第37話 レアの町 4 助け合い
食事会も終わりそれぞれが役割を果たしている。
食器を洗う者もいれば片付けを手伝う者もいれば。
食器を洗うには水が必要だが、ここに川があるわけでは無い。
この町には水属性魔法の使い手が多いのか、一度家まで帰って魔杖を持って来て、魔法で洗浄している人もいる。
食後そのまま放置して帰ることもできたはずなのに、こうして自身ができることをしている。
素晴らしい事だ。様々ところで炊き出しのようなことはしてきたがこうした人達は多くない。
私は彼らの評価を一段上げる。
そんな中とりわけ目立っている集団がいる。
それは、再度巨体になったソウを崇めている妖精族の集団だ。
妖精族は基本自然信仰だ。
よって自然の塊のような精霊や精霊獣というのは妖精族にとって具現化した神のような存在。
気持ちはわからなくもないがずっと平伏するというのも疲れないのだろうか。
片づけを終えてちらっとソウを見るとやや目じりが下がっている。
あれは疲れているな。
まぁこれも自分が引き起こしたことだから甘んじて石像状態を維持するんだな。
「なにやら騒がしいと思ったらエルゼリアさんではありませんか」
聞き覚えのある声が私を呼ぶ。
どこから聞こえて来たのか周りを見ると、突っ立っているソウの隣を抜けて、馬車を引いた犬獣人がこちらにやってきていた。
「コルナット」
「こんなところであうなんて奇遇ですね。いえ隣町ですからそうでもない、のでしょうか? 」
ソウを見て暴れ出しそうな馬車を抑えてコルナットが私の近くに馬車を止める。
奇遇。いや奇遇でもないな。
リアの町周辺ならどこであってもおかしくない。
けれどコルナットはここに何をしに来たのだろうか?
少し気になる。
「私はこの町の商人と話しをしに来たのです」
「話し? 」
「ええ。定期的に報告会のようなことを行っているので。ほら……厳しい、でしょ? 」
コルナットが近寄り少し声を潜めて言う。
「封鎖状態でロイモンド子爵領は食料事情が良くありません。なので定期的に話し合い融通出来る所は融通するということになっているのです。外から食料を仕入れると、その時もお金がかかるので」
「なるほどね。けどリアの町は……どうするんだ? 」
「今回の報告会で状況を説明し、エルゼリアさんの許可を得ることが出来れば少しずつ周りに放出できればと考えていました」
コルナットが苦笑気味に説明する。
今までリアの町が完全に干上がらなかったのには、周りの町との交流にも理由があったのか。
しかしこういう場合一方的に助けられるということは無い。
「リアの町からも何か送っていたのか? 」
「ええリアの町からは主に肉を。近隣の森で採れる肉は多いので、それを乾燥させて保存食のようにし足りない所へ送っておりました」
そう言いながらコルナットは旅服に手を突っ込んで棒状に加工された肉を取り出した。
なるほどまさに助け合い。
苦しい時だからこそこういったことは重要だ。
リアの町産の野菜を少しずつ放出というのも納得がいく。
これまで助け合いで生き残って来たのだから、それを続けるという意味でも、困っている人を見過ごせないという意味でも。
けれど自分達の町の需要を満たせないまま外に出すとコルナットがつるし上げをくらう。
だから「少しずつ」なのだろう。
しかし逆にいうとすでに町に野菜が行き渡っているということがわかる。
前にコルナットと話した時や町長の話を合わせてリアの町の食料事情は「もう大丈夫だろう」と判断していたけど、思ったよりも余裕がありそうだ。
「本来ならあとで相談しようと考えていたのですが、ここでご相談させていただいてもよろしいでしょうか? 」
「野菜のことか? 」
私の言葉に真剣な顔で大きく頷く。
犬耳や尻尾はピンと立ち真剣さが伝わってくる。
「リアの町で採れる食料を周りの町にまわしてもよろしいでしょうか? 」
「構わないよ。他の町も困っているんだ。助けてあげな」
言うと「ありがとうございます」と大きく大きく頭を下げた。
大袈裟な、と少し苦笑しながらも彼に顔を上げさせる。
私達の目的のためには周りの町も活気ついてもらわないといけない。
それにリアの町だけ特別貧困から抜け出せても困るのはリアの町。
リアの町の中だけで話が収まっているのなら安全だろう。
しかしながらそうではない。
他の町と人の交流があれば商人の交流もある。
当然リアの町が復興し始めたことを周りの町は知るだろうし、それを知って物理で食料を奪いに来かねない。
普通の精神状態ならば「そんなことありえないだろう」ということも、極限まで追い詰められた人達は何をするかわからない。
ここは安全のためにも周りの町に食料を放出した方が賢明と思う。
「一応今畑を徐々に増やしている所だ。周りの町に行き渡らせることのできる野菜の量も種類もその内増えるだろう」
「おおお。それはありがたい」
感激、といった表情をするコルナット。
問題は人手なのだがどうするか。
町の人を雇うのも良いがどうするか。
ここは無難に土人形が一番な気がする。
「おっと。時間が迫ってきています。失礼ですが、私はこれで」
「あぁ。頑張りなよ」
手を振り馬車の所へ足を向けるコルナット。
私も彼に言葉を送りながらも片付けに戻る。
片付けを終えると石像状態のソウに声をかけ異空間収納を発動してもらおう。
声をかけると「待ってました」と言わんばかりに人間大になる。
私の近くまで寄ると魔法を発動。
かなりしんどかったのだろう。
行動が早い。
「ではエルゼリアさん。町の宿に案内します」
「店主は厳ついですが良い人ですよ」
「見かけによらず安全」
「むしろあの見かけだからこそ安全ともいえる」
「……とんだ風評被害」
テレサ達が声をかけて来た。
集まった他の冒険者達との話も終わったようだ。
私とソウは彼らに連れられる形で町の宿へ向かう。
確かに厳つい。
店主もあの食事会に参加していたらしく宿代は無料となった。
それに感謝しつつ翌日出発することに。
宿が閉まる時間帯まで私はこの町を案内してもらった。
ドラゴンがいなくなったという情報はすぐに町を周ったらしい。
奥に見える鉱山に向かう人達が確認に向かう様子が見えた。
彼らとすれ違いながらも町を観察。
鉱山の町ということもあってか鍛冶工房が多かった。
テレサ達の話によるとこの町の鍛冶工房はインゴットの作成と武器の作成、両方とも行っているらしい。
町によっては完全に分担している所もあるのだがこの町は分担制ではない、と。
またここで販売される武器は高品質で安いらしい。
時間がある時に包丁や鍋を頼むのもいいかもな、と思いつつも町を周る。
次きた時にでも頼んでみようと考えつつも宿に戻る。
そして私達はレアの町を後にしてリアの町へ戻るのであった。
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