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第17話

「そういえば……転生魔法って自分にしか発動できないのだろうか?」

「なに?」


 今まで転生魔法はただ倒した魔物の技能を転生によって獲得するだけの魔法と思っていたが、よくよく考えればもっと色々できてもおかしくない。

 〈転生魔法〉が発現したのだってつい最近のことで詳しく調べることもしていなかった。

 ただ最初に見たステータスウィンドウの説明欄でこんなもんだと勝手に納得していただけ……


「今一度ステータスの説明を確認する必要があるな。それにアスタシアにも意見を聞きたい。もし転生がサニーにも可能ならこれはとんでもないことだぞ……」


 そうと決まれば早速ステータスを――


「ちょ、ちょっと待てリキョウ! お前は一体なにを言っているのだ? 転生魔法とやらはお前の個性魔法なのだろう? 私に使えるはずがないではないか」

「それは違うなサニー。確かに転生魔法は僕の個性魔法だが、これは自己完結型でない可能性がある。そもそも魔法には他者に影響を及ぼすものも少なくないと聞く。僕の魔法がそうでないとは限らないさ」


 ほんと、なんでこんな単純な可能性に気付けなかったのか、自分のバカさ加減が嫌になる。

 まあ言い訳するならそれほど余裕がなかったのと、まだこの世界に慣れきっていなかったという話だが、こんな言い訳今更だな。


 今はサニーの強化に繋がるこの可能性に気付くことができたことをただ純粋に喜べばいい。

 その結果が望まぬものであったとしても、自分の魔法を見直す機会を知ったのは無駄ではない。


「自己完結型……? 私はお前ほど魔法に詳しくないのだが、それでもリキョウの個性魔法が異常に過ぎるということは理解できる。ただ魔物を倒すだけで技能を得られる魔法だぞ? それに怪我や病気だってお前にとっては一時的な状態異常でしかない。そんな神の如き力が他者にまで効果を発揮するなど、あるわけがない……あっていいはずがないだろう……」

「それを今から確かめるのさ。あっていいとかあるはずないとか、そんな話は僕の故郷じゃ何度も塗り替えられた過去の歴史だ。疑うならまずは根拠を示せ! ってな」


 惑星は丸いし、リンゴが下に落ちるのにも理由はあるし、人にだって空は飛べる。

 でもそれは遠い昔においては当たり前などでなく、多くの者がそうに決まっているだとか、それは無理なことだとかを口を揃えて言う時代。

 そんな時代に異議を唱えた過去の偉人たちが、今の地球という星を創り出したのだ。


「知ってるかサニー。疑問ってのは考え検証し解明するためにあるんだぜ? ……って誰かが言ってた気がする(ぼそ)」

「……!! ふっ。お前について村を出ると決めた時、私は成長を望んでいたはずなのにな。まだ凝り固まった常識に囚われていたようだ。……ならばリキョウ! 早速疑問の解消に取り掛かるとするか!」

「おう!」


 サニーもやる気になったようだし、これは頼りにさせてもらおうか。

 ではまずは今わかっている〈転生魔法〉の説明からだな。


「ステータスオープン。〈転生魔法〉の説明欄」



 『〈転生魔法〉:魔力を持つ生物を殺すことでその能力を学習し、〈転生〉することで自在に肉体を再構築する』



 ステータスでわかる〈転生魔法〉の情報はこれだけ。

 でもよくよくみればどこにも他人が〈転生〉対象ではないなどと書かれてはいない。

 魔力を持つ生物を殺すことで学習をする、これは転生魔法を持つ僕にしかできないことだろうが、では学習とは一体なんだ?

 僕が学習し取り込んだ情報は、もはや僕の一部と言っていい。

 僕の力の一部なら、〈転生〉さえできればそのとき学習した力を誰かに教えることだってできるのではないか?


