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第9話 リアの町の町長 3 会談

「先ほどは失礼しました。そしてありがとうございます。改めてお礼を」

「いや気にしていないし構わない」


 食事を終えた私達は応接室で顔を合わせていた。

 これからが本番。気合いを入れないとな。


 ソファーに座るリア町長を見ると食事をする前よりも顔色がマシになっている。

 まだまだ栄養状態が良いとは言えないが血色は(はる)かに良い。


 最初の敵意まるだしの顔はどこへやら。

 その後ろに(ひか)える老執事コルバーの表情は柔らかい。

 きっと町長リアの顔色が良いおかげだろう。

 まるで孫を見る祖父のような顔だ。


「ではお話を」


 町長の言葉に軽く頷き計画を話す。

 と言っても全てではない。

 全て話したとして逆に警戒されないか考えたからだ。


「レストランで町おこし、ですか。歓迎いたしますが、しかし……」

「わかっている。食材の事だろ? 」


 リアは申し訳なさそうに小さく頷く。

 コルバーも苦い顔をし拳を握った。


「自給自足が出来ていない、と理解しても良いんだな? 」

「……その通りです」

「ならばやはりここはソウの出番だな」

「うむ。任されよ! 」


 机の上にいるソウがバサリと翼をはばたかせて尊大(そんだい)に言う。

 不思議そうに二人はそれを見る。

 ソウの力を説明しないといけないがその前に必要なものを伝えよう。


「レストランを開業するにあたって幾つか欲しいものがある」

「……聞きましょう」

「まずはさっきも言ったがレストランの開業許可。次に建物。そして――土地だ」

「土地? 」


 リアは首を傾げてコルバーの顔に緊張が走った。

 緊張するのは当然だ。

 大体の国に置いて土地は王のもの。

 それを欲するのは不敬(ふけい)ととられてもおかしくない。


 しかし必要だ。

 インパクトを与えこちらに注目を向けることに成功したようだ。

 よって誤解を解きつつ目的を話そうか。


「警戒することは無い。いや……誤解を(まね)くような言い方で悪かった。欲しいではなく貸してほしい、だな。(よう)は私が自由にできる土地を借りたい。もちろん借りるにあたって発生する税金は払う」

「なにをなさるつもりで? 」

「土地を使って畑を作る。だから借りることができる土地は出来るだけ広い方が良い」

「畑を?! 」

「そんな無茶な! 」

「何故無茶だと思う? 」


 聞き返すと二人共(うつむ)いた。


 畑を作る事がそんなに難しいのだろうか?

 いや自給自足が出来ていないことから難しい事は分かる。

 しかし「無茶」という程ではないだろう。

 土地が余っていないのか?

 疑問を口にするとリア町長が重たい口調で言い、コルバーが続いた。


「この地は不毛な土地なのです」

「そもそもこの地、いえこのロイモンド子爵領は作物が(みの)らない領地なのです」

「よくそれで領地として成り立ったな」


 思わず口にして「しまった」と口を(ふさ)ぐ。

 しかしリア町長は「当然の疑問です」と苦笑いをしながら、話してくれた。


「ロイモンド子爵領は作物が実らない代わりに鉱山が多くあります。そしてそこから産出される金属の売買で成り立っているのです」

「鉱山を中心に町が出来た、ということか」

「ええ。鉱山が発見されると多くの人が集まり、そして町が出来ました。周りの領地からも多くの人が集まったおかげで多様な食文化も花開き、それこそ国を代表するような領地となったのです。しかし……」

「それを狙う貴族が現れた、と」


 リア町長は私の言葉に大きく頷いた。


「この領地は周りから農作物を仕入れなければ生きていけません」

「我々が邪魔だったのでしょう。この地を欲する貴族達が関税を上げ……」

()()がらせようとしている、ということか」


 なるほど、と呟きこの町の(すた)れ具合を理解した。

 どれほどの期間物資を止められているのかわからない。

 しかし町に大きなダメージを与えているのは確かなようだ。


「気に入らないな」


 ポツリと呟くと前から「え」と声が聞こえてきた。


「いやなんでもない。気にしないでくれ」

「は、はぁ……」

「で聞きたいんだが、森はどうなっている? 不毛の地と呼ばれているみたいだが、ここに来る途中森があったぞ? 」

「不毛の地と呼ばれていますが雨が降らないことはございません。森には水が通り生命力や繁殖力の高い草木が()え、果実が(みの)ります」

「それは食べることはできないのか? 」


 聞くとリア町長は首を大きく横に振った。


「食料として食べようにも毒性が高く食べることはかないません」


 毒草か。

 薬や錬金術を扱う人達は欲しがるだろうが食べ物にはならないな。

 

「なのでそれを食べ、分解する魔物を狩って生きながらえているのが現状、です」


 言い終えるとともに「ふぅ」と息を吐くリア町長。

 疲れた様子でコルバーが(そそ)いだお湯を飲んで一息ついた。


 聞く限り土地の浄化が必要になりそうだ。

 雨が降らず作物が育たないというパターンではないようだ。

 ならば作物が育つ土壌(どじょう)はある。

 しかしそれでも人が食べることができるものが少ないというのは恐らく鉱山が原因だろう。

 もしかしたら土も原因しているかもしれないが、ソウの敵ではない。


 魔物を採って食べていると言った。

 だとすると動物は育てることに成功しても毒に侵され食べることができない、か。

 専用の毒抜きをすれば食べることが出来るようになるだろうが後だな。


 この付近にどんな魔物が生息しているのかわからない。

 しかし解毒の力を持つ魔獣型の魔物と想像することができる。

 

 よし。大体の道筋(みちすじ)は見えた。


「やはりソウの出番だな。土地から毒を抜くことは出来るか? 」

造作(ぞうさ)もない」

「なんと! 」

「そんなことが! 」

「ソウの力で土地を回復させていく。畑を作り作物を植え実らせる。本格的に作物として売るには時間がかかるだろうが、その辺は堅実(けんじつ)にやって行こうと考えている」

「種はどうする? 」

「初めは私のポケットから出すさ。作物が生産ラインに乗るまでは私の備蓄(びちく)から食料を出し料理を振る舞おう。リア町長、()き出しを行う許可もくれないか? 」


 聞くと唖然(あぜん)としている。

 ん? 何かミスをしたか?


 首を傾げてソウを見る。

 ソウも首を傾げている。

 彼も何かおかしなところがあったのか考えているみたいだ。


「なぜ……」

「? 」

「なぜこの町にそこまでしてくれるのですか? 」


 我に返ったリア町長が硬い口調で聞いてくる。


 警戒させてしまったか。

 確かにやり過ぎな気はする。

 だがこの町に復興(ふっこう)してもらわないと私とソウはこの町の食文化に辿(たど)り着けない。

 一見すると私達の行動は怪しい人そのものに見えるだろう。

 けどこれはきちんと私達にも()のある話。


「むろんこれらをタダで行うわけでは無い。そこは心配しないでくれ」


 それを聞きリア町長は安堵(あんど)と共に緊張した。

 何を要求されるかわからない、そう言った表情をしている。

 コルバーも何かあったらいけないと思ったのか少し前に出ている。


「払えるものならば良いのですが……」

「私達が望むのはこの町特有の食」

「食? 」

「復興したあかつきには是非ともこの町の美味いものを振る舞ってくれ」


 言うとリア町長は目を見開いた。

 そしてゆっくりと、口を開ける。


「是非とも」

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