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アンガー・メイジ  作者: 赤い酒瓶
第一章 金色の獅子
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第24話 コノエ

 彼はコノエと名乗った。声が高いせいで女の子に思えるかもしれないが、男だとも告げられる。正直、髪こそ短いものの外見的にも少女に見えるのだが、男だと言うからには男なのだろう。

 話の場に酒場を選んだものの、彼はあまり酒に強くないらしく、飲むのは俺一人。そもそも年齢を確認したら十三になったばかりのようで、まだ若干、飲酒には早い年頃だった。

 その歳で魔剣士なんて凄いなと褒めつつ、先日都に来たばかりでいきなり魔剣を扱えたのかと問うてみる。そもそも社で出会った時点で現在身に付けているものと同じ剣を持っていたように記憶していた。


「厳密には民間でも自由に魔剣を所持出来るのですよ。ただし、重い税金が掛かりますけど」


「自前の剣で練習を積んできたから、いきなり闘技場に出場して、しかも活躍出来たってわけか」


 幾らするのか分からないが、毎年安くない税を払う覚悟で息子に魔剣を与える辺り、富裕層出身なのは間違いない。一方で、そのような資産家の出身ならば態々魔剣士になどならなくても良さそうだが。


「魔剣士になったのはやっぱり、闘技場で活躍して脚光を浴びたかったからとか?」


「いえ。確かに先程の称賛も心地良いものではありましたし、ある意味では認められたいという動機があることも否定しません。ただ、僕は……与えられた力を、人々を守るために使いたいのです。興行のためではなく」


「…………成程」


 理解出来ないな、という言葉を飲み込んで、どうにか短く答える。その高潔な答えを疑っているわけではなく、目を見るに、本気で言っているのだろうと感じたからこその反応だった。


「君自身はその先に、何を望んでいるんだい?」


「ただ認められることです。魔剣士としての、世間に対する貢献を。功績を重ねて、より高貴な方に」


 益々共感は難しくなったが、そういう人物なのだと思うしかあるまい。口ぶりからするに闘技場ではなく魔術師の護衛として戦いたいのは分かるし、年齢も近く実力にも問題なさそうなのだから俺の専属に誘うのに良い条件と言えなくもなかったが、彼を相棒とした場合にこの価値観の遠さが何をもたらすのか想像が付かなかった。


「サコン様は、あのように大きな社を築かれる祟り神をお一人で鎮めたと、村の方に伺いました」


「ああ。それと、俺は昨日見習いを終えたばかりで、田舎出身の平民だ。様は大袈裟な気がする」


「しかし貴方は魔術師です。あまり気安くお呼びするわけにはいきません。それよりも見習いなのに、あれだけの仕事を任されたのですね」


「俺には良く分からないのだけど、貴族の方から任されて、やることになったんだ。多忙な方と聞くから自分では手が回らなかったんだろうけど、指名されたのが俺だったのは、何かの気紛れだろう」


「きっと、期待されているのでしょう」

 食事が運ばれてきて、それに手を付けながら話が進んでいく。


「昨日見習いが終わったと仰られましたが、これから先はどうなさるのですか?」


「当面は興味のある魔術を学びながら、割り振られた仕事をこなすだけだな。付き合いのある貴族の方も俺へ積極的に仕事を与えるつもりみたいで、そのうち忙しくなるだろうって。太陽神と相性が良いから、魔物の相手をすることが多くなるらしい。真面目に仕事して、さっさと良い暮らしにありつくのが目標だ」


「でしたら、専属の魔剣士を抱えるつもりはありませんか?」


 コノエが食いついてきた。


「丁度、その相手を探すために闘技場を眺めに来たところだ」


「僕はどうでしょう? 先程の通り、熟練の魔剣士相手でも遅れは取りません」


「俺にとっては都合の良い話だけど、君は本当にそれで良いのか? 俺に君のようなまともな志はないぞ」


「積極的に成果を出そうという点で、むしろ方向性は合致しているように思います。恐れながらサコン様は魔力も強いようですし、貴族にも期待をされているようだ。そんな方が丁度、専属の魔剣士を求めているところに出会えたのは祖霊の導きでしょう。僕は是非ともこの出会いを活かしたいと考えています」


 本当に俺の魔力が強いのか、貴族に期待されているのか、その実は兎も角として、彼はそのように判断し、強く俺からの雇用を期待しているようだった。彼の祖霊のことは知らないが、良い縁だと思って雇ってみるのが良さそうだ。


「それなら、宜しくお願いしようか」


 こうして、俺達の関係は決まった。雇用条件のうち金銭面だけはこの場で取り決めて、残りは後日とし、のんびりと食事をして、最終的には足取りの怪しくなった俺が彼に支えられながら学院の寮まで送り届けられて、その日はそれでお終い。

 彼は金に拘りがなく、また裕福な実家からの支援も受けているそうで、見習いを終えたばかりで俸禄があまり多くはならないだろうことを告げると、かなり譲歩した金額を提示してくれたのは救いだった。

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