「――というのが僕の意見なんだが、サニーはどう思う? 可能性としては十分ありえる話だと思うんだが……」

「ふっ。リキョウ、私の心配はしなくていい。どの道最初から試してみる他ないのだから、それなら私が実験体になる。そんな難しい話を聞かされなくとも、覚悟は決まっていたのだがな!」

「サニー……」


 確かにその通りなのだが、わかっていても説明をしておきたかった。

 これで少しでもサニーの気持ちが和らげばと思ったのだが、怖気づいていたのは僕のほうだったか。

 こんな可能性の話をずっとしたところで、疑問の解消にはならない。

 疑問に答えを与えるには、結局誰かで試すしかないと、わかっていたのに怖かったのだろう、僕は……。


「サニー。別にこんな実験、サニーで試す必要なんてないんだ。はっきり言って〈転生〉にはその個体の情報をどれだけ持っているのかが大事になってくると思う。どこか間違えたり足りなかったりしたら、サニーがサニーでなくなることだってありえるんだ。そもそも学習した技能だってもとは魔物の力、アスタシアのようなことが今後起こらないとも――」

「リキョウ」


 そっと、サニーの手が僕の手に重なる。

 その目は優しく、真っ直ぐ僕を見据える。

 微笑みながら、それ以上の言葉は必要ないと、無言で伝えてくる。


 それでも僕は……。


「サニー……僕は今更になって、お前を手放すことが怖いんだ。サニーが強くなって、これからも一緒に冒険をできるのは嬉しい。でも、別に強くなくたって、僕はサニーから離れないし、ずっと守る。だから……」

「――私はリキョウの力になりたい。守られるだけでなく、共に戦い成長したい。……だって私は、お前の相方、だからな?」

「―――!!」


 相方、か……そうだ、そうだったな。

 意識なんてしてなかった。

 ただ一緒にいて楽しいと思った。

 手料理を食べてくれる姿に感動した。

 朝起きて姿が見えないとどこか寂しかった。

 サニーにばかり角ウサギを狩らせたくなかった。


 それも全部、僕とサニーの関係が、相方、だからだもんな……。


「ふははっ……! 僕の相方はこんないい女だったのか! もっとアホの娘だと思ってたのに!」

「なっ⁉ それは酷いぞリキョウ! 私の何処がアホだというのだ! これでも村の女衆の中では頼りにされていたのだぞ! 私は狩りができる女だからな!」


 それは俗に言う脳筋では?

 村の奥様方が食事に肉を用意できる同性のサニーを頼っていたのは間違いないと思うが。


「じゃあ、いいんだな? 本当に、覚悟はできてるんだな?」

「最初からそう言っているだろう」

「もしかしたら戻れない可能性だって」

「お前が貰ってくれるから問題ない」

「サエルさんがなんて言うか」

「父さんなら祝福してくれるさ」


 ホントのホントに覚悟は決まっているようだが、危険性を理解はしているんだよな?

 最後にそれだけ確認してみるか。

 これで反応に戸惑いが見られるようなら……。

 

「……今の自分を捨てることになるかもしれないんだぞ? 怖くは、ないのか?」

「――そんなに今の私が好きだというなら、別に今夜詳しく知ってもらっても、私は構わんのだが?」


 ………。

 ……………。

 …………………。


「……………………え?」


 え、いや、待て、それはどういう……いや落ち着け、きっと深い意味はないだろう、あれだな、よく話し合ってサニーの特徴を覚えろとかそういう――


「そういえばリキョウははっきり言わないと伝わらん鈍感野郎だったな。つまりはこういうことだ……私を抱いてくれ、リキョウ」

「さ、サニー⁉ お前、何言って……⁉」

「~~~っ!! え、ええい! わ、私だって恥ずかしい想いで言ったのに、迷うなこの馬鹿者め! 漢を見せろリキョウ!」

「そ、そんなことっ――くぅ。ここで漢、漢に……」


 そうか、そうだよな、こういう時は男がリードしないといけないってじっちゃんが言ってた……!!


 そっと、サニーの腰に手を回す。

 既に外は薄暗く、窓から差し込む月明かりがサニーの赤い顔を照らす。

 ………かわいい顔してるんだよな、こいつ。


「り、リキョウ……初めてだから、その、優しく、してくれな……」

「ああ……僕も、初めてだから、その、よろしくお願いします……」

「う、うむ……よろしく頼む……」


 月の光で作られた2つの影が、その晩重なり合ったのだった………



     ◇



 チュンチュン


 鳥の鳴き声が耳に伝わり、閉じていた目を薄らと開ける。


「朝か……」


 なんだかまだ眠いし、頭もはっきりしない。

 あれ?

