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第25話

「必要技能とそれを持ってそうな魔物共をリストアップしてみた」


 カインさんとの話は午前の早い段階で終わったため、その後の時間で情報収集に奔走した結果が、これだ。


「というわけでこれからのスケジュールを立てていくが、その前に……なんでお前らまでいるんだよ?」

「たはは……ボクってばあんまし頼りにされてない?」

「俺もあんな話した後じゃ幻滅もいいところだろうが……協力させてくんねぇか?」


 僕の呆れた目線の先にあるのは今朝話したばかりの2人の顔。

 アスタシアと


「ボクらの連携でお姫様を救出だぁ!」


 カインさん


「俺は王子様って柄じゃねぇから、そのポジションは譲るぜ……へへ」


 確かにこの2人には協力をお願いすることになるだろうとは思っていたけれど、それにしたって……


「再登場早くないですか?」

「およ?」

「おん?」


 いやこの世界は現実で物語じゃないんだからこれでいいんだろうけど、2人が仲間になる工程が省かれ過ぎてちょっとした違和感。

 早くて助かる事には違いないのだから構わないことなんだけれども。


「いや、協力してくれるというのならありがたいです。お二人は僕の個性魔法に関しても知っていますから、今更隠すこともないですしね」


 とかなんとか言ってみたが本当は隠すこと、あります。

 現状僕の転生魔法が他人にも使用可能であることを知っているのはサニーのみ。

 アスタシア辺りなら長年の勘で薄々察してはいそうだが、まだ確信が得られる段階ではないだろう。              

 そもそもこの件が終わったらアスタシアにはアカネと一緒に全て打ち明けて協力者になってもらう予定だから別に今知られたって構わないのだ。

 ただカインさんに関してはまだ決心がつかない。

 協力者は多すぎても情報漏洩の観点から見て困りものだし、正直今はまだ彼をこちら側に引き込むつもりはないのだ。


 だからこの作戦会議では、「僕の転生魔法はあなたたちの知っている以上の力はないです」と顔に書いて挑まなければならない。

 アスタシアはともかくカインさんにはばれるわけにいかないのだ。

 これは僕たちだけの事情ではなく、カインさんにとっても知らぬが仏であることだから。


 僕は何食わぬ顔をして作戦会議を開始した。


「先にも述べた通り、技能が必要です。それも複数。リストアップは済ませたので、早急に行動を開始したい……のですが、生憎どの魔物が持っていそうかばかり調べていて、その魔物の脅威度の確認がまだでして。ここは丁度いいしお二人に聞こうかと」


 今はお昼を少し過ぎたところだが、朝に話し合いでそこから今まででの時間でこれだけは調べたのだからむしろ頑張ったぞ僕と褒めてあげたいくらいだ。

 それに熟練の冒険者であり人望も厚そうな冒険者カインさんと、その熟練を越え生ける伝説にまで至った冒険者アスタシアが来てくれたのだから、これは結果的に大幅な時間短縮になりそうだ。


「任せてよ旦那様。ボクってばこの世に知らない魔物の方が少ない生ける魔物図鑑だからね!」

「俺もこのヘザール近郊で生息する魔物なら大体知ってるぜ。ま、アスタシアがいるから出番なさそうだけどな」


 お二人の返事、とても心強いです。

 やっぱこういうことではこの世界で生後一年に満たない僕なんかよりよっぽど頼りになる先輩方だ。

 これは思ったより早い段階で次のステップに進めるかも……!!


「ではお二人を頼って、確認を進めていきましょう――!!」



     ◇



「……――これは予想以上に時間が掛かりそうな雰囲気だ……」


 アスタシア、カイン両名の協力で狙う魔物の情報を一つ一つ確認していったのだが、その結果があまり喜ばしくなくこの言葉と溜息だ。


「魔物を倒すだけで技能ゲットなんだよ? これでもボクらからすれば簡単すぎて世界征服狙っちゃうよ」


 アスタシアのその言葉に思い出すが、確かに普通の人達からすればそうなんだろう。

 僕はこの力がこの世界にきて割と早く手に入ったから、どうも価値観がずれていることがまだある。

 

 うだうだ言ってても現実は変わらないし、切り替えてやることやりますかね。


「それじゃ最初は一番狙いやすく確実で、楽なやつから殺っていきましょうか」

「ひゃっほー! 殺しの時間だぃ!」

「ううむ、アレには私は何もできんからな。リキョウに任せる……」

「そのアレに役立つアイテムもあっから、サニーの嬢ちゃんも使ってみな。この件に関する事じゃ提供は惜しまないつもりだ。どんどんいけー」


 即席メンバーの反応も良好。

 気おくれしてるのは僕だけだったか。

 ならさっさと始めてあとは流れでやっていこう!


