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第134話 ルミナス、準備をする

 ルミナス達を連れてコルナットの店に行く。

 入ると忙しかったらしく応接室のような所に通された。

 中で品物を確認しているとノックの音が聞こえ、コルナットが入ってき、品物を出した。

 すると興味深そうに表裏を確認している。


「これはまた良質なカードですねぇ」

「因みに遊び方はルミナスに聞いてくれ。ルミナス」

「はい! 」


 ルミナスに話を振るとそれを興味深そうにコルナットが聞く。

 聞き終えると笑顔でカードを机の上に並べた。


「単純ですが面白い。いやしかし何故思いつかなかったのか」

「はは。私も見た時は「こういうのがあったか」と驚いたよ」

「柔軟な発想を忘れずに心がけているつもりですが、私も歳をとりましたねぇ」


 言う割には笑顔である。

 純粋にルミナスが作った品物が嬉しいのだろう。


「この品物ですが何か名前はあるのですか? 」

「特に決めてなかったな。ルミナス、何かあるか? 」

「決めていませんでした」

「落ち込んではダメなのでる。今決めれば良いのである」


 言うと下を向いたルミナスが再度顔を上げて考える。

 少しして少し恥ずかしそうにポツリと呟くように言った。


「ウルフナンバーズカード……、というのはどうでしょうか? 」


 言うと再度俯いてしまった。

 けれどコルナットはそれを否定せず「良い名前ですね。それにしましょう」と答える。

 品物の名前も決まったということで、早速本題に入ることにする。

 ことの経緯を話してコルナットがルミナスに確認した。


「失礼ですが再度確認させてください。このウルフナンバーズカードはそちらのルミナス君が作った、ということでよろしかったでしょうか? 」

「はい! 」


 ルミナスが元気よくコルナットに返事をした。

 やる気満々である。

 その一方で母親のテラはどこか不安そうだ。


「これを持ってきたということは売りたい、と言うことで構いませぬかな? 」

「はい! 」


 元気よくルミナスが言うとコルナットは机に商品をおいて、椅子に座り考えている。

 物自体は良い物だと思うのだがコルナットには商人としての視点から色々と考えているのかもしれない。

 考えが纏まったのかゆっくりと顔を上げて真剣な表情でルミナスに聞く。


「……最終的に自分の店を持ちたいのですか? それとも職人として商品を卸したいのですか? 」


 今の段階でそれを選ばせるのか。

 というよりもその選択を選ばせるということは、コルナットは自分の所で経験を積ませる気だな?

 いやそのために来たのだけど察しが良すぎる感じもする。


「恐らくこの品物を商品として売り出せば、かなりの儲けを出すことが出来るでしょう」

「私も人の事を言えた口じゃないが、ルミナスの事をえらい買ってるな」

「幾つかカードを見させていただきましたが、どれも高品質で安定しています。聞いた遊び方は単純ですが誰も思いつかなかった新商品。少し装飾を施せば貴族様にも売れる程のものになるでしょう」

「そりゃまたすごい」

「まぁどのようなものが貴族様に売れているのかリア町長にこの前聞いた所なので確実とはいえませんがね」


 少し悪戯っぽく言うコルナット。

 そうか。リア町長に聞いたのか。

 リア町長、情報収集能力が増しているような気がするけど気のせいじゃないよな。


「でこれを定期的に卸すだけでも纏まったお金を手に入れることは出来ます。そのお金を使って店を興すのか、それとも職人として品物を卸すのか気になりましたのでね」

「……今どちらかを選ばないといけないのですか? 」

「いえ、そのようなことはありません。私の元で商売を学びながら商品を作るのも良し。職人としての道をひたすら歩くのも良し。失礼ながらエルゼリアさんがルミナス君と共に私の所へ来たのは単に売りに来ただけ、ではないのでしょう? 」

「……その通りだ」

「構想としては自分で作った商品を自分で売る、――つまり商人と職人両方選べるようにしたいのではないかと思いますが、私の元で働きながら商品を作るとなると、どうしても注文量に対してルミナス君のキャパシティーを超える可能性があります」


 加えて、と指をピンと立てて説明を続ける。


「商人同士の顔つなぎの事もあります。基本的に商人の元で働く子供はそのまま商人をする人が多い。今後のこともあります。店で働く子供同士、またその店主と顔見知りになる段階で自分がどのような道を歩みたいのか固めておくのは非常に重要なことだと思います」

「……商人ってのは色々考えてるんだな」

「いえライナーさん。ルミナス君の場合多芸だからこそですよ。基本、ここまで考えておりません。店で働くようになってから「店を継ぐのが当たり前」となっているので。しかしルミナス君の場合は違いますよね? 」


 とコルナットはルミナスに温かい目線を向ける。

 つられてルミナスを見ると真剣な表情で悩んでいた。


「まぁ追々考えて行くのもありです。今日の所は納品だけでよかったでしょうか? 」

「私は構わないが」

「俺も大丈夫だ」

「ルミナスは、どうする? 」


 テラが聞くがルミナスはまだ考えている。

 少し沈黙が流れたかとおもうと顔を上げてコルナットを見た。


「僕を……ここで働かせてください! 」


 彼の中で、何か決まったようだ。


 ★


 レストランまで帰りそれぞれと別れる。

 今晩の仕事を終えて私は服を脱いでいた。


「ルミナスは決断が早かったな」

「それも商人の資質というやつなのである。商人とは時に素早い決断が必要とされるのである。ルミナスは商人としても期待できるのである」

「……ソウがまともなことをいうとなんだか怖くなるな。天変地異の前触れか? 」

「我に失礼なのである! 我とてまともな分析くらいできるのである! 」


 はいはい、と適当に返しながら服をクローゼットにしまい込んだ。

 ベッドまで移動し座る。

 机の上で生野菜スティックをポリポリと食べているソウを見つつもルミナスの将来を思い描く。


 ルミナスは今日即決してコルナットの元で働くという選択肢を選ばなくてもよかった。

 彼に今後の事を聞くとコルナットの元で働きながら細工職人もしたいとの事。

 自分の商品が売れる所を見るとやる気も出るというもの。

 確かに彼の商品を売るには、ベストかはわからないけどベターな選択だと思う。


 どれかに割り振るのではなく両方するというのはどちらかを選ぶよりも難しい。

 選択する時に考えていた様子を見る限りその辺も理解しての事だと思う。

 ルミナスは賢い子だ。

 それ故に考えすぎないか少し心配だけど私の手を離れた。


 ささやかながら今後の活躍を祈って今日の所は寝るとしようか。

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


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