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第58話 新しくなったリア町長の館 2

「そう言えばこの町の産業はガラス細工(ざいく)と聞いたのだが」

「昔はそう言われていました」


 一息ついて気になったことを聞くと、コルバーが答えた。

 懐かしむように(あご)に手をやりながら当時の事を話してくれる。


「リアの町は食の最先端ではありましたが主産業はガラス製品でした」

「錬金術とかは? 」

「一時期は産業の中核としてその話も出たのですが、錬金術師や薬師が集まらず話は流れてしまったようで」


 聞いた話ですが、とコルバーが言う。

 貴重な薬草や素材が採れるのにこの町で錬金術や調合(ちょうごう)技術などが発達しなかったわけだ。

 素材があっても技術者がいないと話にならない。

 集めるのは冒険者ギルドで出来るからギルドに依頼してこの町の人達に任せる、と。


 しかし不自然だ。

 ここまでいないとなると技術者の流出を恐れてギルドなどの組織や貴族が囲った可能性があるな。


「昼は工房が動き市場(いちば)にはキラキラと光るガラス細工が並んでおりました。当時使用人見習いだった私を引き連れて、先々代が市場に抜け出していたのは良い思い出です」


 先々代、ということはリア町長の祖父か。

 かなり昔の話のようだ。コルバーが使用人見習いということは大体一桁後半から十二程度、か。

 しかしリア男爵家は人族のようだが、もしかしてコルバーは長命種の血を引いてるのか?

 年齢のわりに若く見える。


「姿を隠されているというのにあちこち振り回されてそれはもう……」

「コルバー。これからは私達と頑張るんでしょう? 泣いている暇はありませんよ? 」

「そうでした。そうですとも。あの時、いえあの時以上の光景を作ってみせましょう! お嬢様! 」

「その意気です! 」


 涙ぐむコルバーにリア町長がピシッという。

 良いコンビだ。


「しかし長く使っていなかった工房がよく動きましたね」

「それに関しては予算が降りたので」

「予算ですか? 」

「ロイモンド子爵に直接直談判(じかだんぱん)しました! 」

「直談判?! 」

「なるほど」

「やりおるのぉ~」


 リア町長は意外と行動派だった。


「文官の派遣要請と共に工房を直す職人の手配や材料費などをもぎとってきました」

「やるなぁ」

「お嬢様は全く……。いくら仲がいいとはいえ子爵家当主に直談判に行くと言った時は寿命が縮みましたぞ」

「勝算あってのことです。それにロイモンド子爵も乗り気だったでしょう? 」


 確かにそうですが、とコルバーは溜息をついた。

 使える主人が行動的だと振り回される周りは大変だな。

 そっと机の上にいるソウを見る。

 本当に、大変だ。


「というよりもロイモンド子爵と仲が良いんだな」

「ええ。マリアルお姉様……。いえマリアル・ロイモンド子爵様は旧知(きゅうち)の仲なので」

「同じ領内、同じ年代ということもあって交流がありましてな」

「小さな時よく館に招待(しょうたい)されました」


 最近はめっぽうでしたが、と付け加えて紅茶に口をつけた。


 貴族間の交流か。

 この国はどうかわからないが、こうした交流はパーティーや学園で行われることが多い。

 しかし彼女達の経済状況を考えるとそれは難しいと思う。

 恐らく先代のリア男爵が彼女を領主の所へ連れて行って仲良くなったパターンだろう。

 所謂(いわゆる)幼馴染。

 そして彼女の口ぶりからすると年上のようだ。


「それで、頼みに行ったと」

「はい。流石に今までと同じ状態では無理だったとは思いますが、この町は上調子。ロイモンド子爵様も「領地復興の象徴となってほしい」ということで色々と融通(ゆうづう)してくれました」

「そのお金を使ってまずはガラス細工の工房を復活させました。私と同じくらいの年代の方は一定数残っています。残っている職人が技術を子や孫に引き継がせるまたとない機会だったので」


 復興の象徴、か。これまた大それたことになってるな。


 確かにこの町は他の町に先んじて復興している。

 逆にいうのならばこの町がこけたら他の町もこける可能性が高い。

 そんな中領主による支援。

 私情(しじょう)をおいておいても、ロイモンド子爵がリアの町の復興にかけているのはこの館に派遣された使用人や文官達の数などを考えればわかる。


「そう言えばロイモンド子爵様の所を訪ねた時小耳(こみみ)に挟んだのですが……」

「? 」

「動物も近寄らなかった場所で鳥を見かけるようになったとか。実験的に作物を植えたら育つようになったとも聞きました。もしや……」

「うむ。妾が祝福を施した影響じゃの」


 やはりですか、とコルバーとリア町長が目を輝かせてお礼を言う。

 (まぶ)しいまでの二人の視線が気まずいのかエルムンガルドは顔を()らせてしまった。


「ロイモンド子爵様はこれも何かのお告げと感じているようでした」

「……当たらずとも遠からずというのがまた恐ろしい。因みにエルムンガルドのことは? 」

「まだ伝えておりません。こういうのはエルゼリアさんの言葉を待ってからでもいいかなと思いまして」

「確かにその方がいいだろうな」


 異形種であるエルムンガルドの事を町の外の人に伝えるのは慎重になったほうが良い。

 例えもしロイモンド子爵が好意的であっても周りがそうとは限らない。

 中には異形種を(こころよ)く思っていない人がいるかもしれない。

 そう考えるとリア町長の判断は最善だ。

 エルムンガルドのことを伝えていないとなると恐らくヴォルトのことも伝えていないだろうな。


「実験的に作物を植えているとの事でしたが食べれるか、確認はどのようにして? 」

「妾が祝福を施したのじゃ。食べれぬことは無いじゃろう」

「しかしエルムンガルド殿。その土地の者にとっては初めての事。余計な犠牲を出さないためにも、食べれるかどうかの確認は必要な事ですよ? 」

「むぅ……」


 プライドを傷つけられたのかエルムンガルドがヴォルトに食いつく。

 しかし彼に言い負かされて頬をぷくーっとさせた。

 可愛らしい仕草に空気が緩む中リア町長が問いに答えた。


「ロイモンド子爵様の所には鑑定士がいます。その方が鑑定しているようですね」

「今はあちこちを周って大変だとか」


 鑑定士がいるのか。

 なら安心して植えた作物を食べることができるな。


「しかし経済封鎖の件。ロイモンド子爵様は相当頭に来ているようで」

「ロイモンド子爵領の食料事情が改善する中、それを感じ取った周りの領地の商人達が関税を引き下げるように子爵閣下の所へ押し寄せているようです」

「どういう……、あぁ……。鉱物か」


 私がいうとリア町長が黒い笑みを浮かべて大きく頷いた。


「関税を撤廃(てっぱい)したいのならば関税をかけた側の領主に頼めばいい事。ロイモンド子爵様に言うのは筋違い。三世代にわたって食料危機に(さら)された分、やり返すつもりのようで。食料事情が改善する中、領民の生産力が桁違いに増しています。生産力が落ちていた分供給することが出来なかったのですが、国内需要を満たせるほどの生産力を取り戻しています。ロイモンド子爵様は彼らに今も高い関税で鉱物を売りつけていますよ」

「まるで今までの鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように、ですな」

「そこら辺はわからないが、恨みを買い過ぎないように祈るばかりだ」


 苦笑いを浮かべながらも話は続く。

 そして話をまとめてレストランに帰った。

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


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