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アンガー・メイジ  作者: 赤い酒瓶
第一章 金色の獅子
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第25話 演習場

 コノエに学院の寮まで送り届けられた翌日、まだ暗いうちから目覚めて、暫くはぼんやりと天井を眺めて過ごしていた。昨日は部屋に帰って直ぐに寝てしまったのだが、確かそれは夕刻頃のことだった気がする。そのため非常に早い時間から起床したようだ。

 頭がはっきりしてきてから、寝床を抜け出して暗い寮内を移動する。一階の談話室には誰もおらず、食堂はたった今、準備が始まったところだった。

 寮内ですることもなく、玄関を出て外へ。書庫に向かった。


 到着すると前にも一度借りて、仕事で旅立つ際に返却してあった式神の本を再び見つけ出し、読み始める。空腹のためなのかあまり集中出来ず、魔術光の下でダラダラと読み進めているうちに外が明るくなり、本の貸し出し手続きを済ませて寮に戻った。

 自室で今日のこの後のために式神の形代を幾つか追加で用意し、それから食堂で朝食。終わると支度を済ませ、再び寮を出た。

 三神の社に足を運んでから正門に向かい、そこで人を待つはずだったのだが、既に相手の姿が見える。


「おはよう。もう来てたか」


 正門前の通りに立っていたコノエへと声を掛ける。


「おはようございます。気が急いてしまったようで、少し早く来てしまいました」


「いや、助かったよ。他の魔術師が皆起き出してくる前に場所を占拠してしまおう」


 そう言って、学院の敷地へと二人で歩き出す。目的地は演習場。一度事務局に立ち寄って使用許可を得ておく。

 今日は俺の魔術を実際に見てみたいというコノエの要望と、俺自身もそろそろ、太陽神の加護を使えるか試してみたかったことから、学院でも最北にあるというその場所に向かうことにしていた。

 これで太陽神の加護が使えなかったら格好付かないなと少し不安だったが、金毛の加護を受けたこともあるし、魔王も式神の行使に助力してくれたし、太陽神にも毎日祈っているので大丈夫だろうと思っている。出かけている間は社にこそ通えていなかったが、太陽自体が頭上にあるのだから祈りには差し支えない。


 演習場は広大な更地だった。足を運ぶのは初めてで、取り敢えずその中央にまで進む。今は他に誰もいない。

 太陽神の加護は炎であることから、洛中で試し打ちが許されるのはこの場所くらいだろう。他にも周囲に被害の及びそうな魔術を試みる際、魔術師はこの場所を使うことになる。

 コノエには少し後ろへ下がってもらい、それから祝詞を上げて太陽神に助力を願った。


 頭上に光り輝く火球が生じ、俺が前方を指し示すと、意に従ってそれは飛んでいく。地面に着弾した瞬間、術が無事に成功したと油断していた俺は肝を冷やすことに。

 かなりの距離があったはずなのに、爆炎が俺の方まで押し寄せ、咄嗟に両腕で顔面を庇った。幸い、太陽神が守ってくれているのか、少々の熱を感じる程度で済んだ。

 腕を下ろして着弾地点を確認すると灼熱のため、変色している。


 思ったより威力の出るものなのだなと、不測の事態に上がった心拍を落ち着かせながら背後を振り返った。コノエの姿がずっと後方に遠ざかっている。後ろに下がっているよう頼んだが、あそこまで下がっている暇はなかったはず。

 更にその遠くでは何人かの魔術師が足を止めてこちらを窺っていた。


 正直、これだけ広範囲に影響が及ぶとは思っていなかったので、もう少し遅くに起き出して他の魔術師がいる中で始めていたら危なかったかもしれない。そういう意味でも肝が冷えた。どういうことが起きるのかは聞き及んでいたし、エデンの戦闘跡からその範囲の広さも凡そ想定していたのだが、見込み違いだ。話に聞く限り彼のそれには遠く及ばないはずだからと甘く思っていた。そもそもあの戦闘跡自体、良く考えると全力で放たれたものとも限らない。

 そのまま突っ立っているとコノエが戻ってきて合流する。


「随分離れてたな。いつの間にあそこまで下がったんだ?」


「炎が届きそうだと判断した瞬間、全力で後退しました」


「すまない。初めてで加減が分からなくて。こうまで大規模なものだとは思わなかった」


「僕は何ともありませんでしたが、サコン様は大丈夫ですか? 完全に炎に飲まれてましたよ」


「平気だ。神様が守って下さったんだろう」


 結構危ない目に遭わせたはずだがコノエに怒りや不満は見受けられない。殺されかけて契約が破断とならなかったのは助かる。


「これだけのお力を支えるのに見合うよう、僕も精進します」


 殆ど事故のような事態に対し、彼は至って真面目にそう告げた。他の魔術師と比べてどの程度かは分からないが、俺自身でもそれなりの力はあるかもしれないと思えるようになってきた。

 その後は威力を調整出来るか試すためにもう一度術を行使して、無事に火球の威力が調整されたことから次の行動に移る。


「式神……ですか? 人とか動物とか作り出す、有名な奴ですよね?」


「その通り。俺はその式神に関心があってね。扱いの練習に付き合って欲しい」


「勿論、喜んで引き受けますけど、具体的には何をすれば良いのでしょう」


「実戦さ」

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