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お月見3

 大変お待たせしました!お月見最後の一話です!

 お月見のお団子と言えば、あのピラミッド型に乗せられた形だろう。

 ということで、ざるに上げて水気を切ったお団子を二人でせっせと積み上げてみる。


「そういえばお月見のお団子って、何個とか決まってるのかな?」

「一応十二個と十三個と十五個っていうのがあったけど、正直食べるものだから何個でも問題ないと思う」

「そうなの?」

「だって本当は、ちゃんとした三方とかお盆に乗せて三日前くらいにお供えとかするものらしいからね」

「え。それもう節句とかの行事じゃん!」

「ね。でも別にそういうつもりじゃないし、だからお皿に乗せやすい個数でいいんじゃないかな?」

「そこら辺はアバウトなんだ…」

「え、だって。それ言ったらお月見ってただ月を眺めるんじゃなくて、このお団子に穴をあけてそこから月を眺めてたっていう説があるらしいよ?」

「え!?何それ本当!?」


 それは初耳だ…!!

 でもお団子に穴って……なんでわざわざそんな面倒くさいことしてたんだろう?謎だ…。


「どうだろうね?でもほら、昔の貴族って池に映った月を眺めて歌を詠んだりしてたわけだしさ。あり得なくもないかもね」

「でも普通に見た方が綺麗だよね」

「うん、俺もそう思う。だから俺たちは純粋に月を見て楽しめばいいと思うよ?お団子と飲み物だけ用意して、ね」

「そうだね」

「それにほら、大事なのはきっと誰と一緒に楽しむか、じゃない?」

「う、うん…」


 とてもいい笑顔ですけど、なんでそう恥ずかしいこと簡単に口にできるかなぁ…。

 未だに慣れない私がおかしいのか、それともそんなことを言えちゃう聖也くんがおかしいのか。

 まぁでも、どっちでもいいや。


「取り分けたぶんはどうする?今日食べちゃうならラップしてテーブルの上に置いておく?」

「うん、その方がいいかも。冷蔵庫の中に入れて乾燥しちゃったらいやだし」

「そうだね。あ、持って帰る分のお皿は明日の学校帰りに返しに来るから、志野崎のお母さんにはそう伝えておいてくれる?」

「ん、分かった。そう言っておくね」

「ごめんね、お願い」


 それでも勝手知ったる我が家の中、何の迷いもなく棚の中からラップを取り出して二つのお皿にかけていく。

 今更なんだけど、本当にお互い家の中を知り尽くしすぎてると思う。私も高神家の台所とか、どこに何があるのかすぐにわかるし。知らないのはお風呂場と、あとはお互いの両親の部屋の中くらいだと思うんだよね。


「よし。これで全部かな」

「あ、飲み物はどうする?冷たいの?あったかいの?」

「お月見だし、あったかい方がいいかもね」

「じゃあ~…せっかくだしほうじ茶とかにしてみる?緑茶よりもそっちの方がなんか似合う気がする」

「うん、いいね。じゃあお盆とコップ用意するね」

「お願いー」


 でもまぁ、こんな風にスムーズに物事が進むんだし。別に困ることでもないから、お互い知っていた方が何かと得だし楽だったりする。

 とりあえずそっちを用意してもらっている間に、私はほうじ茶のティーバッグを二つ取り出してお湯を沸かしておく。こういう時本当に電気ケトルは便利。水を入れたらスイッチを押すだけでいいんだから。

