第35話 レアの町 2
「着きました」
「ここがレアの町になります」
多くの人が町の中に入っていく。
「レアの町」と書かれた看板は薄汚れていなかったが古びていた。
誘導される形で中へ入るとまず埃っぽさが襲ってくる。
砂ぼこりは私の白いローブに付与されている魔法で弾かれるが、普通に吸い込んだら咳をするレベル。
「よく咳き込まないな」
「慣れていますから」
「嘘をつけ」
「強がるな」
「エルゼリアさん。ここに来る時テレサが風属性魔法を使って埃を避けているのです」
「ちょ、ガラック?! 」
「確かに私達は他の冒険者と比べてここに来る頻度は多いですが、どうしてもこの埃っぽさは慣れることが出来ませんので」
「なるほどね」
いつの間に魔法を使ったのかと、その手際の良さに驚きながらも、ガラックに拳をめり込ませている魔法使いテレサに苦笑いする。
中の良い事で、と思いながらも軽く全体を見る。
雰囲気は暗い。
これがアースドラゴンのせいなのか、食料不足のせいなのかはわからない。
しかしいい雰囲気ではない事はよくわかる。
犯罪に注意しないと、と少し警戒心を上げてテレサについて行く。
気絶し引き摺られているガラックを目で追いながら歩いていると金属特有の臭いが漂ってくる。
鉱山都市や鍛冶工房などでよく嗅ぐ臭いだ。
「まず冒険者ギルドに行きましょう」
テレサが声をかけて私達は煉瓦状の建物に向かう。
作業服を着た人達とすれ違う。
種族はまばらだがドワーフ族と獣人族が多いように見える。
彼らの表情はどこか暗い。
「前来た時よりも暗いですね」
「ドラゴンが住み着いた影響でしょうね」
「気をつけないと」
「仕事が出来なくなるからな。ここに限らず仕事場にドラゴンが住み着くとこうなる」
「……必然」
やはりドラゴンという存在は驚異的なようだ。
チラリと我らが精霊獣様を見るがドラゴン肉にルンルンだ。
……決して簡単に狩れる魔物じゃないんだがな、と溜息をついているとテレサが止まる。
慣れ親しんだ様子でいつの間にか起き上がったガラックが扉を開けて、私達は冒険者ギルドへ足を踏み入れた。
★
建物の中は思ったよりも笑い声で溢れている。
陽気な気風なのか、と一瞬考えたのだがそれはないだろう。
食料不足にドラゴンによる鉱山の占拠。
仕事が無く腹も空いているのでギルドで暇を潰しているという感じだろう。
観察しながらも先に進む。
すると一人の男性が声をかけて来た。
「おうリアの町のテレサじゃねぇか。仕事ならないぞ」
「この町は絶賛ドラゴンに襲われている途中だからな。ハハッ」
「分かってますよ。しかし私は護衛任務でここに来ただけです。お気遣いありがとうございます」
「護衛任務? リアの町に仕事があるのか? 」
「この方は特別ですよ。リアの町に護衛任務がそんなに頻繁にあるわけないじゃないですか」
「ということはそっちの銀髪エルフのねぇちゃんが護衛対象か」
「……エルゼリア殿だ。無礼は許さん」
「おいおい剣に手をやるのはやめろ。いくらイラついてるからってバカなことはしねぇよ」
「……ならいい」
ボルが腰にしている剣から手を離すと空気が弛緩した。
落ち着いた雰囲気のボルだが過激な所もあるんだな。
「一先ず依頼の経過報告を」
入って来た時よりも静かな中を歩いて受付に行く。
護衛依頼の場合、途中の町で経過報告するのが普通だ。
隣町だから端折っても良いが規約は規約。
経過報告をすると「ありがとうございました」と言われて解放される。
「さっきは悪かったな。俺の名前はリットンだ」
受付から離れるとテレサに話掛けていたと男冒険者が話掛けてくる。
私も自己紹介をして「かまわない」と返すが、彼の目が私の肩に固定されていることに気が付いた。
「我はソウ。精霊獣ソウである!!! 」
ソウは注目されていることに気付いたのか堂々とした名乗りを上げた。
「精霊獣?! 」
「なんでこんなところに!? 」
「竜型だと?! ありえねぇ! 」
ドラゴンの子供と間違われるよりかはマシなのだがこの驚きよう。
これ収拾するのか? と疲れながら「どうしようか」と考える。
しかし、無理だ。自然に落ち着くのを待とうと考えていると、私の気苦労を知らずか肩の方から声が聞こえてくる。
「もう待ちきれん。エルゼリア。我はちょっと狩りに行ってくる!!! 」
「?! おいソウ?! 」
その言葉に驚き引き留めようとするが時すでに遅し。
丁度ギルドの扉が開いたと思うと超速でそこをすり抜けていった。
ギルドの皆が唖然とする中、ソウに吃驚して尻餅をついた冒険者に手を差し伸べながら謝る。
彼女を引っ張り立ち上がらせると「ぐぅ」とお腹が鳴った。
「す、すみません」
「いや気にしないでくれ。この町のことは話に聞いている」
ぺこぺこと頭を下げる女冒険者を見送っているとリットンと名乗った冒険者が近付いて来る。
それに合わせてかテレサ達も私に近付いた。
「おいおい俺は危険人物じゃねぇよ」
「……用心に越したことは無い」
「……用心しすぎだっての。まぁいい」
リットンとボル達の関係は良好なようだ。
微笑ましく見ているとリットンが溜息をつきながらもコホンと軽く咳払いした。
「さっきも言ったが再度名乗ろう。俺はリットン。そいつらと同じCランク冒険者だ。なにか依頼があったら言ってくれ。護衛から討伐までなんでもこなすぜ」
「おいリットン。貴様抜け駆けする気か! 」
「待て。俺は――」
「俺も――」
リットンは自分を売りに来ただけか。
この町でご指名は自分にと。
普通に考えると私は護衛を雇えるほどの人物と映るだろうから不自然なことではない。
しかし余程ドラゴンに仕事を奪われたようで、自己紹介の嵐が私を襲う。
それを軽く捌きながらも特徴ある人物だけ抑えていく。流石に全員を覚えるのは不可能だ。
ぐいぐいくる冒険者達をテレサやガラック達が私に近付けないようにバリケードを張って私の安全を確保する。
しれっとリットンがそれに加わっているのが面白い。
レアの町は隣町。
もしかしたら彼らと交流が生まれるかもしれないから雑な扱いはできないな。
自己紹介の嵐が徐々に収まっていく。
軽く息を吐き入った情報を整理していくと「ドン!!! 」と扉が勢いよく開いた。
「た、大変だ! 」
「ド、ドラゴンだ ! 」
「ドラゴンがドラゴンを咥えてやって来たぞ! 」
「誰か倒してくれ!!! 」
住民の言葉を聞き冒険者ギルドが騒然となる。
そんな中私は大体察してこの後どうしようか考えた。
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