 昨日いつ寝たんだっけ……?

 ていうか昨日はなにか大事な話をしていたような――ん?


 動かした手がなにか柔らかいものに当たり、まだはっきりしない寝ぼけ眼をそちらに向ける。


「……? ………??? …………!?!?」


 な、なんでサニーが、同じベットで、それも裸で寝てるんだ――⁉⁉

 いや落ち着けそういえば昨日確かって柔らかいなおい!

 いい加減手をどけないとサニーが起きる仕方ないどかそう。

 ゆっくり手を離すと同時にサニーが目覚めたようで欠伸を一つ。


「ふあ、ぁ…朝か……まだ眠いぞリキョウ……って、ん⁉ あ、おおおおはようリキョウ! いい朝だな!」

「え⁉ あ、そうだな! 確かにいい朝だ! はは、ははははは!」

「はははははは!」


 チュンチュン


 僕らの乾いた笑い声を馬鹿にするように、鳥の鳴き声が部屋に響く。

 しばし無言の気まずい空気が続いたあと、僕がなにか言おうと口を開きかけた時、サニーも同時に口を開いた。


「サニー――」

「リキョウ――」


 ………。


「サニー、さきに、どうぞ……」

「う、うむ……。では、聞くが……私のこと、詳しくわかったか?」

「――っごほっ! ごほごほっ……ん、ん゛ん゛!! あ、ああそうだな。なんとなく、分かった気がする……」

「そうか……ならいい」

「………」

「………」


 き、気まずい!

 ダメだこのまま部屋で2人話しててもこの空気は払拭できない!

 一階のロビーで他の客や従業員と朝食を食べようそうしよう。


「朝飯、食べるか……」

「う、うむ……なら一階だな……」


 サニーもこの空気を脱するには他の人間がいる空間にいくしかないと思ったようで、どちらからともなくベットをでた。

 無言で背中合わせに着替えた後、階段を降りロビーの適当な席に座る。


 朝食を持ってこられるのを待つ間も、僕らは無言だった。


「お待たせしましたー、朝食です」

「あ、ああ、ありがとう」

「う、うむ、助かる」


 少しぎこちない返事を二人して返すと、従業員さんは砂糖でも吐きそうな顔をして去っていった。

 その際、去り際に一言――


「昨夜はお楽しみでしたね」


 いやいらん言葉残してくな⁉

 てか昨夜の僕らの情事はバレバレですかそうですか。

 道理で他の客のにやけた視線がさっきから突き刺さるわけだよ!


 空気を変えたくてロビーに来たのに、今度はそこの空気に耐えられず、僕らはそそくさと朝食を済ませ部屋に戻った。


「……で、なんでサニーはまだ僕の部屋に?」

「何故もなにも、まだやるべきことが残っているだろう!」


 え、それってまさか昨夜の続きを……⁉

 結構体力あるんだなサニーは……。


「なななにを勘違いしている⁉ 私が言っているのは転生の話だ! まさか忘れたのか⁉」

「え? てんせい……あ、ああ! そうそう転生な! もちろん覚えてたさ! 忘れるわけねっだろバッキャロー!」

「じとーーー」


 やめてくれサニー、そんなジト目で僕を見てくれるな。

 ああそうとも!

 すっかり忘れてましたよ!

 でも今思い出しからきっとセーフ!


「はぁ……思い出したなら、早速やってしまわないか? どうせ今朝は寝不足で、もしなにかあっても一日休息日とすれば困ることもないだろう」

「ふむ、そうだな。だがそうするにもまだ大事なことを確認してなかった」

「む? 今更また覚悟がどうとか言ってきたらぶっ飛ばすぞ」


 oh、コワイデース。

 ってそんな話僕も今更する気はないっての。

 〈転生〉するにあたり必要な確認、そもそもあれを決めないと〈転生〉する意味がない。


「サニー、お前、どんな技能が欲しい?」

 

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