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エルフの料理亭 ~旅の料理人と食いしん坊精霊のレストランもぐもぐ経営術~  作者: 蒼田
第4章: 第1回エレメンタル・フェスティバル・リア
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第87話 エンジミル王国王城にて

 エンジミル王国王都エンジミル。


 周囲を城壁で囲われたその町は、活気を見せ始めたロイモンド子爵領以上に賑やかである。

 一歩町を歩けば武器を持った冒険者が、また一歩歩けば店が見える。

 むろんこれだけではない。


 しかし国一番の賑わいを見せているのは確かである。

 そんな中、カラカラカラと大通りを一つの馬車が通り過ぎる。

 奥に見える巨大な城に向かうそれは、装飾に溢れたものではなく機能性に重きを置いた馬車で、家紋が無ければ貴族の馬車とはわからないだろう。


 馬車が城へ消えていく。

 遅れて何台かの豪華絢爛な馬車が同様に王城へ向かい、消えていった。


 今日は会議。

 各地の領主が集まる、年に数回の特別な日であった。


 ★


「我々はもう手一杯だ。支援を要求する」


 巨大な光球(ライト)の魔道具が照らす中、一人の貴族が声を上げた。

 彼の言葉を皮切りに様々な意見が飛び交い始める。

 意見を放つのは全員が人族の領地持ち貴族。一部エルフ族など異種族領主も見られるが口を開いていない。

 彼らは積極的に議論を行う人族達を一歩引いた所から眺めていた。

 全体を見渡すと男性が多い。けれど女性がいないというわけでは無く三割程度は女性が占めていた。


 貴族達が喧嘩上等な予算の取り合いをしている中、一段高い豪華な椅子に座り全体を俯瞰的に見ている男性が一人いる。


 ――サノ・エンジミル。


 ここエンジミル王国の現国王である。

 サノは赤をベースに金で装飾がされた王冠を被り短く茶色い髪を生やしている。瞳は黒く、顎には短く切りそろえられた茶色い髭が見える。筋骨隆々な体には赤いマントが羽織られて、手には黄金の錫杖を持つ。服から覗く手は小麦色に焼けており健康そうであった。

 議論をどこか冷めた目で見る彼は、年若い。けれど王の風格を兼ね備えており侮れない雰囲気を漂わせていた。

 

「我々の領地はもう余裕がない。支援、とまでいかずとも納税の減額を――」

「確か貴殿の領地にはまだ作物が実っていたはず。その程度の食料不足。気合いが足りないとしか言いようがないと思うのですが」

「なにを言うかロイモンドの小娘。気合いで乗り切れるものではない。それに貧困が続けば反乱に繋がる。その程度もわからぬか」

「私達は三世代にわたって貧困に喘いでおりました。誰の援助も受けることが出来ず、ずっと。我がロイモンド子爵家でも可能だったのです。まさかとは思いますが、大貴族である公爵閣下が不可能とは言いませんよね? 」


 ロイモンド、と呼ばれた女性が鋭い眼光で老いた貴族にチクリという。

 眼光に怯んだのか老貴族は一瞬たじろいだ。

 しかし負けじと顔を上げて全員に、演説するかのように声を上げる。


「我が領地だけではない。グランデ伯爵領の不作により現在この国の食料事情は悪化している。ここは国への忠誠の証として食料を譲り合えば、と提案するが」


 その言葉に頷く者、苦い顔をする者、自分は関係ないという顔をする者と様々。

 確かな手ごたえを感じた老貴族は満足げな顔をして着席する。

 方針が固まった所で国王サノが口を開いた。


「食料の譲り合いに関しては、賛成だ。だが誰が行う? 」


 王の一言で空気がピリつく。


 一時的に国内の食料事情は回復した。

 それは国王サノ・エンジミルが食料をすべて買い取り各領地に行き渡らせたからだ。


 老貴族が提案した方法と似ているがそれは当たり前。

 老貴族の提案は国王が行った方法を、貴族派閥の彼がアレンジし提案したからである。

 それを自分の手柄のように提案するのだから図太いにもほどがある。

 しかし王はそれを不快に感じている風ではない。

 むしろそれを肯定し議論を進めた。


 が誰も手を上げない。

 ロイモンド子爵領ほどではないにしろ、今までにない程治める領地の経営が難しくなっているのはどの領地も同じ。

 そんな中貧乏くじは誰も引きたがらない。


「ならば発案者の公爵。率先して――「よき考えがあります! 」「陛下の言葉を遮るか。不敬であるぞ!!! 」」


 老貴族が危険を感じて言葉を重ねると、騎士風の女当主が大声を上げた。

 今にも殺さんばかりの殺気を放つ彼女をみて老貴族は体中から冷や汗を流すが敢えて無視をする。

 彼と彼女の関係は爵位からすれば象と蟻。

 剣で戦うならまだしも言葉で戦うのならば老貴族の方が圧倒的に有利であるためである。


「改めて。陛下。よき考えがございます」


 軽く頭を下げてサノに申し出る。

 サノはその言葉にピクリと眉を上げるも、気になったことを口にせず老貴族に発言を促した。


「今余裕のあるロイモンド子爵領より接収(せっしゅう)するのは如何でしょうか? 」

「却下だ!!! 」


 今までにないくらいに大きな声を上げて老貴族の提案を下げるサノ。

 若く経験に浅い王を甘く見ていた老貴族は、首が宙を舞う瞬間を幻視する。

 ドン! と音を立てて尻餅をつく老貴族だが、恥をかいているのを気にせず今首が繋がっているのを何度も確認する。

 冷や汗を流す中机を支えにして立ち上がるが、顔を青くして脂汗をかく。

 それもそのはず。

 射殺さんばかりに騎士風の女当主から視線が送られてきているのに加えて、ロイモンド子爵から、そして王からも威圧を受けていたからである。


 サノが彼の提案を退けたのは、リア町長から直々に三人の種族王について報告を受けていたからである。

 一人暴れるだけで国が崩壊させる危険性をもつ種族王。

 そのような存在がロイモンド子爵領を拠点にしているのだ。

 少しでも不興を買うような真似をしたくないというのは自然な考えであろう。


 しかしここで思わない者から提案がされる。


「公爵閣下がおっしゃるとおり確かに全体の国益を考えると各領地が食料を出し合うのは良い手だと思います」


 ロイモンド子爵である。

 先程までの威圧を解いて彼女は顔を上げている。

 意外な人物の発言に全員の目線が彼女に集中する。

 けれどそれを気にした様子もなく淡々と話を続ける。


「発案者である公爵閣下が参加するのは当然ですが、ここは一つ各領地の財政状況に応じた接収と再分配を行う、というのは如何でしょうか? 」


 それを聞き老貴族はロイモンド子爵を睨みつける。

 がロイモンド子爵は気にせず話す。


「もし分配された食料に不満があるのならば、私財を投じて他領から食料を買えばいいだけの事。違いまして? 」


 現在ロイモンド子爵に出入りする者には高い関税がかけられている。

 食料事情が上向きとはいえ全体的な食料事情も、経済状況も良くない。

 総合的にみるとロイモンド子爵領は食料を「受け取る側」であり、「渡す側」ではない。

 ロイモンド子爵の考えを読み取ってかサノは軽く瞳を閉じて少し息を吐く。


 そしてロイモンド子爵の案は、会議を通った。

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


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