「それじゃ一発目。やりますか、墓荒らし」






 そうして訪れましたるはかつて聖堂のあった森の奥。

 ここで言うかつてとは僕らの知る由もないほどの昔のことで、流石のアスタシアでもその聖堂の綺麗な姿は見たことがないという。

 歴史あるヘザールの側で、既に魔物の住まう森の奥に飲み込まれているということは少なくともこのスカイル王国建国以前の話だろうから、アスタシアが知らないのも無理はない。


「たはは……。ボクの知識で威張れないのも残念だけど、お婆ちゃん扱いされるのも釈然としないなぁ」

「お婆ちゃんっていうかロリババアだよな、アスタシアは。個性があっていいと思う」

「たはは……! たはははは……!!」


 思ったことそのまま言ったらアスタシアが涙目でたははは言うラジオになってしまった。

 不老不死のアスタシアでも言葉の刃には勝てなかったか……。


「おいリキョウ。私の目の前で伝説を壊すな」

「そりゃ言葉そのまま『伝説』を言ってんのか、それともその『伝説の人』を言ってんのか、そこ気になるぜ俺は」


 サニーは見たくないものを見てしまった悲しい顔をしてるから、きっと後者……いや前者か……?

 ううむ、これはどちらとも受け止められる。


「アスタシアの姿に幻滅するなら今更だろうし、きっと前者だな」

「どっちもだ! どっちも! リキョウ貴様に人の心はないのか! こんな壊れたたははは人形を生み出しおって……!!」

「サニーの嬢ちゃんも言うこと言うよな。もうアスタシアに救いの道はないのか?」


 常識人ぶってる奴が実は……ってやつか。

 サニーお前、結構暗い心、持ってんだな……。


「たはは……こんな悲しみに暮れたのは久しぶりだよ。……でもそのおかげで、うまく彼らを招き寄せられたみたいだ」

「お、復活した。んじゃ、やりますか!」


 僕らはなにもこんな森の奥で意味もなくふざけ始めたわけではない。 

 ここはかつて聖堂のあった場所、そしてそこに眠るは行く場をなくした死者の魂たち。

 彼らは生ある者の心の鼓動によって寄ってくる。

 

