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点と点

◆現代

「先生、

この銅像ってどこの学校でも見るけど…すごい人なの?」


「あ~。この方はゼロ様といって、

300年前に我が国の教育を変えた方なんだ。

信じられないかもしれないけど、

国王様とゼロ様が教育制度を変えるまで、

大陸でも最貧国で、毎年飢えで亡くなる人も多かった」


「へえ、そんなにすごい人だったんだ。感謝の印で銅像が建ったの?」


「いや。それはちょっと違って……。

すごい方なのだけど、

自己主張が強くて、

その当時の学校の校長たちが、

ゼロ様に睨まれるのが怖くて、

保身で銅像を建てたんだよ」


「へぇー。性格が悪かったの?」


「能力は髙かったのだけど、

オレ様的なところがあった人だからね」


―――――――

◆王宮(302年前)


「おい。宰相はおるか?」


「はい。こちらに」


「我が国は、まだ最貧国なのか?

なぜ経済が上向かぬ。

農地開発もやったではないか?」


「はっ。

どこの国も同じような、経済対策をしておりますゆえ。

差がつかないのだと思われます」


「なるほどな。それではあまり金をかけずに、経済をなんとかする方法はないか?」


「それですと。

教育改革がよろしいのでは?」


「教師を増やせというのか?」


「いえいえ。そうではございません。

教え方を工夫させ、金をかけずに成績を上げさせるのです」


「ほう。それはおもしろいな。なにか策はあるか?」


「そうですね。

まず全国に知らせをだしましょう。

内容は教育改革について、

こういう教育改革をしたら、

成績が上がる。

そういう智恵のあるものを、

広くつのり、

校長をやらせ、権限を与え、

その校内で教育改革をさせるのです。

そして、髙い成果を出したもの達に、

全体の指揮をとらせる。

そうすれば、苦労せずに、

いい教育改革を手に入れることができる」


「そんなに上手くいくか?」


「確かに一時的に混乱はあるかもしれません。

たとえば応募して来た者が無能で、

成績が逆に下がるかもしれない。

それは心配でございます。

ただ最低限学ばせることだけはコントロールし、

1年後、

もっとも成果を出した者の方針を、

取り入れれば、下がった学力も短期で伸びましょう」



「ほう。

なるほどな。

しかし金が必要だと言われたらどうする?」


「たとえば、

予算は固定して、

どこかの予算を削減し、

他に回すなどという方法が取れるように、

してやればよいでしょう」


「わかった。ではそのようにしろ」


「はっ」


――――――――――

◆スラム街(302年前)


同じころ……

スラム街では、

若い男が、3人の屈強な男に絡まれていた。


「おいおいおい。兄ちゃん舐めてんのか」

とリーダー格の男はいう。


「舐めてる。そんな汚いもの舐めるかよ。バカじゃねのか」

と、唾を吐きだす若い男。


「やれ」

リーダー格の男は言った。


ドン、バキ、ゴキ、バキ……。

一瞬にして二人の屈強な男は、若い男に倒された。


「なかなか……やるじゃねぇか」

そう言った瞬間


ヒュン―――

若い男の拳がリーダー格の男のこめかみをとらえた。


ドス。

鈍い音がして、リーダー格の男は倒れた。


「本当。弱いくせに粋がるなよ。

白けちまったぜ。

ほらほら見世物じゃないぞ」


そう若い男は野次馬を追っ払った。


「ゼロ先生。ありがとう。助けてくれて」

と子どもが駆け寄ってくる。


「あ~。そんなのはいいよ。ただみんなには内緒だぞ。

また先生怒られるからな」


「わかった。ありがとう」

そういい、子どもは去っていった。



背後から誰かがゼロに近づく。


「あなたがゼロさんですよね」


「うん。誰だ。あっ。お前……」

ゼロの手は真っ赤に染まった。


お前はいったい誰なんだ。

なぜ俺を……


「私はただの通りすがりの死神ですよ。あなたの命を取りに来ました」


ゼロの意識は薄れていく。


―――――――――――――――――

◆現代


僕は雨水賢治28歳、都内の公立高校で働く、国語教師。


僕は雨上がりで増水した川岸を歩いていた。

毎朝の日課の散歩だ。

あれ?

濁流のなかに、子猫のようなものがいる。

ヤバイ。

助けなくっちゃ。

そう思った瞬間。

足が濁流に巻き込まれる。

あっ僕……

泳げなかった。


ブクブクブク


これで終わりなのかな…

意識が薄くなっていく。


雨水が濁流で亡くなるなんて、笑えない冗談だ。


僕は印象が薄いため、生徒からは雨水ではなく、存在感の薄い先生と呼ばれている。


これでも、いろいろがんばってきた。

作家の面白いエピソードを仕入れて、授業中に入れ込んでみたり、いろいろした。

だけど、反応はゼロ。

「先生。そういうのは、いいので……」

と言われる始末。


本当。

なにか濃いキャラに、

自信をもってガツンと言えるキャラに変わりたい。

そう思っていた。


これでも僕は、

教育関連の理論だけは詳しい。

僕は身体が弱く、成績も悪く、

いじめを受けていたが、

ホームレスのオジサンに教わった勉強法で

一躍成績上位になり見返した経験がある……


だから教育のすごさ、

素晴らしさを誰よりも知っている。


でも…

このキャラが原因で。


もし転生とかあるなら……

お願い!強キャラで。


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