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第49話 エルムンガルドの怒り

「ここはリアの町とは大違いじゃの」

「これまであの地が異常だっただけなのでこれが普通かと」

「そのようなことはない。恐らくじゃが近くに(わらわ)が住んでいた影響もあるじゃろう。こうしてみると何と不愉快なものか」

「抑えてくださいよ? でなければこの領地はすぐにパニックになるのですから」


 わかっとる、とだけ答えて再度蒼い瞳を下に向けた。


 エルムンガルドとヴォルトは空高くに浮遊してグランデ伯爵領を見下ろしている。

 グランデ伯爵領とはロイモンド子爵領に隣接する領地の一つでリアの町のすぐ隣に位置するところ。

 農作物に(あふ)れたこの領地は国内屈指の食料生産地として知られ重要拠点の一つでもある。


 そんな場所に何故エルムンガルドとヴォルトがいるのかというと、少し前エルムンガルドがこの領地の領主が不当に関税を上げていると耳にしたからである。

 膨大な力を持つがゆえに普通の人とは異なる感性を持つ彼女だが、それでも不快に思うくらいには良心があった。

 よってこうして本当のことか確認に来たのである。


「……隣の町は食うに困っていたというのに」

「人は欲深いものですからなぁ。いくら時代が変わっても貴族同士のごたつきは変わらぬ、ということでしょうか」

「記憶持ちの言葉は重いのぉ」


 はぁ、と二人は溜息をつきながら次の場所へ移動した。

 領地を高速で移動し確認していく異形種二人。

 しかし他の人達が彼らに気付いた様子はない。

 それもそのはず。ヴォルトは自身とエルムンガルドに隠蔽魔法のような情報操作系統の魔法をかけ、更に気付かれても大丈夫なように幻影魔法をかけているからである。

 まず彼の魔力自体にも隠蔽がかけられているので、例え高位の魔法使いであろうと今のヴォルト達を見つけることは困難であろう。


 二人はある場所に着く。


 異臭漂うその場所に顔を(しか)めすぐに離れようとしたが、エルムンガルドが手を上げて止まるように指示を出した。

 ほどなくして彼らの耳に声が届く。


「ったくめんどくせぇ」


 万が一を考えて近くにあった建物へ隠れる二人。

 彼らの目に映ったのは信じがたい光景だった。


「……信じられん。あれを捨てるのかぇ? 」

「まだ食べることができるものも多く見えるのですが……」


 その男が捨てているのは館から出た生ごみ。

 館のコックなのだろう。町の人と一線を(かく)す服装をしている男性は荷台(にだい)に置かれた木箱を傾け、ドドっと音を鳴らしながらも次々と人が食料を、食材を破棄していく。

 それに怒り前に出ようとするエルムンガルドをヴォルトが肩を(つか)み抑える。


「止めるなヴォルト。やつらは一度痛い目をみんとわからん」

「お待ちくださいエルムンガルド殿。今彼らに手を出せば間接的にリアの町が疑われます。気持ちは分からなくも無いですが抑えて」

「ええい。放せ! 」

「抑えてください。それに痛い目を見させるのならば他に方法があるでしょう? 」

「……」

「どの道この領地は痛い目を見ないとわからない様子。確認するまでもなかったですね。さ、行きましょう」


 ヴォルトはすぐさま身体強化を使いそこから離脱する。

 少し空けた場所にでると飛行(フライ)で飛び再度グランデ伯爵領を見下ろした。


「……()き者もいれば、()しき者もいる。知っとるし、これまでの生で実感してきた」

「……」

「常に善き者であれとは言わん。しかしながら限度という者がある。よって……、『精霊女王エルムンガルドの名において命ず。精霊達よ。我の元へ』」


 エルムンガルドが言葉を放つと彼女の手に精霊達が集まっていく。

 一人の女性に数え切れないほどの蒼い光が収束していく様子は幻想的。


 ――しかしこれは凶事の前兆である。


 なにせ彼女が回収しているのは自然そのものである精霊だ。

 もしそれがいなくなるとどうなるのか簡単に想像できる。


 グランデ伯爵領は差別のある領地だ。

 といってもロイモンド子爵領が特殊なだけであって、ある意味一般的な領地ともいえる。

 自ら進んで差別されに行く奇特(きとく)な者はいないだろう。

 よってこの領地にいるエルフ族やドワーフ族のような妖精族は代々ここに住んでいる者に限られてくる。

 

 少ない数の妖精族が異変に気が付く。

 土地から精霊が消えていくのだ。

 妖精族以外にこれを感じ取ることはできない。他の種族は精霊の姿を見ることができても、彼らの力そのものを感じ取る器官が発達していないことが原因であろう。

 

 妖精族は呆然と天高くに昇る蒼白い光を見つめる。

 地面から蒼白い光が天に昇る様子は幻想的かもしれないが、これは異常事態。

 すぐに管理者に連絡して外を見るように伝えた。


「なんだ……。なんなんだこれは!!! 」

「おい! すぐに領主様に連絡しろ! 」


 蒼白い光は――それが精霊と知らなくとも――他種族でも見ることができる。

 天高くに昇る蒼白い光を見た管理者達がすぐにグランデ伯爵に報告する。

 その報告を受け取ったグランデ伯爵は頭を悩ませるのだが、エルムンガルド達が興味を抱くことではなかった。


 エルムンガルドはグランデ伯爵領中の精霊達を回収し終えた。

 彼女はそのままエルゼリアのレストランへ戻り、口直しに精霊の雫を頬張った。


 グランデ伯爵領の祝福が取り消された瞬間であった。

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