 アンデットという形で。


「僕の狙いはゴーストです。他のスケルトンやゾンビはお任せしますよ、お三方!」

「任せろ!」

「パパっといくよ~」

「アンデットは久しぶりだぜ!」


 そうして僕らの墓荒らしが始まった。

 ……まあ、実際に墓を荒らしているわけじゃないだけどね。


 上空から迫りくる半透明で足のない人型魔物、それがゴーストだ。

 奴らは突進によって相手の身体をすり抜けその生命力を奪っていく。

 しかし物理的な攻撃手段は持っておらず、触れなければどうということはない魔物でもある。


 しかしこのゴーストという魔物、一般の冒険者からは嫌われている。


「様子見の投擲! そりゃ!」

「ボォォォォ……?」


 試しに石を投げて攻撃してみたが、やはり当たらない。

 避けられたのではなく、身体をすり抜けるのだ。


「ホントに物理攻撃効かないんだな。やっぱ魔法で倒すしかないか」


 そう、ゴーストに物理攻撃は効かない。

 地球でもその話はよく聞いたが、どうやらこの世界でもそれは同じらしい。

 ゴーストを倒すには魔法でやるか、聖水でも武器に掛けるかしないと攻撃が通らない。

 その聖水なんかを使って倒しても、ゴーストから得られる戦利品は魔石だけ。

 要するに、割りが合わないのだ。

 魔法使いなんかしか狙いたがる奴がいないわけである。


「〈ファイアボール〉。……魔法で戦うの久しぶりだな」


 しかしその魔法使いならゴーストは敵ではない。

 相手はこちらに触れなければ攻撃できないのだから、どうしても寄ってくる必要があるが、そうなればこちらも魔法を当てやすい。

 単純な的当てゲーム、それも難易度はベリーイージーだ。


「〈ファイアボール〉……〈ファイアボール〉…〈ファイア――」

「ちょいちょい旦那様。そんなの非効率だよ?」


 もはや魔法を撃つ機械と化して〈ファイアボール〉を連発していたら、横からアスタシアが服を引っ張ってきた。

 君の体躯でその動作は完全に子供のそれなんだがそれでいいのかお前は?

 これで片手に毒々しい刀みたいなの持ってなかったら僕お父さんになっちゃうよ!


 という思考は全く表に出さす、至って普通に聞き返す。


「非効率って、もっといい魔法でもあるのか?」

「そりゃあるよ。ゴースト相手だったら身体強化が一番さ」


 身体強化?

 それ使っても物理攻撃にしかならないから意味ないと思うんだが……走り回ってゼロ距離で魔法当てろってこと?


「違うよ旦那様。今旦那様の考えてるのは技能のほうでしょ? じゃなくて、魔法で身体を強化するんだよ」

「魔法で? そんな魔法僕は覚えてないぞ……〈ファイアボム〉」


 アスタシアの言葉に返答しながら寄ってきたゴーストをボムで消し飛ばす。

 ボム系は効果範囲が広くていいが、近いと熱気で僕も熱いな。

 ちょっと目が乾燥した……。


「ちょっとちょっと旦那様、目が乾燥しちゃうじゃないか。もうボクがお手本見せるから、それ真似してやってみて!」


 そういってアスタシアは刀をぶんぶん振って突っ込んでいった。


「あいつ……無茶しやがって」


 そんな物理攻撃でゴーストを倒せるわけない……


「そりゃ」

「ボォォォォ――⁉」

「そりゃそりゃ」

「ボボボォォォ……!!」


「めっちゃ効いてるやん」


 アスタシアは刀を振ってるだけなのに、それで斬られたゴーストは本当に斬られてる。

 それにアスタシアの体にゴーストが触れているようにも見えるが、彼女に怯んだ様子はない。

 ……いやそれは彼女の魔法特性によるものか?

 アスタシアは不老不死、生命力とか無限なんだろうきっと。


 でもよくよく彼女を観察すると、普段は隠れている魔力がすぐに確認できた。

 その魔力は彼女の身体から衣服、手に持つ刀にまで纏わりついており、一つの鎧のようにも見える。


「なるほど。魔力を纏っていればゴーストにも攻撃は通ると……いや待てよ? さっきアスタシアは身体強化と言っていたな。纏うだけでなく筋肉や神経にまで魔力を通せば内部を強化できるのか?」


 やってみた。


「お、おぉぉおお? 確かに技能の〈身体強化〉とは違うが、これも間違いなく〈身体強化〉……。なるほど、アスタシアが言っていたのは〈身体強化魔法〉とでも呼ぶべきものか。個性魔法じゃないんだな、これ……」


 魔力を肉体の外、中、問わず流し纏わせた結果、いつも使ってる技能の〈身体強化〉と同じように身体が強化されたのを感じた。

 技能と違う点は増幅率をこちらの魔力配分で調整できそうなところと、神経にまで魔力を通すイメージをしたからか〈五感強化〉に似た効果を発揮してるということか。

 これは便利だ。


「アスタシア、僕も加勢するぞ! ていうかもう狩るな⁉ お前ペース早すぎてもうそんな残ってないじゃん!」

「たっはっはっは! 脆い脆い! こんなの運動のうちにも入らないよ! そりゃあ!」

「話聞けっての!」


 アスタシアはゴースト退治を遊びかなにかと思っているのか、こちらの声が届かないくらい夢中で狩っている。

 このお子様冒険者め!


「うおおおおお負けるかあああああ!」


 その後僕も突撃してアスタシアと競走した。






「で? お子様2人はなにか言い訳はあるのか?」

「「ございません……」」


 怒ったサニーに正座で謝り倒しました。

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