第六話 状況整理
更新が開いてしまいました。
多忙だったと言い訳をしておきます。
あれから大体二週間、この生活にも慣れてはきたが、それももうすぐ終わりを告げるみたいだ。
十二日ほど前のことだ。
「こちらは日本政府であります。被災者の皆様に重要なお知らせがあります。我々は一昨日、核攻撃を受けました。ロシアからの攻撃です。地上の状況はいずれ分かるでしょうが、悲惨であることは間違いないと考えるべきです。皆様も唐突な異変に大変心を痛めておられると思いますが、我々は、この時代を生き延びねばなりません。我々は、また立ち上がらねばなりません。
我々は日本国民の皆様に要請します。皆様の中の十八歳〜六十五歳の方々には、また勤労の義務が生じます。これを施行するのは今より三週間後になる予定であります。もしもこれを拒むのであれば提供する食料品の増減は国により管理されることとなります。ご理解の程、宜しくお願いします」
と伝言ゲームのようにここまで言い伝えられてきたらしい。びっくりするほどディストピア。そんなことがあったせいで俺たちは職に就かないといけなくなった。しかし、どこも人手が不足しているはずだ。前より就活は楽になるだろうな。猶予は、あと一週間だ。今俺が知る職業といえば駅員になることと、それと警察隊に入ることか。
他にも色々と言えるほどではないがあるにはある。
吉野によれば、国会の衆議院は千代田線国会議事堂前駅に、参議院は半蔵門線永田町駅に別れてまだ活動を続けているそうだ。
そして、最近分かったことなら新宿駅の出口は瓦礫で埋まっていてそこから外に出られないそうだ。このようになっていそうな駅は他にもありそうだ。ずっと地下にいると物資が尽きてしまう。だから地上の調査以外に歩荷が外から物資を持ってこなくてはならなくなるそうだ。
飯は美味くも不味くもないな。なんてったって俺は保存食が好物であるからだ。最初の二日はコンビニ飯だったな。で、その次の日の朝から保存食が出てきたんだ。保存食で出てくるのは保存用のカロリーバーとか乾パンとか缶詰のパンとかだ。そうそう、いつも昼は地下レストラン街が出してくれたんだ。だから昼は大体俺たちはカフェに居た。俺はそこで数少ない甘味と苦味を愛でるように味わった。コーヒーゼリーパフェと言っただろうか。ソフトクリームの甘みとコーヒーゼリーの苦味が絶妙にマッチしていて美味いと言いたいところだが、いつも俺はそういうものは別々で食べたいと思っているからそれらを交互に食べるということはなかった。勿論、ソフトクリームは甘くて美味しいしコーヒーゼリーもまあ美味い。ただ、俺がこれをするたびに「あー、もったいねー」とマサルたちに言われるのはなぜなのだろうか。まあいい、次だ。
多くの人々は現状を受け入れ前を向いて生きている。身近な人間が死んだかもしれない、いや知り合いが死んでないやつなんていない。それでも人々は、弱音くらいは吐くが根気強く生きている。目は死んでないし、感情だって死んでない。悲痛でない笑みも、たまに見ることがある。みんな、悲しいっちゃ悲しいんだろうけど、こんなに生気があるのは悲しんでいる暇すらないからか、それともただの生存本能なのか、俺は知り得ない。
神田は外部の情報を全く持っていないがこの状況に対して一言だけ言った。
「そのうちギャング集団とか出てきてもおかしくないからお前、身を守る術くらい身につけとけよ」
そういうような治安悪化の要因があるからこそ警察隊は存在するのだろう。この国で出回ることのない銃が彼らに備わっているのも大きいか。自衛隊はどこかにまだいるのだろうか。
「身を守る術が必要なら教えてくれないのか?」
俺に必要ならそれを聞く必要もあると思った。
「ンなこたァ知らん。俺が教えられることなんてねェよ。教えてほしいなら警察隊に入ることだな」
神田は無責任にそう言う。
「で、そうするにはどこに行けばいいんだ?」
「本部にいけばいいだろうよ。場所は、今は知らんが」
神田はまたも無責任にそう告げた。どうやら本部の場所も調べやしないらしい。とりあえず上りの路線を辿ればいいのかもしれない。違う駅ならそのことも知っている人間も居ていいはずだから。あと一週間余りで職にも就かなければならないし、警察隊に入るのもいいんだろう。
神田の他にもここにいる隊員はいるのだが、隊員たちはそれほど外部とのやりとりができてないみたいだ。だが、その人たち曰く、
「避難から二週間経過後、地上の様子を確認、及び地上からの物資を調達に向かえと上から言われている」
と言うようだった。避難から二週間経過後と言うのが今日、その日だ。放射線はある程度治まっているらしいが、長時間外にいることは危険だ。地上を調査する人等は肌を隠し、有害な大気を吸わぬようガスマスクをし、それを行うみたいだ。
言い忘れていたが、俺が町屋駅を発つ日も今日である。