 ついでに手を拭く用のふきんも水で濡らして、適度に絞っておいた。


「あれ?二人ともまだここにいたの?」


 そうやって最後の準備をしている間に、宿題を終わらせたらしい弟がリビングに顔を出す。ちょっと驚いた顔をしているのは、もう部屋にいると思っていたからだろうな。


「お湯が沸いたら終わりだよ」

「そっかー。じゃあ俺、ゲームしていい?」

「うん、いいよ」

「今日もオンラインゲーム?」

「そ。宿題終わったやつからログインするって約束だから、そろそろみんな集まってくる頃だろうし」

「あ、なんか家でも一人そう言いながらテレビの前座ってそうな気がする」

「聖兄ちゃんせいかーい!あいつとも約束してるー」

「やっぱりね」


 それでも宿題が終わってからという約束をしているあたり、何というかしっかりした中学生だなと思う。先にゲームしてからじゃないところが偉い。

 なんて思っていたら、カチッという音が聞こえてきて。


「あ、ほうじ茶淹れるけど飲む?」

「俺はいいやー。まだこのペットボトル終わってないし」

「ん、分かった」


 一応弟にも確認したけど、そう返ってきたので。予定通り二人分のカップにティーバッグを入れてお湯を注ぐ。箱に書いてある通りの時間入れておいて、後で取り出して捨てられるように横に小皿も用意して。


「聖也くん、準備終わったよ」

「じゃあ持っていこうか。流石にお盆一つじゃ乗り切らないから、二つに分けたけど…大丈夫?」

「うん、平気」

「それならそっちの飲み物お願いしていいかな?扉は俺が開けるから」

「はーい」


 そうやって二人それぞれお盆を持って、二階へと上がる。宣言通りリビングの扉も私の部屋の扉も聖也くんが開けてくれて。お団子も結構不安定だと思うんだけど、危なげなく持てているあたりは流石だと思う。


「とりあえずススキと一緒にテーブルの上にお団子置いちゃうね?」

「うん。私もそこにカップ置いちゃう」


 私の部屋にはローテーブルが置いてあるから、そこに全部乗せておけば問題はない。窓辺にベッドが置いてあるから、角度によってはベッドの上に乗らないと月が見えないかもしれないけど。とりあえず今はそれでいいかな。


「どうする?窓開ける?」

「せっかくだし開けようか。そこまで寒くもないし、あったかい飲み物も用意してあるから丁度いいかも」

「そうだね」


 引いたままだったレースカーテンを開けて、窓も開いて。そこでようやく見上げた空は、確かに雲一つない快晴だった。


「わぁ…!!聖也くん見て見て!!おっきい真ん丸お月様!!」


 そこからちょうど見えた月は、本当に綺麗で。


「本当だねぇ。これで満月じゃないって言うんだから、すごいよね」

「え、十五夜なのに満月じゃないの!?」

「うん。実は今年の満月は明日なんだよ。時期によって多少のズレがあるから、十五夜に満月になるとは限らないんだってさ」

「そうなんだー…。十五夜でこんなに綺麗なのに満月じゃないなんて、なんか不思議ー」

「ね。でも旧暦に則って考えると、今日がれっきとした十五夜なんだよね」


 流石聖也くん。事前に色々調べたんだろうけど、それをすぐに覚えられるあたりやっぱり頭の出来が違う。

 ちなみにたぶん、気になってちょっと調べてみた、程度のことなんだと思う。あくまで本人的には、だけど。


「でもじゃあ明日が満月なら、明日も綺麗なんだろうね」

「ね」


 二人で顔を見合わせながら笑うこの時間が、すごく穏やかで大切だと思う。一緒にいられることが何よりも楽しくて嬉しいから。


「この角度だったらベッドの上じゃなくても見えると思うし、作ったお団子食べながら見ようか」

「あ、うん。食べるー」


 手はさっき洗って来たけど、一応ふきんで軽くふいて。一番上のお団子を手でつまんで口の中に入れる。


「ん……あ、これ思ってたより美味しい…」

「ん。ホントだね。なんか普段よりもちもちしてて好きかも」

「お豆腐を入れたから硬くならないって言ってたじゃん?だからかもね」

「かもねー。考えた人すごいよね」


 甘さは控えめなので、味としてはすあまとかに近いのかもしれないけど。とにかくもっちもちで弾力がすごい。食感も美味しさに影響するって聞いたことあるけど、これ食べるとホントだなって思うくらいには違うかも。


「あったかいほうじ茶も合う~」

「ホッとするよね、こういうの」


 もはや隠居した夫婦みたいな会話にも聞こえそうだけど、まぁこれはこれでいいんじゃないだろうか?

