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終末世界の地下暮らし(仮)  作者: 八角の奇児
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第二話 土の下の世界

 エアロックが閉まって緊張の波がひと段落したので、俺は無惨光景に背を向け駅の内側に歩いた。

 俺が入った入口は壱番出口だが、零番出口から入ってすぐには地下レストラン街がある。ラインナップとしては、お洒落なカフェ、某有名フライドチキンのファストフード店、それに格安イタリアンのチェーン店にとんかつの店、回らない寿司屋だったり長崎ちゃんぽんを出してくれる店と蕎麦屋だ。これだけの店があればしばらく食べ物が持つだろう。



 特にすることもなかったからホームに向かっていると知らないおっさんが馴れ馴れしい口調で話してきた。


「聞いたか?どうしてこうなったか」


「いいえ、全く」


「じゃあ教えてやろう。ロシアがウクライナを核で攻撃したらしい。やつら血迷ったらしいな、ヘヘ…。爆弾の威力が強すぎて隣国にも被害を出したらしい。でだ、それのおかげでNATTOが総攻撃をロシアに仕掛けたらしい。勿論核攻撃だ」


俺は愛想良く相槌を打ちながら聞いた。おっさんは話を続けた。


「そしたらどうなったと思う?ロシアのやつら、反撃しやがったんだ。なんで日本までとばっちりを受けなきゃならんのだよ。こうなったのは全部ロシアのせいなんだ。ハッ、バカみてえな話だよな。でもこれが現実ってもんだ」


「そうですか。貴重なお話をありがとうございます。じゃあ自分はこれで」


こんなおっさんに絡まれていたらロクなことにならないだろうと思ったから俺は少し冷たくそう言った。


「おう!お前も元気でな!」


どうやらただこのことを誰かに話したかっただけかもしれないな。


 少し止めた足を動かしホームへ向かった。


(はあ、ロシア許すまじ)


ため息をつきながら心の中で呟いた。周りを少し見渡すだけでこの駅が普段と同じ使われ方をされてないことがわかる。思ったよりガヤガヤしていて冷たい床にはレジャーシートを引いて座る人もいた。


 俺は用意周到な人間でないのでそんなことまでしてはいなかった。だからそこらの壁によりかかって時間を潰す他無かった。


 不安が湧いてくる。これからの生活どうなるのかって。本当にどうなるのかな。ギャング集団みたいなやつらが本当に現れてしまうかもな。食糧はどうせカツカツだろうし、水が使えるかもわからない。いつまでここにいるんだろうな。


 腕を組み、これらの考え事に耽っていると肩を二回ほどつつかれた。


「もしかしてフウト?佐久間風人(さくまふうと)?」


少し高い男の声。俺は不意に俺の名前が呼ばれビクリと一度身を震わせた。声のした方を見てみると、どこか懐かしい、そんな顔立ちをした男が立っていた。角ばった髪型に大量のニキビが彼のトレードマークになっていた。こいつは真木将(まぎまさる)だ。マサルとは大分小さい頃からの親友だ、確か…二歳くらいの時からだろうか。そんな彼だが俺が私立中学に上がってからはあまり会っていないというより中一くらいの時以降は全く会っていなかった。


「お前、マサルか!何年ぶりだよ!」


思わぬ再会だったもので俺はテンションが上がっていたらしく、周囲からの色々な感情のこもった眼差しが全身に刺さった。それがよほどのダメージだったのか、俺は縮こまってしまった。気を取り直して俺は言う。


「天まぎも閉業か」

天まぎとは彼の実家の天ぷら屋だ。全国ネットのテレビ番組でそれが取り上げられたりとまあまあ有名だったりするんだよなこれが。


「いや、お前、滅多に買いに来ないだろ」


マサルは笑いながらそう言う。まあ確かにそうだ、俺は滅多に天ぷらなんて食わない。天ぷらで好きなものといえば海老とじゃがいもくらいだからな。


「マサル、お前確か…えーっとあの店継ぐんだよな?違うか、動画投稿者に…ん?」


微かな地震?いや地鳴りか?とにかく微かに地面が揺れているような感じがした。そんな揺れが少してすぐ止むと思ったら…


——ドゴオオオオオオン


強い揺れと共に爆発音を濁らせたような轟音。天井の照明はチカチカと不定期に点滅し、パラパラとコンクリートの粒が降ってきた。駅構内に響くのは大小様々な悲鳴。最期を悟った者までいたがこの駅はそんなことで崩壊するほどヤワなモノじゃない。何しろ核シェルターなんだから。


 暫くすると断続的に点滅していた照明は安定して光を放ち始めた。


「収まったっぽいな。ふう。じゃあ戻ろう」


マサルは安堵しきって言った。さっき俺が喋りかけたことは全部忘れてんのかなコイツ。


「お、おう。でもどこに戻るんだ?俺の戻る場所はここだけど」


「お前の話じゃない、俺の話だ。俺らは三人でいたんだよ。それでここに来たんだ。ああそういえばツバサもいるぞ」


「は?ツバサ?キャプテンか?」


「ちげーよ、仙台翼(せんだいつばさ)だよ」


「覚えてる、覚えてるって」


「じゃあ行くぞ、ついて来いよ」


「オーキードーキー」


俺は足下に置いた鞄を背負い、マサルの背中について行った。


NATTOはネタですよ

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