第46話 非常に困るフルーツのお値段
「「「なんじゃこりゃ!!! 」」」
土地を整地するために集めた人達が口に出した言葉である。
一応彼らに事情を説明はした。
しかし突然山が現れる様子を見ていないせいかいまいちピンと来ていない様子だった。
けれど実際見るとそこには見知らぬ山と黄金畑がある訳で。
しかし人間の適応力はすごい。
結局の所「ヴォルトの友達が起こした不思議現象」という所で落ち着いた。
ヴォルトの信頼度もまた物凄い。
もしかしたらリア町長のように思考放棄したのかもしれないが、私が気にしても無駄だろう。
ということで早速道を作るための測量やら何やらを行ってもらった。
「これを卸してくれるので? 」
「左様」
「……因みにお値段の方は? 」
「そちに任せる」
エルフモードのエルムンガルドに言われて困った表情をするコルナット。
気持ちはわからなくない。
彼の前に置かれた果実を市場に卸すだけでどれだけの利益がでるか想像したのだろう。
顔に恐怖が映り尻尾は丸く縮こまっている。
しかし彼が真に恐れているのはそこではないと思う。
高価なものを安く仕入れる。これは商売の基本である。
私は一先ずコルナットに声をかけたのだが、これだとコルナットが彼女の商品を独占しているように見える。
もし彼が他の商人に安値で卸しても、それでも利益が出るほどに安く仕入れていると疑われかねない。
ならば彼を殺してエルムンガルドの商品を独占もしくは寡占しようとするもの達が現れかねない。
まぁそんなことをしたらその人達もこの世からいなくなるだろうが。
「……困りましたね」
私が旅してきた経験から言うと出されている果実は超が付くほどの一級品。
果実一個に対して金貨にして一枚から十枚程度だろう。
よく見ると保存魔法もかけられている。
それを踏まえると十五枚はくだらない。
これがどれだけの値段かというと、私のレストラン一食分を銅貨一枚から三枚と抑えているというと分かりやすい。
つまり約千倍から一万倍ほど違う。
それを格安で市場に流す? 暴挙も良い所だ。
せめてこれらの商品がロイモンド子爵領内に浸透するくらいまでは価格を高くしたいということは、誰もが思うだろう。
「……ふぅ。私一人では決めかねますね。他の商人達と一緒に話し合ってもよろしいでしょうか? 」
「構わぬ」
「その時に同席していただきたいのですが」
「うむ。わかった。同席しよう」
エルムンガルドが同意するとコルナットが私の方を向いた。
私にも同席しろと?
あ、いや私のレストランにも卸してもらう予定だからその方がいいのか。
涙目でこちらを見て来るコルナットに苦笑いを浮かべながら私が軽く頷く。
すると彼は尻尾をぶんぶんと振りながらお礼を言う。
町の人達を集めた会合とやらに出席することになった。
★
数日後に行われた商人同士の会合は難航を極めた。
何故難航を極めたのかというと、ものの価値をいまいちとらえきれていないエルムンガルドが事ある毎に格安で卸そうとしていたからだ。
加えて先を見越してロイモンド子爵領外への輸出はどうするのかという話になった。
経済封鎖されているとはいえ情報が閉ざされているわけでは無い。
いつかは超一級品のフルーツがロイモンド子爵領で採れているという話が出回るだろうと考えたからだ。
ならば他の商人はどう動くか。
簡単である。
商品を求めてこの町へやってくるのだ。
むろん経済封鎖が解かれることは無いだろう。しかしコネや賄賂をフル活用してこの町・領地に来るのは想像できる。
しかし彼らはこの領地に不当な値段で食料を売りつけていた人達。いつも足元を見られていた彼らにかなり鬱憤が溜っていたようだ。
売りたくないというのが殆どの意見。しかし商売としてそれは良いのかという意見もあった。
が経緯を聞き、眉を顰めたエルムンガルドの一言で全ての意見は一網打尽となった。
「……そんなことをする者がおったのか」
底冷えするような声を聞いた私達は一瞬で黙った。不機嫌オーラがビンビンである。
どうやらロイモンド子爵領外の貴族や商人達は彼女の不興を買ったらしい。
今まで理不尽なことをしていたのだから仕方がないとはいえ、災害そのものに目をつけられた彼らに少し同情する。
今の現状を知らない彼らはこれからも理不尽なことをするだろうが、きっと身を滅ぼすのだろうなと思いつつせめて安らかに眠るよう祈った。
「高い……いやこれでも十分に安いのですが、これで行きましょう」
「ギリギリ平民でも手に取れる値段に落ち着いて何よりです」
「妾は値段は気にしないのじゃが」
「「「気にしてください!!! 」」」
「むぅ……」
美麗なエルムンガルドが不貞腐れるように口をすぼめるが、ギャップがすごいな。
美しさの中に幼さを残す彼女の行動はさぞ人を引きつけるだろう。
現にここに恋愛感情を通り越して崇拝の域まで行きそうな商人がいるのだから。
それに苦笑しつつもやっと会合は一段落した。
結局何週にもわたって話し合われた結果平民でも手に取れるギリギリの価格で収まった。
あとは頃合いを見て同時に値段を下げるとの事。
尚お隣の私も同じ値段で仕入れることに。
けれど私は客の足取りを見つつ切ったり加工したりするので仕入れる数は彼らほどではない。
店への影響といえば一品あたりの値段が少し上がる程度で店の財布にはそこまで影響はないだろう。
もちろんフルーツのみの料理も考える予定。
その場合は相応のお値段になる。
「では帰ろうかの」
「じゃ後は……」
「はい。こちらで都合をつけておきます」
「お疲れ様でした」
「ありがとうございました」
商人達のキラキラした目を受けながら逃げるように私はそこから出て行った。
「しかし困った者がいる者じゃの」
「だれしも欲というものはあるからな。ソウならば「食欲」とか」
「む。それだと我が食いしん坊のようではないか! 訂正を求める! 」
「……食いしん坊だろ」
「我は美食を求めているだけである。量を求める食いしん坊と言われるには甚だ遺憾! 故に訂正を――」
「……はっ! 」
「なっ。エルゼリア、お前笑ったな?! 」
「仲が良いのぉ」
エルムンガルドが微笑みながらのんびりとした口調で言う。
確かに仲は良い。
だけどそれを他人に指摘されるのは少し気恥ずかしい所がある。
頬を掻きながらも彼女に笑みで返す。
が次の一言で吹き飛んだ。
「隣の領地といったか。少し仕置きが必要なようじゃのぉ」
笑顔からのドン引きである。
エルムンガルドの仕置きなんて考えたくない。
隣の領地が大変なことになるのは想像できるがその後の影響も考えてほしい。
欲を言うのならば食文化を破壊しない程度におさめてほしい。
けどそれを言っても無駄なんだろうな。
そう思いながらも足を進める。
そして私達はレストランに戻った。
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