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アンガー・メイジ  作者: 赤い酒瓶
第一章 金色の獅子
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第20話 傍観

「宜しいのですか、あれは」


 傍らに立つヘレナが問いかけてくる。この場には私とヘレナ、侍女二人にここまで案内してくれた村長の他、祈祷の後に始まるはずの建築作業のため事前に集められて村で待機していた人員が集まっていた。

 順調に行っていればサコンが祟り神の気を一定静めて、祟りによる事故の可能性が低まり次第作業を開始するはずだったのだが、事態はあまり順調に進まず、彼は現在塚の一部を破壊し、魔物の死体に向けて暴れている。穢れが彼の身体を包んだのが引き金だった。


 これまでの印象では目付きが悪くも落ち着いた人物と思っていたのだが、一方で激情家の面も持ち合わせていたらしい。

 正直、ちょっと怖い。周りも困惑している。


「止めてきましょうか?」


「行っては駄目。今は近寄らないで」


 答えに迷っているうちにヘレナがそう言い出したので制止。

 ああいうやり方も、全く駄目というわけではないのだ。失敗した場合に霊魂の怒りを刺激し、一層激しい祟りを貰う危険が高いために行われることが少ないだけで、徹底的に霊を痛めつけて限界まで萎縮させるという手法も存在する。

 あれだけの祟り神を相手に行うのは正気と言い難く感じるが、私からすればそうであっても、サコンにすればそこまでの脅威に感じていないのかもしれない。単純に頭へ血が上っているだけな気もするけれど。


 塚へ接近した際、私を含めたサコン以外の全員を穢れが包んだのを感じた。現場にサコン一人を残して早めに立ち退いたのはそのためだ。私自身、穢れと怨念の強大さに気分が悪かった。近付いた者を誰彼と呪うのは祟り神ならば珍しくもないが、そんな中でサコンだけが呪われなかったのは相手が彼の魔力を恐れたからだろう。

 彼を恐れつつも一向に気を静めず、繰り返される祭祀に痺れを切らして遅ればせながらに穢れを叩きつけた辺りに、この祟り神の強情さを感じた。エデンが殺害にまで至るわけだ。


 やがて遠目にも、祟り神がすっかり縮こまってしまったのが分かるようになるとサコンは攻撃の手を止め、太刀を元に戻してからこちらへ向かってきた。


 内心、少し怯みつつ、彼に進捗を問い質す。


「塚を戻して、もう数回今までのやり方を試して駄目だったら、別な手段に切り替えます」


 答える彼の様子は普段通りで、先程までの暴れようはあくまで手段だったのかと思いそうになったが「取り乱してすみませんでした」と続いたことで、あれが直情的な振る舞いだったと判明する。

「今回は大丈夫そうだけど、相手は選んでね」と言っておいたが、やっては拙い相手なら彼も直感的に分かるだろう。魔力に大きな隔たりのある祟り神に対峙すれば、自ずと恐怖を感じるものだ。


 作業員からシャベルを一つ受け取って、一人で戻っていく彼を見送る。塚と祭祀道具が元通りにされて、それから改めて彼が儀式を行うと場が大分清浄になった。祟り神の霊魂が落ち着きを取り戻している。

 取り敢えず、作業員が安全に活動出来る環境は確保されたと言って良い状態だ。


 基本的にここからまた時間を掛けて祟り神の怨念は戻っていくもので、少なくとも社が完成するまでの間は毎日祭祀を行う必要がある。完成後、霊魂がある程度まで大人しくなったらば現地民に祭祀を引き継いで終了だ。その後も他の魔術師が時折巡回していくことものの、基本的には彼らで行ってもらう。

 魂には強い力を持った者の祈りでなければ治まらない状態と、力のない者の祈りでも治められる状態があって、前者の方が事態は深刻だが、反対に脱するまでの時間は後者の方が長いのだ。そちらの期間が明けるまで一地方に常駐出来る程、魔術師は暇でない。


 全てが終わるまで一月程度だろうか。

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