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アンガー・メイジ  作者: 赤い酒瓶
第一章 金色の獅子
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第30話 カラスマ

 マヤに案内されてカラスマの敷地まで辿り着くと門番に用件を告げ、敷地へ通してもらう。カラスマの屋敷は東洋系と西洋系の両方があって、東洋系の一軒へと通された。マヤは途中で待たされ、玄関から先へは俺一人。


 靴を脱いで上がり込んでから、和装に着替えてくれば良かったかなと気が付いた。見習い時代から見知ったタチバナの屋敷へ足を運ぶのと同じ感覚で訪問してしまったが、平民の普段着のままのこのこと上がり込んで、不躾だと思われなければ良いのだが。幸いにして今着ているのはコノエに付き合ってもらいながら用意したものであり、洗濯もきちんと行っていることから見窄らしさや汚らしさはない。


 東洋風の建築自体は馴染んだものだったが、屋敷の内部に入ってみるとどの部屋も畳が敷かれていて、そういう意味で馴染みのない光景であった。東洋風の裕福な家というのはこうなのかと感心しながら、人の待っている一室へ通される。

「ようこそ、サコン殿」と、出迎えたのは眦の下がった小太りの、冴えない風貌の青年だった。少なくとも容姿に関しては美形のシキから「私同様」と評されるようなものではなかったが、その穏やかそうな微笑は共通するものを感じる。


 どうぞお座り下さいと促されて、座布団の上に。それから少しばかり彼や、俺についての話。彼は今回俺が同行することになる、この家の当主の長男でアキミツというらしい。俺に関しては早々に見習いを終えて、直後から華々しく魔物を蹴散らす期待の新人として認知されているようだ。


「お越し下さったということは、今回の頼み、引き受けて頂けるのですね?」


「はい。誠心誠意、仕事に当たらせて頂きます」


「それは安心しました。弟と私では大した力の差もなく、普段ならばエデン様が洛中にいらっしゃる間を見て相談するところなのですが、それもいつになることか分からなくて父と共に途方に暮れていたところだったのです。いよいよとなったらロウグ様に話してみる選択肢もあるのですが、あの方は厳しいですからね……」


「……あの、失礼ですが、本来ならそのような方々に持っていく話を、こんな若造に?」


「ああ、そんなに身構えないで下さい。君ならばきっと大丈夫ですよ。今の話は、そうですね……このような頼みを出来る伝手が当家に少ないだけと思って頂ければ」


 歴史ある一族に伝手が少ないなどと信じ難かったが、納得しておく他ない。彼の弟も殺されてはおらず、自身の縄張りを清浄に保つため、魔術師を殺さないくらいの理性はある魔物のようだし、何よりもう仕事を引き受けると言ってしまったのだから、どの道やるしかないのだ。


「サコン殿は昨日、洛中へお帰りになったばかりと聞いていますが、出発はいつ頃が宜しいでしょうか。急かすようで申し訳ないのですけれど、身内がしくじり、そのために民草が余分に魔物から苦しめられていると思うと心苦しく…………。出来るだけ、早めの出発としたいのです」


「では、明日の朝にでも」


「良いのですか? 流石にお疲れでしょう?」


 早い方が良いというので早めの出発を決めたのだが、早すぎたのかアキミツが尋ね返してきた。正直、俺とコノエだけなら今日のうちに出発しているところだが、依頼主とはいえ貴族相手に「では今直ぐ出発しましょう」とは言い出し難い。


「問題ありません」


「それは頼もしい。では明日の朝、お付きの方と共に当家へお越し下さい。旅のための手配はしておきます」


 話は纏まり、支度に取り掛かると言ってそのまま直ぐにその場を立ち去った。マヤと合流し、コノエに次の仕事を知らせてから魔王の社に足を運び、その後一日じっくり休んで、翌日には彼と二人でカラスマの屋敷を訪れ出発した。

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