過去にさかのぼる学習方法
国中に嫌な噂が広まっていた。
「聞いたか? 成績が一定以下の学校は、来年から予算が削減されるらしい…」
「え、マジで?じゃあ、また先生が減らされるのか?」
ゼロはこの噂に憤っていた。
「ケッ、バカバカしい制度だ」
「でも現実問題、否応なしに来ます。戦わないと」
僕はそうゼロに言った。
噂は学校の生徒たちも広がっていた。
「せっかくやる気出たのに、意味ないじゃん…」
「どうせ切られる学校なんだろ、うちら」
成績が伸びてきたとはいえ、わが校は最底辺校。
ここから一気に逆転する施策を取らないといけない。
「なぁ雨水よ~。
なんか秘策はねぇのか」
とゼロは尋ねた。
僕は困った。
その時、ある言葉を思い出した。
「引っ掛かったところに戻るだ」
「引っ掛かったところに戻るだ」
僕とゼロは同じ言葉を発した。
二人とも、同じ方法を教わっていた。
さっそく僕たちは、教員たちを集め、全校生徒の成績表を過去にさかのぼって集めた。
すると、成績が落ちたものは、ほぼ全員に同じパターンで成績が落ちていることがわかった。
そのパターンとは
・ある科目において、ある時期の成績が悪くなると、その後に成績が伸び悩むか、落ちる確率が髙いという事だった。
理由は簡単だった。
学校教育というのは、簡単なものから、教え始めて、それを応用していく。
応用といっても所詮は、基礎を掛け合わせたもの。
だから基礎をちゃんとできれば、成績は伸びる。
しかし基礎の段階で理解をしておかなければ、応用なんてできない。
「たとえば数学だと、分数でつまずいた子は、その後の方程式や関数でもつまずく。
英語ならbe動詞がわからないまま過去形に進んでいく」
僕たちは教員たちに、この事を説明した。
「理由はわかりました。
しかし……。
これらをどうやってクリアするのですか。
そもそも学習時間が取るのが難しい」
と教頭が言った。
「なにかいいアイデアはないか」
とゼロは言った。
「教材自体は、全学年の宿題やドリル、過去のテストなどを再利用したらどうですか?」
と若い女教師は言った。
「なるほどな。教材はある。あとはどうやらせるかだ……。
あのさ~。宿題を少し減らして、代わりにこれをやらせるのはどうだ」
とゼロは聞いた。
「宿題を減らすですか……。
そうですね。
宿題内容を最低限のレベルにおさえれば
各科目で5割くらいは減らせるかもしれません」
と若い女教師は言った。
「教頭、どうだ」
とゼロは言った。
「まぁたしかに、うちの学校は最底辺校ゆえ、宿題の量は多かった。
5割くらいは減らせるのは間違いない。
それを差し替えるか……。
それで効果があるものなのでしょうか」
と教頭は首をかしげる。
「そうだな。
理論上は正しくても、実際にそうなるかどうかはやってみないと分からない。
ただ……
あの噂が本当なら、うちの学校はヤバイかもしれない。
じゃあ、あいつらどうなるよ~。
教育をうけてねぇとロクな仕事につけねぇ。
ロクな仕事につけねぇと……
お前らわかるだろ」
教員が全員ふかくうなずいた。
「じゃあさっそく準備に取り掛かってくれ。
あいつらの苦手を取り除いて、勉強を得意にしてやってくれ」
とゼロは言った。
「ハイ」
教員全員が立ち上がり行動をし始めた。
この学校はなにかが確かに変わりはじめた。
◆ ◆ ◆
過去で生まれた苦手の克服という勉強方法は、生徒たちにも
すみやかに伝えられた。
これらの一手で、生徒たちの動きが変わった。
休み時間、また学校後の兄弟制度の学習の際に、苦手部分の質問を
してくる生徒が増えた。
これは確実に成績をあげてくれる。
この事が伝わったらしい。
この方法は、確実に、しかも短時間で学習効果を上げてくれた。
以前まで授業中に居眠りをしていた男子生徒は、集中して授業を受けるようになった。
ゼロは生徒たちに言った。
「いいか、おまえら、派手な覚醒なんかあると思うな。
覚醒はある。
でもそれは地味だ。ある日、一つの事に気が付き、そこから連鎖的に全てが変わっていく。
そういうことはある。
でもな。それが派手なものだと思ってると本当の覚醒を見逃してしまうんだよぅ。
今回のな。苦手克服は地味な覚醒だ。でもこれは裏切らねぇし、連鎖的に全てを変える」




