くなり、とうとう俺でも耐え切れなくなってきた。
嘘だろ、俺こんな形で人生終わんのかよ……!!
必死に穴から遠ざかろうとする、でもやっぱりダメだった。
どんどんどんどん引きずり込まれていき、最終的には飲み込まれる…!!
「う、わあああああああああああああああ!!!」
俺は恐怖からそう叫んだ。
吸い込まれると同時に、意識が闇の中に落ちていく…
サブタイトルからして意味不明ですよねwww
分かり辛くて申し訳ないですw