 っていうか本当に、この組み合わせ最高なんだけど。


「いいよね。今までお月見なんてちゃんとやったことなかったけど…ススキもちゃんと飾ってるからなんか風流だし」

「ね。ちょうどススキとお団子と月が見えるから、よりお月見感出てるよね」

「ねー」


 まさに理想の形なんじゃないだろうか?これでここが縁側とかだったら最高なんだろうけど、流石に我が家にも高神家にも縁側はないので仕方がない。

 微かに聞こえてくる秋の虫たちの鳴き声と、風に揺れるレースカーテンがふわりと舞って。昔の人はこんな風に過ごしていたんだなぁなんて、少し物思いにふける。

 いや、流石にカーテンはなかっただろうけど。これはこれで現代的な風流という感じがして、私は好きだけど。


「……また来年も、やりたいなぁ…」


 思わずその雰囲気に、言葉が口をついて出てしまって。


「え?来年と言わずこの先ずっとやろうよ。秋の十五夜のお月見」


 そしてそれに当然のように返ってくる言葉。


「でも雨とか曇りだったら?毎年晴れるとは限らないよね?」

「それはそれでいいんじゃないかな?俺は一緒にお団子作ったりするの楽しかったし」

「……確かに、楽しかったね」

「でしょ?だから月を見るのがついででもいいと思うんだ」

「……花より団子じゃなく、月より団子…」

「お団子以上に、俺にとっては愛ちゃんと一緒っていうのが一番大事な部分なんだけどね?」

「っ…」


 だ、から……!!どうしてそういうこと、平気で言えるかなぁ!?!?


「だからまた来年も再来年も、この先ずっと一緒にお月見しよう?ね?」

「……うん…」


 でもま、私だって一緒にお団子作るの楽しかったし。こうやって一緒にいられる時間が一番だし。

 だから結局、優しく笑うその顔に頷くしか選択肢なんてなかったんだ。









 ~おまけ~


志野崎弟「いや、聖兄ちゃんは常に団子より花でしょ」

高神弟 「あー…確かに愛姉一直線だわ」

志野崎弟「なんで姉ちゃんなのかは、今でも分かんないけど」

高神弟 「そう?俺は割とあの二人お似合いだと思うけど」

志野崎弟「並んでると一番しっくりくるのは認める。けど聖兄ちゃんだったら選び放題じゃない?正直さ」

高神弟 「それは愛姉も一緒じゃない?っつーか、愛姉の隣には兄ちゃん以外認めない!異論も認めない!!」

志野崎弟「極端!!」






 皆さんの住んでいる地域では、お月見楽しめたのでしょうか?

 曇りや雨で楽しめなかったという方も、せめて雰囲気だけでもこの二人と一緒に楽しんでいただければと思い、急遽更新しました。


 久々にこの二人の話を書いていたら、思っていた以上に筆というか指が乗ってしまって。当初の予定よりも長くなってしまいました…(汗

 本編が完結しているというのもありますが、何よりこの二人は書きやすいです。あと現代だから何書いてもいいっていう安心感がすごい。同じお菓子作りでも、今連載している別作品ではこうはいかないですからね。

 ただ聖也くんが突然のお触りをしたり新婚とか言い出したのは、完全に予定外でした。完璧に天然を発動させていますね。

 というかこの子は、二人っきりになるとイチャイチャしなきゃ気が済まないのだろうか…?


 まさか番外編で予定していた話以外で、一日に何度も更新することになるとは思ってもいませんでしたが…楽しんでいただけたら嬉しいです。

 ブクマや評価、感想などいただけたら今後の創作の励みになりますので、ぜひぜひお願いします。



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