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第4話「起きれるなんて偉いですね♪」

短めです。

本日中に完結させます(鋼の意志)

 煩わしい月曜日の朝。

 ピーピーとけたたましい音を立てて、アラームが鳴っている。

 一度目のアラームを俺は無視した。

 ピピピピ……

 二度目のアラーム。

 

──うるせえなぁ……


 俺は渋々アラームを止めて起き上がる──かと思いきや再びベッドにボフっと倒れ込んだ。


「学校だりぃ……」


 突如大雨とか降って、休校にならねえかな。

 そんなことを思っても、窓から差し込む朝陽は煌々と部屋を照らしている。

 この分だと雲一つない快晴のようだ。


「サボりまではしませんよ、と」


 俺の中で遅刻するのは許容範囲内だが、自らの意思でサボるのはアウトだ。

 この一線を超えるか、超えないか。

 超えた瞬間に後戻りができなくなりそうなラインの前で俺は何とか踏みとどまっていた。


 手早く身支度を整えて……置きっぱなしだった制服に袖を通そうとしたところで、


ピンポーン


 インターホンが鳴った。


 体が反射的にビクっとなり背筋が伸びる。

 こんな時間に来客……嫌な予感しかしない。


 俺は思い出したようにラインを確認する。

 もし、玄関の前にいるのが詩織なら連絡が……来てない。

 でも、この時間に訪ねてくる相手の心当たりなんて……。


 不安を抱きながらおそるおそる玄関に向かい、遠慮がちにそっとドアノブに手をかける。


 軋んで突っかかりのあるドアを開けば……。

 そこに立っていたのはやはり詩織だった。


「おはようございます、太一くん。起きて、その上準備まで出来てるなんて偉いですね!」

「えと……おはようございます?」


 俺を三歳児のように扱う詩織が、満足げな笑みを浮かべている。

 この程度で褒められても嬉しくないんだが……。


「どうかしましたか?」


 呆然とする俺に向けて、詩織はキョトンとした表情を向けてくる。


「いや……家に来る時は連絡してくれって……この前」

「はい、覚えていますよ」

「なら、どうして!」

「それはもちろん太一くんを起こしに……そして一緒に登校しようと思っていたからです!」


 何か問題ありましたか? とでも言いたげな目線を向けてくる。

 止めてくれ、俺はその視線に弱いんだ。


「えと……俺と一緒に登校するとなるといろいろ詩織さんに迷惑がかかると思うんだけど?」

「迷惑……? と言いますと」


 ダメだ。こっちの話が通じない。

 学校一の美少女と、冴えないダメ男な俺。

 そんな二人が並んで登校した、となればそれはもう朝の教室を彩る一大ニュースになる。

 詩織は友人から興味本位で根掘り葉掘りそのことについて聞かれ、他の皆からはあることないこと噂されるのだ。

 一挙手一投足が注目され、噂されてしまう。

 哀しいかなそれが学内カーストの頂点に君臨するものの宿命だ。


「その……あることないこと噂されたり、俺とのことを聞かれたり……」

「ああ、それでしたら問題ありません。ちゃんと私が現在太一くんに猛アタック中だとお伝えしておきます」

「問題しかねえ!」


 何なんだ詩織は一体。

 怖いものとか存在しないのか?


 教室には二種類の人間がいる。

 空気を作る側の人間とその空気を邪魔しないように気を遣う側の人間だ。

 端的に言えば陽キャと陰キャ。

 

 そんな教室の中で、コップの中の水と油みたいに二重構造を作っている両者、同性はともかく異性間で交わりが生まれようものなら、それは一大事だ。


 詩織クラスになればその心配はないかもしれないが、陽キャ側は趣味が悪いと気味悪がられ、陰キャ側はこの裏切り者が、と心理的に距離を取られる──多分、俺の偏見だと。

 ロミオとジュリエットよろしく本来交わるはずのなかった者たち同士なのだ。

 この関係がバレた瞬間。

 俺は平穏な日常を失うことが確定する。


「というか問題はあるのは俺の方なんだよ。俺は平穏無事で波風立たない日常を求めているんだ。そこに詩織さんというスパイスが加わるのは刺激が強すぎるんだよ」

「つまり……私なんていらない……ということでしょうか?」

「違う違う……あ~も~! そういうことじゃなくて!」


 生きている世界が違いすぎて話が伝わらないなんて本当にあるんだな。

 これなら駅前で困っている外国人を案内する方がスムーズにできるかもしれない。

 いや、無理か。俺英語全く喋れないし。


 時計をチラリと見る。

 いつの間にか結構な時間が経っていた。

 これ以上立ち話をしていたら遅刻してしまいそうだ……。


「分かった……俺の負けだ」


 取った選択肢は投了である。


「えーと……」

「ほら、そろそろ行かないと遅刻するだろ? 優等生の詩織さんを遅刻させるのは気が引けるし……」

「つまりご一緒に登校してもらえる、と?」

「そういうことだよ」


 そう言って俺は登校の準備を整えて家のドアを閉めた。

 そして詩織の返事も待たずに歩き出す。


「はい、行きます! 行きましょう!」


 その後ろをパタパタと詩織が付いてくる。


 ああ、これ絶対好奇心丸出しの目で見られるよなぁ……。

 心の中だけで大きくため息を吐く。


 少なくとも俺には、この状況を目撃すれば100%俺に話しかけてくるやつに心当たりがあった。


本日は昼に1話、夜に2話投稿して完結予定です。




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