第71話 人狼王ライナー・ウルフィード 2
「改めて。俺はこのウルフィード氏族の氏族長で人狼族の種族王『ライナー・ウルフィード』だ。気軽にライナーと呼んでくれ」
「「「氏族長?! 」」」
他の人達が驚き身を乗り出す。
「俺達が人狼族ってのは! 」
「この場では構わねぇ。いやむしろこうして変化している方が不誠実だ。全員変化を解け」
言うとライナーの親戚縁者は顔を見合わせ変身する。
徐々に銀色の体毛が現れ狼顔に。指先からは鋭利な爪が生え、後ろからは大きなもふもふ尻尾が出てきた。
しかしその顔はどこか落ち込んでいるように感じ取れる。
「……もふもふしてそう」
思わず出た言葉に全員が顔を上げる。
ポカーンとした後誰かが笑った。
「お、俺達を見てもふもふしてそうなんて」
「長い事生きたがそんな感想初めて聞いたぞ」
羞恥で顔が熱くなる。
仕方ないじゃないか。本当にもふもふしてそうなんだから。というよりも少し触らせてほしい。
しかし、だから異形種の事を聞いていたのか。
今まで彼らは迫害にあってきたのかもしれないなと思うと悲しくなる。
どういう訳か人から外れた存在を認めない集団は多い。
それを扇動している者もいるのだが理解不能。
言葉が通じなくても人族同士なら何とかなるのに、少し姿が違っただけで排除しようとするのだから。
「さて。俺からエルゼリアに頼みたいことがあるんだが」
振り向くと他の人狼達よりも二回りほど大きな人狼がいた。
ライナーだろう。
彼は切り出すと言葉を続ける。
「俺達をこの町ですま……ッ! 」
話を続けると急にお腹を押さえ始めた。
「おい大丈夫か?! 」
「ライナー様! 」
「氏族長! 」
すぐに彼の元に近寄り心配する。
なんでもねぇ、といっているが体毛の上からわかるほどに脂汗をかいている。
「なんでもないわけないだろう! 」
「す、すまねぇ。迷惑かける。だが本当に何でもねぇ」
「だからなんでもないわけないだろう?! 明らかに異常だ」
「だから」
「ウルフィード殿。強情を張ると本当に迷惑をおかけします。ここは一度認めた方が」
「ヴォルトの旦那」
「エルゼリア殿。まず私が魔法で鎮痛と睡眠をかけますので」
「わかった。場所を提供しよう」
「だが」
「もちろん氏族の人達の分もだ」
「……わりぃ。世話をかける」
「氏族の人達の分」と言うことを強調するとすぐに引き下がってくれた。
彼は纏め役として、仲間を心配していたのだろう。
そう思っている間にライナーはすやすやと眠りについていた。
……ヴォルト。いつの間に。
★
一先ず空いている部屋に運び込んでベッドに寝かせた。
皆心配なのかぞろぞろと後ろをついてきている。
入りきらない人は外で待っているようだ。
慕われてるな。
「皆ライナーの調子が悪い事、知ってたのか? 」
「隠されていましたが、一部は知っていました」
「けど氏族長のことだから」
「認めないんだよなぁ」
肩を落とす人狼達。
彼女達からライナーに目を移して溜息をつく。
ついてくる仲間に心配させまいと意地を張った結果がこれか。
あとでガツンと言わないといけないかも。
いやそこら辺は私がいうよりもヴォルトの方が適任だったりするかも。
「で……。ということは医者には」
「行っていません」
申し訳なさそうに人狼族の女性が言う。
一応聞いてみたがやっぱりか。
「そもそも俺達を見てくれる医者がいるかどうか……」
「人狼族は体の構造が普通の人間と少し違います。偏見を抜きにしても人狼族を見ることができるのは人狼族だけかと」
「ライナーが種族王なら人狼族の医者を見つけることができるんじゃないのか? ヴォルト」
「当の本人がこの状態なので今は難しいかと」
強情を張らなければなんとかなったのかもしれない。
さてどうしたものか。
「ヴォルト。医術は出来ないのか? 」
「薬や人体に関する知見は、多少は持ち合わせています。しかし本職には到底及びません。それに人狼族特有の病気だった場合どうにも」
ヴォルトが首を横に振りながら「できない」という。
流石のヴォルトもきついか。
「一先ずどこに異常があるか調べることはできるか? 」
聞くとヴォルトが腕を組み考える。
ヴォルトは人体が少し異なるといった。ならば彼はその昔人狼族について調べたことがあるのかもしれない。もしくは人狼族をかたどった不死族を知っているか。
何にせよ身体のどこに異常があるか、ないかを知るだけでも私達の対応は異なって来る。
異常があれば即医者探しになるが、異常が無ければ原因を調べる必要が出て来るし。
ヴォルトの答え次第だが……、さて。
「恐らく可能でしょう」
「なら頼む。他の奴らもいいか? 」
心配そうにこちらを見て来る人狼達に聞く。すると彼らは顔を見合わせ話し合う。
彼らが私達を信用できないというのは分かる。
けれど治す、とまでいかなくても道筋くらいは立てないとこちらももやもやするわけで。
私達が何も聞かずに実行することは可能だろう。
けれどライナーは彼らの長。
ならば彼らの了解を得る必要はある。
本当ならライナーに聞かないといけないが、今寝てるしな。
「よろしくお願いします」
「頼む。氏族長を助けてくれ」
「よろしくお願いします」
頭を下げながら彼らが頼んできた。
「流石に治すことはできないかもだが、善処するよ」
「私の友人でもありますので全力を尽くしましょう」
私が答えヴォルトがライナーに向く。
軽く手をかざして口を開く。
「人狼族は高い物理・魔法耐性を持っています。それも種族王となると……、解析鑑定……むぅやはり弾かれましたか」
弾かれた?!
不死王の解析鑑定だぞ?!
どれだけ魔法耐性が高いんだよ……。
「分かってはいましたが少し凹みますねぇ。魔法強度を上げて効果範囲を絞りながら調べるしかなさそうです」
そう言いながらヴォルトが魔法を発動させていく。
ライナーの体に魔法陣が展開される。
それをじっと覗いては消して違う魔法を発動させて、をヴォルトは繰り返しある時私達の方を見た。
「……虫、ですね」
「「「虫??? 」」」
「お腹に虫がいます。人狼族は外からの攻撃には強いのですが、流石に内側からの攻撃には強くありません」
「つまり食べたものに虫がついていて、それがライナーを襲っていると? 」
「その認識で間違いないかと。しかしこれだと一つ問題が」
首だけ回していたヴォルトが体全体をこちらに向けて困ったようは雰囲気を出す。
ヴォルトが困るほどの問題があるというのか?
「確かに私は調合を齧っています。しかし駆虫薬となると経験が無く……」
なるほど。要は駆虫薬を作ったことがないということか。
ヴォルトがあくまで「齧っている」と表現するのはよくわかる。普通はつくらないからな。
けれど大丈夫。これは私の領分だ。
「それは大丈夫だ。私に任せろ」
「……まさか作れるので? 」
「薬は作れないが、食事を作ることはできる。知っているか? ある国では料理人が医者代わりをしているんだぞ? 」
そう言い不敵に笑ってみせた。
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